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第二百三十一節 作戦ね~……

 いや~、派手にやってるね~。まるで花火だな……

私は感心しながら、岸壁の側でその光景を眺めていた。

加瀬朗さんの船には、遥子と翔子が乗っている。

まさにこの瞬間、海軍の船を激しく攻撃している最中。

そして今回、私達は陸から潜入してきた。

メンバーは安と伊代、そして援護として蓮を連れてきた。

潜入は単純に正面突破だったので一応は気合を入れてきたのだが、

押し寄せる海賊達に気を取られてこちらは手薄も良い所。

警備が二人しか居なかったので、まさに楽勝だった。

ひとまず、死人を出さなくて済んだので良かった。


 ちなみに、ここに来る前に半熟王の所へ寄ってきた。

今、皆であの派手な攻撃を見つめている。

当然、金さん銀さんも一緒だ。

まぁ、三人とも唖然としたまま一言も発する事が出来ない状態のようだが……

「さて……そろそろ、ネコミミを装備だ」

私の言葉に頷いて、皆が頭に装備する。


 それにしても、さすが遥子達の魔法は凄いな。

もうすでに、海軍の船は原形を止めていない。

ってか、まだ撃ってるし……


 しばらくすると、海の上が賑やかになってきた。

お……来たな。

海軍達が、必死に泳いで逃げて来るのが見える。


 岸壁に上がろうとして来た時、蓮の白い魔法の玉が飛んだ。

かなり威力をセーブしているようで、相当に遠慮気味に撃っている。

だが杖の連射は、その進行を阻止するには十分だった。

ずぶ濡れで立ち尽くす海軍達の目からは、すでに戦う意思は感じられない。

むしろ完全に怯えきっていた。

だが、その中の数人は偉そうな服を纏った奴等を庇うように前に立って剣を構えている。

まぁ、ご立派な志だ事……

だが、それもいつまで持つかな?

私はおもむろにニャーの鏡を取り出して、奴等に向ける。

すると、眩しい光に辺りが包まれた。

やがて真っ白い光が静かに消えて行く。

ほら出た……

異様な奇声に驚いて、前で剣を構えている奴等が振り向くと同時に景気良く腰を抜かした。

「うわ~! ば……化け物だ~!」

確かに、自分が庇っていた人物が植物の化け物になっていたら驚くよな……

海軍達は、蜘蛛の子を散らすようにその場を離れて行く。

そして化け物は、その他に2体。

今回は、何故か植物シリーズだ。

触手を鞭のように振るって、私達を威嚇してくる。

だが、その程度で私達が怯むとでも思っているのだろうか?

「安、伊代。行くぞ!」

それを合図に、私達はそれぞれの目標に向かって走った。

私が化け物を一刀両断して、伊代に視線を向けるとやはりソイツを叩き斬る所だった。

それに頷いてすぐに安を見ると、何やら苦戦しているようだ。

なるほど……小太刀では、リーチが短いか!

私はすぐに駆け寄って、ソイツを叩き斬った。

安は目を丸くして息を荒げている。

「旦那……助かりやした」

「いや、私こそ気が付かなくてすまない。確かに、小太刀であの触手の中に飛び込むのはキツイよな」

すると、伊代が冷たく言い放った。

「意外な弱点だな……私に考えがある。近いうちに、付き合ってもらうぞ」

「頼むでやす」

さすがにココで、付き合うってどっち? とか聞いちゃダメだよな……

だが、これで少しは二人が接近してくれるか?

私は、この二人の発展を少し期待してしまった。



 さてと……

あとは海軍の奴等だな。

全体を睨むように見渡して、私は大きな声を上げた。

「貴様等、良く聞け! これまで海軍は、この化け物に操られていたのだ! 半熟王も、これを見届けた! 誰に従うのか、良く考えるんだな!」

私の後に続くように、金さんが叫ぶ。

「半熟王の御前である! 頭が高い! 控え~!」

「はは~……」

海軍達は一斉に、半熟王の前にひれ伏せた。

半熟王は一歩前に出て、静かに言った。

「我が王族達は、どこに捕らえられておるのじゃ? すぐに解放してはくれぬかの?」

それを聞いて、数人が慌てながら走って行った。


 私は平伏せている海軍達に、冷たい視線を投げながら言った。

「パンツェッタでの海賊行為は、貴様等の仕業だな」

皆は、平伏せたまま黙っている。

そこで金さんが怒鳴った。

「誰も知らぬとは、言わせぬぞ!」

その声に、揃ってビクっとする。

これは困ったな……

私は大きく息を付いてから、海軍達に言った。

「素直に話せば、命まで取ろうとは思っていない。どうする?」

金さんが驚いたように私を見る。

「何を仰いますか! これは大罪ですぞ! もはや、この者達の死罪は免れません!」

「いや、それじゃ誰も口を割りませんよ。全て話した挙句に死ぬのでは、あまりに割が合わないでしょう。このまま脅しても、真実は墓の中に行ってしまいますよ」

「まぁ……確かに、そうではありますが……」

どこか納得の行かない金さんだが、実はそれも威嚇のうち。

死罪を仄めかせて助かる道を提示すれば、命が惜しくて打ち明ける奴が出るはず。

今の所、真実を知るにはこれしかないだろう。

「さて、このままだと貴様等は間違いなく死罪だ。命が惜しければ、早い所素直に話した方が身の為だぞ?」

すると、手前に居た奴が少し顔を上げた。

「も……申し訳ございません。我々は、指揮官の命ずるままに……」

ようやく話し始めたか……

私は、半ば呆れながら言った。

「ほう……実行犯は、あの化け物と言う事だな?」

ソイツは素直に頷くと、話を続けた。

「確かに海賊船を模した辺りから、我々も疑問は感じておりました。とは申しましても、指揮官に意見などすれば我々の首が飛びます。全ては国家間に関わる最高機密作戦であるとの事でしたので、我々はそれに従いました。王家の疑惑に関しても、その一連の作戦となっておりました。ですが……まさか指揮官が、あんな……」

