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第二百五十一節 報告だね~……

 私達が城の前まで来ると、いつものように警備の人が立っている。

今日は大丈夫かな~?

不安になりながら近づいて行くと、私達に気付いて近寄ってきた。

また威嚇されると困るので、とりあえず木札を出していると真ん中の人が声を上げた。

「お帰りなさいませ! どうぞ、お通りください!」

ふと見ると、それは最初に威嚇してきた人だった。

おや、覚えてくれたんだ。

「ささ、どうぞ」

城に向かって手を差し出しているので、おもわず恐縮してしまう。

「あっ、すみません」

私達は警備の人に何度も頭を下げながら、入り口を通って行った。


 城の中に入って行くと、一人の騎士が走ってくる。

「お帰りなさいませ! 無事にお戻りになられたのですね」

彼は、一緒に王の警備をしたエラクナさんの部下だ。

「ありがとうございます、何とか終わりました。それで、まずピーかナッツに会いたいのですがどこに居るか判ります?」

「あ……確か、今食事をしているはずですよ。場所は解りますか?」

「はい、以前に行った事がありますので大丈夫です。ありがとうございます」

私達はお互いに深く頭を下げて挨拶を交わすと、彼は持ち場へ戻って行った。



 メイド達の食堂の扉を開けると、あの壮絶な光景が目に入ってきた。

皆が物凄い形相で、食事を口に掻き込んでいる。

いつ見ても、恐ろしい光景だ……

「少し……待つか……」

私が呟くと、遥子も呟くように答えた。

「そうね……」


 おかわりを食べ終わった頃に、ピーが私達に気付いた。

「あ……お帰りなさいませ」

呆れてしまうほどに遅い反応だったが、素直に答えた。

「少し話がしたい。イイかな?」

「あ、ではこちらに」

テーブルに手を差し向けたので、素直に座ってみる。

「どんなお話でしょうか?」

不思議そうに聞いてきたピーに、私は大きく息をついて答えた。

「あまり、口外したくない話だ」

それに、二人揃って驚いたように眉を上げる。

そしてピーとナッツは、顔を見合わせてから頷いた。

「では、少々お待ち下さい」

私達に伺いを立てると、そのまま立ち上がる。

「皆さんは、持ち場に戻ってください。私達は、少しお話をしてから戻ります」

メイド達はそれに頷くと、一斉に立ち上がって皿を片付け始めた。


 やがてメイド達が出て行くと、部屋は嵐が過ぎ去ったように静まり返っている。

「では、どうぞ……」

ピーが真剣な表情を向けてきたので、私は頷いた。

「アレモの弟を見つけた……」

その言葉に、二人は目を見開いた。

「え? 弟? そんな馬鹿な……」

揃って信じられないような表情を浮かべているので、私はこれまでの経緯を話す事にした。



 一通りニュービンボーデス島の話をした後に、海賊との一件に話題を移して行く。

ひとまず、子供達を助けた話までは理解したようだ。

そして、ビーチサンダル・サノバビッチの名前を出した瞬間に二人は固まった。

「なんですって?」

二人は疑惑の視線を向けてくるが、私は視線を真っ直ぐ向けて答えた。

「その子の名は、ビーチサンダル・サノバビッチだと言ったのだ」

その答えに、動揺を隠せない。

「だって……まさか生きているはずが……」

やはり死んだ事にされてるのか……

私は大きく溜め息をついて続けた。

「まぁ、そんな事だろうと思ったよ。やはり、内密に処分されたんだな?」

しばらく間を置いて、ピーは呟くように言った。

「いえ……あの保管庫に、公式の死亡証明書があります。それによれば生まれて間も無く亡くなったとされていて、王の承認も在りました。一体、どんな経路でそんな事が……」

ほう、なるほどね。そう言う事か……

私は、それに頷いて話を続けた。

「誰の策略か知らないが、どうやらかなり大掛かりのようだな……だが、アレモの弟は間違いなく生きている。そして南の島で、新しい人生を送っているんだ。少なくとも今は幸せに暮らしているから、そこは安心してくれ。実際に本人もビーチ・サンダルと名乗りサノバビッチと言う名は封印しているので、本人はこの王家との関わりを公にするつもりは無いようだ。だが、このまま何も無かった事にするのはどうかと思う。しかし少なくとも今アレモが知るべき事柄では無いし、その存在が知れればビーチサンダルの命は危険に晒されるだろう。だからこそ、君達に話した。この手の話に真剣に向き合えるのは、ピーとナッツしか居ないからな」

暗い表情でピーが答える。

「そうでしたか……私達は何も知りませんでした。まさか、そんな事になっていたなんて……」

俯くように視線を落とす二人に、私は続けた。

「状況から見て、これを仕掛けた奴もビーチサンダルの行方を見失っている可能性が高い。しかし、相当に危険な話である事には間違いない。この先どうするかは、全て君達に任せる。私達は、一切口外するつもりは無いから安心してくれ」

それに大きく溜め息をついてから、私に視線を向けた。

「わかりました……確かに危険ではありますが、むしろ今伝えて頂いて本当に助かりました。この一件は、私達が責任を持って預からせて頂きます」

「うむ、助かるよ。解っていると思うが、穏便にな」

ピーとナッツは素直に頷いた。

「それと、海賊の一件は解決して来た。王と公式に謁見したいのだが、頼めるか?」

「はい、私達にお任せ下さい」














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