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第二百九十一節 オバ帝国の視線 朝翁の場合

「あっ、あの角を曲がったわ!」

エロ娘の声でワシ等も道の先を見ると、すでに全員が居なかった。

「追うぞ!」

幾代の掛け声で一斉に走り始めたが、ワシだけ二人に思いっきり離されてしまう。

さすがに年には勝てないのぅ……



 二人が角を曲がると、ほぼ同時に声を上げた。

「え? 何で?」

「どう言う事だ!」

ワシが後から付いて行くように角を曲がると、二人はそこに立ち尽くしていた。

前方を見れば、すでにそこには誰も居ない。

「なんじゃ? どこへ行ったんじゃ?」

その道はかなり狭く両側には古い木造の家が立ち並んで居るが、

明らかに真っ直ぐな一本道。どう考えても、見失う訳が無い。

「どこか隠れる所は無いか?」

ワシ等は必死に辺りを見渡すが、これと言って怪しい場所は見当たらない。

あの人数で、どうやったら隠れられると言うのだ?


「他には、どこじゃ?」

ワシが問うように言うと、幾代が答えた。

「どこか、鍵のかかっていない所を探そう!」

そのまま周りの家を調べ始めたので、ワシ等もそれに習って家の扉や窓を調べる。

しかし、どこもシッカリと閉まっていて開く事は無い。

「いったい、どこへ行ったのじゃ……何としても、彼等の素性を知るべきじゃと言うのに」

その言葉に、エロ娘が首を傾げて聞いてきた。

「だって、普通の冒険者なんでしょ? そんなの知る必要があるの?」

ワシは大きく溜め息をついて続けた。

「そんなじゃからエロ娘だと言うのじゃ」

「だからエロ娘じゃないって言ってるでしょ!」

「そんな事は、この際どうでもイイんじゃ! 大体からして、あれが単なる冒険者な訳が無かろうがっ! あんな凄い者達など、ワシはこれまで見た事が無いわい!」

すると何かキョトンとしながら言った。

「え? あの人達って、そんなに凄いの?」

このエロ娘は……

ワシは、そのまま話を続けた。

「そもそも、良く考えてみるのじゃ! ワシ等に何が起きた? 瞬時に違う場所へと移動したんじゃぞ? そんな技、ワシは知らん。それに、あの時の幾代は明らかに死んでおったではないか! どうやって生き返らせたのじゃ? 少なくともワシは、そんな魔法など知らん!」

その言葉に、驚いた様子でエロ娘が答えた。

「え? ジジィでも知らない事あるんだ」

「あぁ~っ! わからん奴じゃ! そこが大問題なんじゃよ! これでもワシは、この年になるまで魔術に全てを注ぎ込んできたのじゃぞ。役職を蹴ったのも、研究に没頭したかったからじゃ! じゃが彼等は何じゃ? あの若さで、このワシが知らぬ事を平気な顔してやりよった。全く信じられぬわい!」

しばらく間を置いてから、エロ娘は呟くように言った。

「それじゃ、あの人達っていったい何者だって言うのよ」

ワシは気持ちを落ち着けるように、大きく息を付いてから続けた。

「うむ……ワシは、彼等こそが本物の勇者ではないかと睨んでおる」

そこに幾代が、深く頷きながら言った。

「確かに……そう考えれば、納得が行くな。何があったかほとんど覚えていないが、夕菜の話ではあの魔物をほんの数分で倒してしまったと言うしな。その魔法もあまり普通に使っていたので気にする余裕さえ与えてくれなかったが、瞬時に移動が出来る魔法なんて良く考えればとんでもない話だ。なるほど、本物の勇者か……」

ワシは、それに続けるように言った。

「何としても、彼等を探し出さねばなるまい。とにかく、何か手を打たねば……」












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