第二十六節 出なきゃダメ?
私達6人は、これと言ってやることも無く、狭いシングル部屋でダレテいると
ノックの音が響いた。
おもむろにドアを開けてみると、そこに沙耶がいる。
「暇してる?」
誰のせいだよ……
すると、私をすり抜けて部屋に入って行った。
「ちょっと入るわよ」
もう、入ってるって……
沙耶は背中を見せたまま、指に挟んだ紙をヒラヒラとさせた。
「これに、出てみない?」
それを受け取って、読んでみる。
「何々? 第15回史上最強決定戦……優勝賞金3000万?」
何だ? 武道会みたいなものか?
だが、沙耶にしてみれば大した金額じゃ無いよな……
私が首を傾げていると、沙耶が振り向きざまに紙の上に人差し指を向ける。
「問題は、その下よ」
そこには、小さく副賞が書いてあった。
「ニャーの鏡? なんだそれ?」
その時、翔子が思いだしたように言った。
「あ……それって、あの神話の?」
「神話って?」
私が聞くと、続けて言った。
「はい、それは……その目を見ただけで、
たちどころに石に変えてしまうと言う、魔物ヘビアタマにまつわる神話です。」
ヘビアタマって……
「それによれば……神より遣わされた神官センは、魔物の巣窟へ勇敢に立ち向かった。
その道程は困難を極めたが、ついにニャーの鏡でその魔力を反射させ
ヘビアタマを石に変えた……と記されています」
それって……
僅かな沈黙の中に、静かな声が響いた。
「でも、それは真実じゃないのよ」
そう切り出したのは、沙耶だった。
「ん? どういうことだ?」
私が問うてみると、腕を組んで少し怒りながら言った。
「何者かの策略によって、その話が刷り変えられているのよ……」
その言葉に、少し引っかかったので聞いてみる。
「どうして、そんな話を知っているのだ?」
沙耶は、睨むように私を見た。
「それは、我が尾木間家に代々伝わっている話だからよ」
ほう……
「その神官は、私の遠い先祖にあたるの。
真実はこうよ……人間の姿に化けて、国王を亡き者にした魔物ヘビアタマは、
己を国王の姿に変える幻術で民を惑わし、国を滅亡へと導いていた。
その異変にいち早く気付いた神官の尾木間泉は、
女神ネコミミの力を借りる為に、北の最果てにあるというニャンコ神殿へと向かった」
猫かい……
「女神ネコミミの祝福により、聖猫マッシグラの魂が宿りしニャーの鏡をヘビアタマに向けると、
その幻術を打ち破り勝利を収めた……と言うのが真実なのよ」
何だか、色々と入り交ざってるな……
だが、ちょっと待てよ……
「なら、どうして家宝として物が伝わって無いんだい?」
それに沙耶は、大きく溜め息をついた。
「鏡そのものは、ニャンコ神殿を模して作られた
ニャンコツー神殿に収められていたんだけど……」
ツーって……
「それが、10年前に何者かに盗まれたのよ」
ほう……なるほど。
だが、もう一つ気になる。
「それで、これって本物なのか?」
私が紙に指を向けると、
「それは、私達にも判りかねるわ。真意を探ろうにも、厳重に管理されていて
手に入れるには優勝するしかないのよ。だから、優勝してね?」
また、軽く言うなぁ……
しかし、もしこれが本物なら、街に紛れている魔物を選別する事は可能になるだろう。
確かに、有益な品だ。
だが、なぁ……
私は、また質問を投げかける
「これって、人間相手に戦うんだろ?」
「えぇ、でも死ぬ事は滅多に無いわよ」
たまに、死ぬんだ……
しかし、これは困った……
遥子達に視線を向けながら、沙耶に言った。
「何しろ私達は、見ての通り女性ばかりのメンバー構成だ。
とても、こんな野蛮な競技に出場する気にはなってくれる訳……
いや、訂正させて頂く……」
そこには、女性達の怪しい笑顔と黒いオーラが漂っていた。




