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第二百五十二節 報告だね~……その2

 私達は、謁見の間で待たされていた。

すると、先にアレモが入って来た。

「お帰りなさい! 心配してました!」

「何とか終わったよ、心配掛けてすまなかったな」

「いえ、無事に戻ってきて頂いただけで……」

何やらウルウルしているので、肩に手を置いて続けた。

「私達は魔の大陸を目指しているんだぞ? 今からそんなでどうするよ」

「そうですけど……そうですけど~……」

私は肩に置いた手で、なだめる様に何度も軽く叩いた。


「そうだ、これを王に渡してくれ」

私は、半熟王の手紙をアレモに預けた。

「わかりました」

アレモは素直にそれを受け取る。

すると、遠くが微妙に騒がしくなって来た。

「あ……父が来たようですね」

そう言って、アレモは王の隣の席に移動した。


 私達が膝を付いて待っていると、王がやってきた。

そしてマントを翻す音を響かせながら席に着く。

「待たせたようだな、すまない」

少し間を置いてから、私達が頭を上げるとアレモが言った。

「お父様、お手紙をお預かりしています」

「そうか、どれどれ」

その手紙を見て、王の目の色が変った。

「なんと……全て終わったと申すか!」

私は少し間を置いてから答えた。

「海賊は、もう現れません。ご安心下さい」

王は僅かに首を横に振りながら、大きく溜め息をついている。

「いやはや……世の中では、これをタマゲタと言うのだろうな。本当に驚いた。なんと礼を述べたら良いか……もはや、言葉も見つからぬよ」

「ですから言ったではありませんか! 彼等こそ本物の勇者なのです!」

怒った様に言い寄るアレモに、王は笑みを浮かべた。

「今度ばかりは、アレモの言う通りだ。本当に大したものだ。だがこう言った時、私はどうしたら良いのだ?」

その問いに、少し間を置いてから答えた。

「今や、魔物の進行は深刻です。どうか、世界平和にご尽力下さい」

それに不思議そうな表情を浮かべる。

「勇者殿……私は、魔物の事は解らぬ。この私に出来る事などあるのか?」

私は笑みを浮かべて、王を真っ直ぐに見た。

「魔物の事は、我々にお任せ下さい。そして、何かあったとしても、エラクナさん率いる強力な騎士団が付いております。ですが、国民の安全は王あってこそ。今こそ、王家の威厳を見せる時です。どうか自信を失わないで下さい」

その言葉に、王の激しいオーラが炸裂した。

「うむ、気に入った! 勇者殿! 私に出来る事は、何でも言ってくれ! 任せたぞ!」

こりゃ凄いわ……

私は、その言葉に素直に頷いた。


 王が機嫌良さそうに高笑いしながら部屋を後にすると、アレモが近づいてきて言った。

「本当にありがとうございます。これで王家が責められる事も無くなりました」

深く一礼してから、アレモは続けた。

「では、ここからは非公式になります」

そう言ってピーとナッツに視線を送ると、二人は頷いた。

「それで今回の報酬なんですが、僕の独断で決めさせて頂きました。多分足りないとは思いますが、受け取って頂けますか?」

「おいおい……そんな事して、大丈夫なのか?」

「はい、すでに父には許可を頂いております。何も問題ありません」

それに遥子が聞いてきた。

「で? 幾等出すつもりなの?」

そう来たか……

まぁ、こう言うのは気持ちの問題だからな。

とりあえず、受け取る方向でもイイか……

そんな考えを巡らせていると、ピーとナッツが台を運んできた。

何やら布が被せてある。

その布をアレモが掴んで、振り払うようにめくった。

え? マジで?

そこには笑えるほどの札束が積んである。

「ここに5億あります。どうか受け取ってください」

それに私は反論するように言った。

「いや、ちょっと待て! さすがに、これは出し過ぎじゃないのか?」

私の言葉に、遥子が続ける。

「そうよね……いくら何でも多過ぎるわよね」

そんな私達に、アレモは冷静に答えた。

「いえ……もしあの時、強引にでも海軍を動かして海賊と戦っていたとしたなら何隻も船が沈んだ事でしょう。そうなれば、王家に対する非難の目は更に厳しくなった筈です。そして、そんな状況下でも交易ルートに残骸を放置する訳には行きません。残骸を早急に回収する為には、莫大な費用が掛かります。そして海軍クラスの船を新しく建造するなら、一隻でさえこんな程度の金額では済みません。そんな事態になれば、いったい何十億を損失していた事か……いえ、それこそ信頼関係も含めて取り返しがつかない事態になっていたかもしれないのです。その総合的被害を考えれば、これでも十分過ぎるほどにお釣りがくるんですよ」

お釣りがくるって……

この年で凄い考え方してるな……ってか、これで足りないって

こいつの金銭感覚って一体どうなってるんだよ!

何かこの国の将来に、激しい疑問が浮かんだのは間違いなかった。












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