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第二百三十三節 どっちから行きますかね~……

 私達が船に戻って大きなテーブルを囲んで落ち着いていると、

亜牙朗がヒョコっとキャビンを覗き込んで来た。

「お! やっぱココだったか!」

そう言いながら、私の隣に座ってきた。

「何だ? まだ、話は終わってないんじゃないのか?」

すると亜牙朗は、子供のような笑みを浮かべて答えた。

「話そのものは、意外に簡単に決まったよ。基本的には、俺達のやり方を通して構わないそうだ」

「そうか……それなら、皆もかなり楽だな。良かったよ」

ひとまず頷き合うと、ふと聞いてきた。

「ところで旦那、これからどうするんだ?」

ん? 何だ?

「あぁ……あと二箇所、行かなきゃならない所があるが?」

「二箇所も?」

そうか、亜牙朗なら何か知っているかもな。

「どちらも探し物でね。コロンジャッタと、マウイ島に行かなければならないんだよ」

「ん? コロンジャッタって言うと、もしや競売か?」

眉を顰めて聞いてくるので、素直に頷いてみる。

「あぁ、そうだが?」

すると、何度か頷きながら人差し指を立てる。

「なら、まずはそっちを優先した方がイイな。明日、大きな競りがあるんだ。さすがにそれは外せねぇだろ!」

確かにその通りだ。上手くすれば見つかるかもしれないな。

私が納得していると、亜牙朗は更に聞いてきた。

「あとマウイとか聞こえたが、まさかアレを狙ってるのか?」

おもわず亜牙朗を凝視する。

「ん? 有名なのか?」

その問いに、呆れたような笑みを浮かべた。

「どうせ、あれだろ? 『どこも指さない羅針盤』って奴? 知る人ぞ知るって感じだが、俺達にしてみりゃ全く興味が湧かねぇ代物だよ」

「え? そうなの? それって、秘宝じゃないのか?」

驚いた私に、少し考え込むように首を傾げながら答えた。

「あぁ……秘宝っちゃ秘宝かもしれねぇが……だがよ、どこも指さないんだろ? それって、ぶっ壊れてんじゃねぇの? んなもん、いらねぇよ」

確かに……

その説得力に、おもわず頷いてしまった。




 さて、ひとまず競売が明日となると出発を急がなければならないな。

「加瀬朗さん、コロンジャッタまでは近いんですか?」

「ん? あぁ、大した距離じゃねぇな」

そう言いながら、加瀬朗さんはテーブルに地図を広げて指差す。

「丁度、この島の裏側に位置するのがコロンジャッタだ。この横のルートで行きゃ、すぐだろ。朝一番で行きゃ、十分に間に合うだろうぜ」

なるほど、では明日の出発でイイか……

「なぁ? もし良かったら、俺も一緒に行ってイイかな?」

伺いを立てるように聞いてくる亜牙朗を横目に見る。

「あぁ……別に構わないが、こっちの方は大丈夫なのか?」

「それは、問題無いさ、もう、基本的な事は決まってるしな。何しろ、半熟王が凄く寛容に俺達の主張を認めてくれてるから助かってるよ。他の連中には俺達が気に食わねぇのも居るようだが、王が睨み効かせて黙らせてくれてるしよ。あとは細かい刷り合わせだけだから、相棒に任せておけるさ」

ふ~ん……あの半熟王がね~。激しく頼り無さそうな感じだったんだけどな~……

人は見かけによらないものだな。

「まぁ、それなら良いが……もし戻って来て話が変っていたりしたら、その時は遠慮なく相談してくれ」

それに、亜牙朗は深く頷いて答えた。

「あぁ、そうだな。実際に旦那達の戦力は、国を黙らせる力があるからな。その時は、マジで頼むぜ!」

「おいおい……丸投げは勘弁してくれよ?」

「え? ダメ?」

キョトンと聞いてくる亜牙朗の表情に、皆も笑ってしまっていた。


「そんじゃ、明日の朝にまた来るよ!」

そう言いながら、亜牙朗は海賊船へと戻って行った。

さて、私達もユックリするか……


 とりあえず鎧を外しながら荷物を整理していると、

加瀬朗さんが何やら妙にソワソワしている。

いったい何事だろうか?

「どうしました?」

ひとまず聞いてみると、惚けた様に私を見る。

「あのよ? 奴等、どっか飲みに行ったりしねぇのかな?」

あぁ……そう言う事ですか……

しかし、あの激しいカラミに懲りてるんじゃないかな~?

「それなら、ちょっと聞いて来ましょうか?」

笑みを浮かべて言った私に、両手をブルブルと振っている。

「それじゃ、ダメだろ! まるで俺が、飲みに行きてぇみたいじゃねぇかよ!」

え? そうなんじゃないの?

う~ん、なるほどね~。行きたいけど、誘って欲しいと言った所か。

その時、誰かが私の後ろから突付いてくる。

何気に振り向くと、安が私を見ていた。

そして小さく手招きしている。

私が顔を近づけると、安は小声で囁いた。

「あっしが行ってきやすよ、ちょっと待っててくだせい」

安は、そのままキャビンを出て行った。



 ひたすらにソワソワしている加瀬朗さんを眺めながら待っていると、

やがて安が戻って来て私に親指を出す。

しばらくすると、加瀬朗さんに絡まれていた海賊達がゾロゾロとキャビンに入って来た。

ソイツ等が整列するように並ぶと、おもわず噴出しそうになった。

あの……皆さん、すでに涙目なんですが……大丈夫でしょうか?

まるで深呼吸をするように大きく息をつくと、覚悟を決めたかのように声を揃えて叫んだ。

「加瀬朗さん! 俺達を、飲みに連れて行ってください!」

「おぉ! お前等、わざわざ俺を誘いに来てくれたのか! そいつは嬉しいぜ! おっし! 今日は俺のおごりだ! 付いて来い!」

そして完全に涙目の海賊達は、加瀬朗さんに連れられて町へと繰り出して行った。

あらら……可哀想に……


 これまでの様子を黙って見ていた採光さんと昏衣斗さんが、クスクス笑いながら言った。

「安さん、ヒデェ……」

「本当にヒデェ……」

それに釣られるように、遥子達も腹を抱えて笑い始めた。

「ねぇ、安! あんた、わざとやってるでしょ!」

「テヘ?」

やたらと不自然な安の照れ笑いに、皆で一斉に噴出した。

その爆笑は、誰も止める事が出来ないままキャビンの中にひたすら響き渡っていた。












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