第二十七節 ヨウジョ・ジャパン現る
私達は闘技場前に来ている。
形としては……やはり妙に記憶にあるな。
どこかのスタジアムのような雰囲気が漂っている……
いや……この場合はコロシアムと言うべきだろうか。
さて、やる気満々な女性陣が放つ無言の圧力によって
出場する事になってしまった私達だが、
まずは、先に登録をしなければいけない。
とりあえず白い合羽のような物を羽織った係員らしき人物に、
紙を見せながら話を聞いてみる。
「あの……これの受付ってどこでしょうか?」
「はい。受付は、あちらの奥になります。
左に看板がございますので、それを目印にしてください。
それと現在、格闘保険のキャンペーン中です!
ご案内させて頂いて、宜しいですか?」
格闘保険?
何だそれ?
私が首を傾げていると、合羽の女性は勝手に喋り始めた。
「戦いは、これからだ! もし怪我をされた時の保障は入院日額7000エン!
戦う前から医療保険! 手術入院費用は一生涯!
死亡時最大1000万が、今なら月額2000エン! これ決め手かな?
そして、なんと業界売り上げナンバーワン!
今なら可愛い、お父さん猫のヌイグルミが付いてきま~す! 回れ猫ダンス♪」
なんと、無茶なキャッチコピーを……
「まず受付をしなきゃいけないので、考えておきます」
「はい! お待ちしております!」
軽い会釈をしながら、そのまま受付に向かった。
少し狭く薄暗い通路を歩いて行くと、いくつもドアが並んでいる。
どれが、そうだろうか?
しばらく進んで行くと、上に
「最強戦受付」と書いてある。
微妙な略だが、多分ここだろう……
ドアを開けてみると、奥に横長のテーブルが置いてあって一人の女性が座っている。
そこに歩み寄って、声を掛けてみた。
「すみません、出場したいんですが?」
それに、女性は明るく答えた。
「はい! それでは、こちらに記入してください。」
1枚の紙を、テーブルの上にヒラッと置いた。
何々?
代表者氏名と……出場人数と……
団体名もあるのかよ……
ん? 出身国?
とりあえず、遥子に聞いてみた。
「なぁ、出身国だってよ……どうする?」
それに、首を傾げている。
困ったな……
「あの……この出身国って、書かなきゃダメですか?」
「はい! 決まりですので!」
さっぱりと言われてしまった。
私は、皆に訪ねてみる。
「で? これ、誰が書くの?」
それに全員が無言で、私に人差し指を向けた。
あれ?
なんで、そうなっちゃうのかな?
どうやら、いつも面倒な時だけリーダー扱いされているような気がするんだが……
まぁ、仕方ない……
ひとまず、自分の名前は良いとしてと……
さて、団体名と出身国で困った。
まぁ、団体名は置いといてと……
まずは、出身国が問題だ。
ここで日本と書いても、誰も判らないだろう……
国名に漢字は使われていないようなので、ここはジャパンか?
いや……それでも、判らないに決まっている。
しかし、ヨウジョと書くのは心から気がひけた。
「なぁ? 何て書くよ……」
私の問いに、答える者は居ない……
仕方なく、2つを続けて記入してみた。
ん?
ヨウジョとジャパン?
そうか!
これは強大な敵が待ち受けるであろう魔の大陸へ向かい、
勝利を目指すチーム名としても上等ではないか!
「決まったぞ!」
振り返り様に、拳を握り締めて言う私に、遥子は冷たい視線を投げかける。
「何がよ……」
私はその拳に、更なる力を込めた。
「これより我々は、ヨウジョ・ジャパンだ!」