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第二百七十二節 剣術ですね~……その2

 私達も道着に着替える為に奥の部屋へ行くと、何やら和風な雰囲気の部屋だ。

下が畳じゃないのが、とても残念である。

部屋の中には木の皮で作ったような大きなザルのようなカゴがいくつか置いてあって、

大さんとリーさんの服がそれぞれに入っている。

きっと、この空のカゴならば使って良いのだろう。

何だか銭湯みたいだが……


 さて一つ問題がある。

私は、ふと伊代を見た。

さすがに一緒に着替えろとは言えないよな~……

さて、何か無いだろうか?

私が辺りを見渡していると、安が聞いてきた。

「何、探してるでやす?」

「いや、伊代が着替える場所を探しているんだが……う~ん、伊代が先に着替えるか?」

私が問うと、手にした道着に視線を落とす。

「いや、どう着るのか良く解らなくて……」

そうきたか……

「そうか~。それじゃ、説明だけするか」

とりあえず伊代に鎧と剣を外してもらって、服の上から道着を着せてみる。

う~ん……なんか大きくてモロに振袖状態なんだけど大丈夫かな~?

「まず上着は、こう回してきてココで縛るんだ。結び方はこうだが判るか?」

私が蝶結びをすると納得したように頷いた。

「はい、それなら出来ます」

「そうか。それで下だが、そのまま穿いてみてくれ」

伊代が足を通して、腰まで袴を持ってくる。

だが足の丈が長すぎるようで、ほとんど松の廊下状態だ。

これは困ったな……

私が悩んでいると、リーさんが飛ぶように走ってきて大声で言った。

「あのっ! 大きくありませんでした?」

「えぇ、凄く大きいみたいです……」

私が答えると、部屋の隅に向かいながら答えた。

「ですよね~、そこに小さいのがあるんです」

そう言いながら、部屋の隅にある道着が詰まれた棚を漁った。

「そうそう、コレですよ! こっちでいかがでしょうか?」

伊代に渡された道着を当ててみると、いけそうなサイズだ。

「これなら大丈夫そうですね」

私が答えると、リーさんはもう一組の道着を私に手渡した。

「それじゃ、安さんのはこれでお願いします」

そのままリーさんは、また道場に走って行った。

それを見送ってから、伊代に視線を戻す。

「それで下は、この太い帯が捻れないように何回も回してから前で潜らせてと……」

なかなか、人のを着せるのって難しいな……

「そしてもう一度グッと縛ってから~、この先端を挟み込んだら完成だ」

「なるほど、解りました。それじゃ着替えちゃいます」

私はそれに頷いて、部屋を出た。


 しばらくして伊代が出てくる。

「これで大丈夫ですか?」

とりあえず確認してみるが、問題は無さそうだ。

「うん、大丈夫だな。それじゃ先に行っててイイぞ?」

「はい、では先に行ってます」


 とりあえず安にもやり方を教えながら着替えさせる。

「どうだ? わかるか?」

「えぇ、なんとか大丈夫でやす」

何だか道着を嬉しそうに見ているが、そんなに気に入ったのだろうか?

まぁイイか……

安が喜んでいるうちに、私も着替えてしまおう。

ひとまず剣は木刀を使うようなので、私達の剣は必要ない。

鎧や服と一緒にカゴの中に入れた。



 準備を終えて安と一緒に道場に戻ると、大さんが真剣な眼差しで話し始めた。

「雷陀亜って奴はね~、世界平和の為に在るんだよね~。その辺りは心得ているね?」

私達が素直に頷くと、納得した様子で続ける。

「うむ……だが、甘くは無いぞ! 覚悟は出来ているな?」

「はい、宜しくお願い致します!」

私達の真剣な視線に、大さんは静かに頷いた。



 大さんの話によると雷陀亜流の習得までには、通常ならば相当の時間が掛かるそうだ。

私達は大さんの牧場に泊まり込んで教えてもらう事になった。


 とりあえず聞いてみた。

「あの……習得には、どのくらいの時間が掛かるのでしょうか?」

「うむ。彼が免許皆伝までに費やした時間は10年だ」

え? マジで?

「それは、また……あの、私達にはあまり時間が無いのですが……」

伺いを立てるように困りながら聞いてみると、大さんが聞き返してきた。

「ん? 何か、あるのか?」

その問いに、静かに頷いてから答えた。

「実は一ヶ月ほど後に、この大陸の魔物がパンツェッタの魔法学校に集まるとの情報を掴んでいます。奴等を一気に殲滅するには、その機会を逃す訳にはいかないのです。どうにかならないものでしょうか?」

私自身、ハッキリ言って無茶な事を聞いているくらいは良く解っている。

だが、敵は大人しく待っていてくれない。

侵攻が深刻な今、私達はココでそれほど多くの時間を費やす訳には行かないのだ。


 大さんは私の問いに、神妙な顔付きで考え込んでいる。

そして大きく息を付いてから続けた。

「う~ん、なるほど……君の言うように、その機会を逃すべきでは無いな……これは、私の意見だがイイかな?」

私が素直に頷くと、大さんは話を続ける。

「確かに、君達の実力は驚くべきものだ。常識を遥かに凌駕している分、習得も早い事が予測できる。しかし雷陀亜流を扱うならば、基礎となる形と流れを確実に覚えなければ使い手にさえ危険が及ぶ剣術だと言う事だけは良く覚えておいてくれ。まぁ、それに間に合うかどうかは君達の頑張りに掛かっている。それ次第では、不可能では無い筈だ」

なるほど……

私は、真剣に大さんの目を見て頷いた。

そうなると、もしそれまでに覚えられない場合は

今までの方法で戦わなければならないと言う事か。

まぁ、ある程度は覚悟しておかなければならないだろうな~。


 その時、遥子が向こうから不機嫌そうに声を掛けてきた。

「何だか勝手に話が進んでるみたいだけど、あたし達は何してればイイのよ!」

「そう言えば、そうだよな~」

確かに漠然と居候させてもらう訳にも行かないしな~……

私が悩んでいると、リーさんが笑顔で答えた。

「それならば、私の作業を手伝って頂くというのはどうでしょう? 主に、馬の世話になりますが」

「なるほど、そうして頂けるならありがたいです」

私が答えると、何やら冷たい視線を感じる。

ふと遥子を見ると、やはりこちらをジッと見つめていた。

何か、気に入らないのだろうか?

「どうした?」

とりあえず聞いてみると、冷ややかな視線のまま呟くように答えた。

「当然、あんた達も手伝うんでしょうね~?」

え? それは考えてなかった……

「あ……あぁ、そうだな。稽古が終わり次第、私達も手伝うよ。それは、もちろんさ! うん、大丈夫だよ……いや~はっはっは」

大さんを真似するように誤魔化してみると、遥子が続ける。

「剣だけ振り回してればイイと思ったら大間違いよ!」

ははっ……確かにそうだな。

「あぁ、ちゃんと手伝うから安心してくれ」

遥子は少し眉を上げながらも、ひとまず納得してくれた様で素直に頷いていた。












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