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第二百六十八節 牧場ですね~……

 私達はシンキロードを超えて、大さんの牧場の近くまで来た。

馬の速度は想像以上に上がっていて、予定よりも二時間近く早く付いてしまった。

だが、これは全く本気を出して居ない走りである事は確か。

そのあまりの速さが心配で、ひたすらに手綱を引いて強引に速度を落としていたほどだ。

かなり慎重に様子を見ていたのだが、馬は元気としか言いようが無い。

ずっと謎のままだったこの現象も、大さんに聞けば原因が明らかになるだろう。


 やがて牧場が見えてくると、相変わらず隅々まで整備された広大な土地に

おもわず見惚れてしまう。

きっとコレって、ほとんどリーさんがやってるんだろうな~……


 綺麗な牧場を横目に馬車を走らせていると、妙に目立つ白馬が見えた。

お? あれはサイクロン号じゃないか?

何やら、勝手に気持ちよく走っているようだ。

馬車を走らせながらサイクロン号を見ていると、ふと私達に気付いたように近寄ってきた。

そして、まるでサイクロン号に案内されるように厩舎へと向かった。


 厩舎に近づくと、大さんが見えた。

腕を組んで仁王立ちしている。相変わらず強そうだ。

もしや、あの人が魔王を倒しに行った方が良いのではないかと思ってしまう

今日この頃であった。



 こちらに気付いた大さんが、素敵な笑顔で迎えてくれた。

馬車を近くまで寄せてから皆で降りると、大さんがの低音ボイスが響く。

「よぉ~、元気そうじゃないか~。いや~はっはっは」

私は深く頭を下げてから挨拶を交わす。

「お久しぶりです。今日は、色々とお聞きしたい事があってお邪魔致しました」

「うむ、そうか! 何でも聞いてくれたまえ」

では、まずは馬の事から聞いてみるとするか。

「まずはこの馬達なんですが、以前からは比べ物にならない程に速くなってしまっているんです。なるべく手綱で抑えながら慎重に様子を見て居たのですが、全く原因が判らず困っています。大丈夫でしょうか?」

その問いに、不思議そうな表情を浮かべている。

「ん? 馬が速い事は素晴らしいと思うが、何か問題があるのか?」

「はい、あまりに速いので限界が全く解らないのです。競走馬のように速い足は弱い事が多いと聞いた事がありますので、どこまで馬なりに走らせて良いのか……」

馬に視線を送りながら言うと、大さんは私の肩の左手をガシっと置いて言った。

「うむ、それは素晴らしい心掛けだ。では、さっそく見てみよう」


 馬の足に手を当てた瞬間に、大さんが眉を顰めるのが判った。

「これは……」

更に慎重に様子を伺うと、大きく息を付いてからおもむろに厩舎へと指を向けた。

「向こうにリーが居るはずだ。ちょっと、呼んで来てくれないかな?」

「はい、わかりました」

私が振り向いて歩き出すと、安が付いて来た。

二人で厩舎の中を横断するように歩いて行くと、リーさんが見えた。

デカイフォークのような道具で、牧草を掻き分けているようだ。

かなり夢中に作業しているようなので、ある程度まで近寄ってから声を掛けた。

「リーさん、お久しぶりです」

それに気付いて振り向くと、リーさんは笑みを浮かべてデカイフォークを

牧草に突き刺しながら言った。

「おや、これは。どうも、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」

私は深く頭を下げてから続けた。

「いきなりですみませんが、大さんがお呼びでして……」

伺うように言うと、リーさんは眉を上げて答える。

「わかりました。では、一緒に行きましょう」

来た道を戻って行くと、大さんは真剣な表情を浮かべたまま馬の足を見つめている。

まずは、リーさんが声を掛けた。

「どうしました?」

大さんは、そのままの体勢で言った。

「うむ……ちょっと見てくれるか?」

それに不思議そうな表情を浮かべながら馬の足に手を当てると、リーさんの表情も変った。

「これは……」

「うむ、やはりか……」

二人して真剣な表情で足を撫でるように確認している。

「何? もしかしてヤバイの?」

遥子が心配そうに呟いたので、私はそれに答えるように言った。

「何か、そんな雰囲気だよな~……」

私達が目を合わせて不安に思っていると、大さんが突然に大きな声を上げた。

「素晴らしい!」

なんだ?

驚いて視線を戻すと、大さんが笑みを浮かべて振り返る。

「これは素晴らしいぞ! ここまで見事に鍛えられた筋肉は、そうそう見る事が出来ない! いや~、はっはっは。本当に素晴らしい!」

大さんの言葉に、リーさんが続けた。

「あの、ちょっと一回りさせて頂いて宜しいですか?」

「あ……はい……どうぞ」

少し動揺しつつも私が頷くと、リーさんと大さんが喜び勇んで馬車に乗り込んだ。

「はっ!」

リーさんの掛け声で、馬車は広い敷地へ元気良く走り出す。

私達は、物凄い勢いで驀進して行く馬車を呆然と見つめるしかなかった。












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