第二百四十八節 闇属性ね~……
とりあえず今までの流れを遥子に説明すると、大きく息をついてから答えた。
「つまり、闇属性がどうしたら出るかって事よね?」
「あぁ、そうなんだ。解るか?」
「う~ん、確かに魔法ならあるけど呪文だからね~。剣で使えるのかしら?」
呪文ね~、そうなると……
ん? あれはどうだ?
「あのさ、魔法の杖みたいな使い方って出来ないか?」
「ん? 杖?」
「そうだな……例えば簡単な呪文を唱えて前に向けると、魔法が出るみたいな感じの」
「あぁ、映画みたいな奴ね? そうね~、それなら行けるかもしれないわね~。そうすると、呪文の短縮が問題よね。ちょっと待ってて」
そう言って、翔子と蓮を交えて魔術論議が始まってしまった。
こうなると、私達はただ見てるしかできない。
「とりあえず、待とうか」
二人に言うと、素直に頷いた。
ひとまず暇なので、私は考えを巡らせて見る。
闇属性って魔物に効くのか?
いや……それよりも、魔物に属性があるのだろうか?
今まで戦った中で、属性を考えたのは巨大クラゲの時くらいしかない。
あの時は、伊代が放つ雷が良く効いた。
そうなると植物系は炎が効くのが定番なのだろうが、剣を使う私達としては
そのままブッタ斬ってしまった方が話が早いので試した事など一度も無い。
しかし巨大クラゲの事を考えても、確かに属性はあると考えて良さそうだ。
そうなると、闇が魔物に効かないなどと言う事は無いはずである。
では、同じ属性に当たってしまったらどうなるのだろうか?
ゲームで言えば、耐性があると言うのが基本的な考え方だ。
実際に炎属性の魔物が居たとしても、燃えながら出てきたのなんて見たこと無い。
焚き火が歩いている状態なんて、凄く嫌だ。
もしそんな魔物が居たならば、放火魔より性質が悪い。
きっと、辺り構わず火事になってしまうだろう。
そんな大迷惑な奴が存在するならば、どう考えても超目立つはずだ。
これまで目にしていないと言う事は、まず居ないと考えて良いだろう。
そうなれば、やはり耐性があると考えて間違いは無さそうだ。
つまり威力は半減するが、それ以上の攻撃力があれば同じ属性であっても倒せるはず。
それが出来ないなら、無理に同じ属性で戦う必要は無い。
少なくとも私達は、それぞれに属性が違うはず。
誰かが、フォローに入れば良いだけの話だ。
まぁ、それほど問題は起きなさそうだな。
しばらくして、遥子達が私に視線を向けた。
「色々考えたけど、コレしかないわ!」
遥子の力強い言葉に、おもわず期待してしまう。
「それで、何て言えばイイんだ?」
私が聞くと、不敵な笑みを浮かべて答えた。
「ダークフォースよ!」
ベイダーさんですか……
また船から降りて私が小太刀を構えると、遥子がそれを指差しながら言った。
「剣を振りながら言うのよ、イイわね?」
ちょっと、気になっていた事を聞いてみる。
「その時に、コーコーした呼吸音とかは要らないのか?」
「そんなの、要らないわよ……」
遥子に、呆れたような冷たい視線を向けられてしまった。
まぁ、試しに振ってみるとするか。
「ダークフォース!」
声を上げながら小太刀を振り下ろしてみると、ブーメランのような形をした黒い影が
勢い良く飛んで行く。
それが遠くの壁に突き刺さると同時に、土煙を上げて壁ごとブッ飛んだ。
「おぉ、凄い……」
私が感心していると、遥子が言った。
「次に、ダークウィップって言ってみて!」
私は素直に頷いて、試してみる。
「ダークウィップ!」
すると剣の先から鞭のような何かが現れて、地面でピシッ! と音を立てた。
「おぉ、これも凄いぞ!」
何か面白いのでピシピシ叩いて遊んでみる。
そして15回ほど叩いたくらいで、影が消えて行った。
ふと私は、皆の方に視線を移して安に言った。
「これ凄いぞ! 安もやってみた方がイイ」
「がってんでやす」
私の横に並んだ安は、少し緊張しているようだ。
私は安の肩を軽く揉み解しながら言った。
「そんなに固くならなくて大丈夫だ。素直に振れば出るぞ」
安は、それに頷いて小太刀を構えた。
「ダークフォース!」
振り下ろした二本の小太刀から、まるで手裏剣のような影が放たれる。
そして、同じように遠くの壁が土煙を上げた。
「おぉ~……」
何やら感動しているようだ。
「ほら、次もあるぞ」
私の言葉に、安は素直に頷く。
「ダークウィップ!」
その掛け声と共に、二本の鞭がピシピシ! っと音を立てた。
「凄いでやす!」
やはり安も楽しかったようでピシピシと遊んでいたが、その二本が見事に絡まった。
「あっ……」
安は必死に絡まった二本を取ろうとするが、さらに絡まっていく。
そして、黒い鞭の影はそのまま消えて行った。
安は凄く悲しそうな表情を浮かべて私を見ているので、とりあえず答えた。
「ちょっと練習が必要みたいだな。まぁ、出るのが解っただけでも収穫だよ」
それに伊代が続けた。
「勇太さんの言う通りだ。それを使いこなせれば、これまで以上に戦術が広がるぞ」
その言葉に、安は強く頷いた。
「あっし、頑張るでやすよ!」