ソイツは、ガックリと肩を落とした。

国家間の機密か……流れ的に考えても総左遷丈の影がある気がするのだが、

すでに証拠は殺してしまったしな~。

それに、奴等がそこまで簡単に全てを吐くとも思えない。まぁこの際仕方ないか。

しかし、確かにコイツ等には同情こそ出来るが……それにしてもな~……



 やがて捕まっていた王族の人達が連れてこられたようだ。

私は金さんに言った。

「申し訳ないが、こちらは少し考えさせてくれ。まずは、王家の者達が全員無事か確認して欲しい」

「わかりました。では、こちらはお任せ致します」

そう言うと、足早に半熟王達と王族達の所へと行った。

金さんは人数を数えると、私に目配せをした。

ひとまず、全員無事なようで一安心だ。

半熟王達は嬉しそうに話している。

中には泣き崩れている人も居るようだ。

これで、もし王族に犠牲者が出て居たりしたら海軍達の極刑は免れないからな。

とりあえずは、最悪の事態は回避できて良かった。



 ふと海の方に視線を移すと、海賊達と加瀬朗さんの船が岸壁に付いたようだ。

皆が船から降りてこちらに歩いてきた。

亜牙朗達の顔色が、微妙に青ざめて見えるのは気のせいだろう。

「おう! そっちも終わったみたいだな!」

加瀬朗さんがイカシタ笑顔で拳をこちらに向けている。

私も、それに笑顔で頷いた。


 皆が私達の側まで来ると、何事かと思うような集団になってしまった。

王族や海軍の紛れて海賊まで居るとなると、完全に仮装パーティー状態である。

ふと亜牙朗達をみると、やはり顔色が悪いようだ。

「大丈夫か?」

声を掛けてみると、どこか引きつった笑顔を浮かべた。

「あぁ……大丈夫だ。色々と驚いただけだよ」



 王族達との挨拶を一通り終えると、半熟王は金さんと銀さんを従えて私の側に来た。

「この度のご尽力、真に感謝の限り。何かワシに出来る事があれば、なんなりとおっしゃってください」

では、試しに言ってみるとするか。

さて、吉と出るか凶と出るか……

私は、残骸となった海軍の船を指差す。

「見ての通り、海軍は壊滅状態だ。もう、あの船は使えないだろう?」

素直に頷く半熟王に、私は向き直って続ける。

「そこで私は、海賊達に海軍になってもらおうと考えている」

「なるほど、海賊が海軍に……って、え? えぇ~?」

半熟王は、金さん銀さんと一緒になって仰け反るように驚いている。

「ちょ……旦那! あんた、正気か?」

亜牙朗も驚いているが、私は気にせず半熟王に続けた。

「何か問題でも? 彼等の強さは、良く知っているのでは? それに彼等は、命の恩人でもあるのではないか?」

「それは、そうですが……いや、しかし海賊が海軍って……」

視線のやり場に困りながら呟くように言った半熟王に、私は深く頷く。

「まぁ、言いたい事は解る。私も初めは海賊と聞いて、相当に警戒していた事は確かだ。彼等の出方次第では、問答無用に滅ぼしていた事だろう」

その言葉に亜牙朗と船長が揃ってギョっとしながら私を見るが、気にせずに続ける。

「だが私が見る限り、彼等は悪の限りを尽くすような卑劣な賊では無い」

「と、申されますと?」

不思議そうに首を傾げる半熟王に頷いて、更に続けた。

「彼等は世界中の恵まれない子供達を見つけては、人知れずに育てている。少し話を聞いたが、そう言った子供達の為の施設が存在しないのはこの国だけでは無いそうじゃないか。それは運が悪ければ死ねと言っているのと、大して違いは無いんだぞ?」

「えぇ……それが、かなり難しい問題でして……」

私の問いに、困り果てているようだ。

「まぁ、それをいきなり何とかしろとは言わない。だが、考えてみて欲しい。もし彼等が性根の腐った生粋の盗賊なら、そんな事しないだろ?」

「まぁ……確かに」

その辺りは納得できているようだ。

「そんな彼等が海賊などしているのは、これまで環境に恵まれなかっただけだと考える事はできないか?」

半熟王は大きく息を付いて考え込んだ。

「う~ん、なるほど……言われて見れば、確かにその通り。我が国だけを考えても、恵まれない環境から誰の援助も無しに立ち直る術は皆無に等しい……」

私は、おもむろに人差し指を立てる。

「そう……悪に染まらなければ生きていけない環境の中で、どうして真っ当な選択を出来るだろうか? つまり、それこそが悪循環と言うものだ。一度だけで良い。彼等にチャンスを与えてやって欲しい」

そのまま私が深く頭を下げると、半熟王は深く唸る。

やがて、静かに頷いた。

「解りました。あなたの望み、この半熟王がしかと聞き届けました」

ふと半熟王は、亜牙朗を見る。

「まさか海賊に守られる日が来るとは、これっぽっちも思っておらんかった。これから宜しく頼むぞよ」

「あ……あぁ、こちらこそ……」

亜牙朗はかなり放心した様子だが、ひとまず挨拶を交わしていた。












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