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第二百九十九節 オバ帝国の視線 朝翁の場合 その2

 いよいよ洞窟へ入るようじゃ。

しかし杖で攻撃とか言っていたが、何をするつもりなのじゃろうか?

ワシの杖は、これでもかなりの代物じゃが杖で攻撃と言われても

何の魔法やら全く思いつかない。


 杖とは本来、魔法の能力を高める為に持つような物。

この杖で何が出来ると言うのじゃ?

まさか叩くのか?

いや、それはあんまりじゃろうて……

女性が杖で特攻では、さすがに不味かろう。

では、なんじゃ?

まさかあの娘さん達は、実は魔法使いでは無いとか?

もしやあのローブの中はムキムキマッチョな肉体で、杖で敵を薙倒し!

いやいや、いくらなんでもそんな事はなかろうて……

確か城を訪ねて来た時は、あのローブは着ておらんかったしのぅ。


 良く判らぬが、このまま後ろから付いて行くしかないわい。

さて、どんな攻撃をするのか……しかと、見せてもらうとするかのぅ。



「来た……」

勇太殿の声で、娘さん達は一斉に杖を掲げた。

そして次の瞬間、ワシは裏返った声を上げてしまった。

「はぁ? なんじゃ、ありゃぁ!」

白や黄色や青の光の玉が洞窟の奥へと目掛けて、ひらすらに飛んで行く。

もはや、いくつ飛んで行っているのか数え切れない程じゃ。

そして洞窟の奥からは、猛獣のような金切り声が重なるように聞こえてくる。

「いったい、何が起こっているのじゃ……」

目の前の光景を理解できずに居ると、何やら地響きが起き始めた。

どうしたんじゃ? 地震か?

その時、大きな声が聞こえた。

「来たぞ! 遥子、魔法を頼む! 安! 伊代! 行くぞ!」

勢い良く洞窟の奥へと走って行く3人に合わせて、遥子さんが呪文を唱え始める。

なんじゃ? 声が小さいので全ては聞き取れないが、まるで覚えが無い呪文じゃぞ?

すると手の中に、見ていられないほどに眩しい光の玉が現れた。

それを投げるように振りかぶると、その光は洞窟の奥へと飛んで行く。

そして光は天井付近に留まり、辺りが昼間のように照らし出される。

「うわっ! 何だ、あれは!」

幾代の声で正面を見ると、人の三倍はあろうかと言う巨大な化け物が叫び声を上げていた。

そのおぞましい化け物に3人は一切怯む事無く、果敢に斬り掛かっている。

ふと周りを見ると、少し小さい化け物が何匹も横たわるように転がっていた。

何と言う事じゃ……

まさに……これこそ本物の勇者じゃ……

その信じられない光景を、ワシはただ呆然と見ている事しか出来なかった。



 その時、突然に稲光が走ったかと思うと勇太殿が物凄い勢いで宙に飛び上がっている。

それと同時に、化け物に向かって白い閃光が横一線に走った。

ワシが目を見開いていると、化け物の首が綺麗に滑るように静かにずり落ちて行く。

そして大量の血を噴出して、残った化け物の身体は地響きを立てながら地面に倒れ落ちた。



 それを見ていたエロ娘が呟いた。

「あの……安さんの狂ったような速さって何だったの?」

それに続けて幾代が言う。

「あの化け物を、一刀両断って……それは、無理だ……」

ワシも、それに続けるように呟いた。

「ワシがこれだけの時間をかけて学んで来たものを、あの娘さん達はアッサリ超えてしまっておる……」

そしてワシ達は、声を揃えて呟いた。

「実力が違いすぎる……」

ワシ等は呆然としながらも、ふと考えを巡らす。

やはり彼等の邪魔だけはしないようにしようと、いつしか心に誓っていた。

それはきっと、ワシ等3人が等しく思った事に違いあるまい。












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