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第二十三節 情報だよね~…… その3

 私と安は、港の倉庫前に来ている。

客船が付く所とは違い、工業的な雰囲気のある埠頭と言った場所だ。

「ここだな?」

私が問うと、

「そうでやす」

後に続くように答えた。

さて、どうしたもんだか……


 まずは、倉庫の陰に隠れてみる。

辺りは暗く月明かりに頼るしかないが、

ここならばどちらから来ても見つけられるだろう。

そして、安に言った。

「お前は、後ろで隠れて居ろ。いいな?」

それに、黙って頷いた。


 遠くから、甲高い靴音が響いてきた。

やがて姿が見えてくると、何とも場違いな雰囲気の女性が歩いてくる。

闇に紛れているのでシルエットでしか確認でないが、

まぁ、これは間違いないな……


 目の前を横切ろうとする時、私は一歩だけ歩み寄って声をかけた。

「尾木間沙耶だな?」

声と同時に、その歩みが止まった。

月明かりに照らされると、その全容が判った。

顔が半分ほど隠れる大きな赤いハット、

そして赤いロングコートに流れる金色の長い髪が妙に目立つ。

やはり場違いな雰囲気ではあるが、かなりの美形である事は十分に伺わせていた。

こちらに振り向かず立ち止まっているが、これはかなりヤバイ雰囲気だ。

殺気こそ消しているが、そこに一切の隙は無い。

十中八九、手練だ……

「情報が欲しい、協力してくれないか?」

女性は、まだ黙っている。

「命が欲しい訳ではない。出来れば、穏便に済ませたいのだが?」

それに、僅かな笑みを浮かべた。

「こんな所で交渉なんて、ムードが無いのね……」

静かな声だ……

私は、それに続けた。

「そうだな……君も忙しいだろう。日を改めても構わない」

「それじゃ明日のこの時間、タカイヨホテルのラウンジで」

それだけ告げると、また靴音を響かせて歩いて行った。

沙耶が見えなくなると、大きく息をついた。

もう、たまらんわ~……緊張した~……

気が付けば、私は汗だくになっていた。

その時、後ろから安が声をかけてきた。

「あれで、良かったんでやすか?」

「あぁ……もし噂通りのプロなら、明日までに私達の情報は掴んで来るだろう。

だが、逆に何を知りたいかも判るはず。

まぁ次会う時には丸裸状態ってのは気に食わないが、この状況では仕方ない。

そのくらい譲歩しなければ、交渉に乗っては来ないだろうよ」

「そうでやすか……」

何処か、納得が行かない表情で頷いた。

ひとまず、今日の所は出来る事が無い。私達は、そのまま引き上げだ。



 そして翌日……



 私と安は、指定の時間よりも前にタカイヨホテルの前に来た。

全体を見渡すと、超高級ホテルなオーラが出ている。

さてと……

「安は、外から見ていてくれ。だが、奴等がどれだけの人数で来るかは不明だ。

私よりも自分の背後を気にしてないと、あっさり捕まるぞ? 

じゃ行ってくる。最悪の場合は、全力で逃げろよ」

安は、それに頷いた。


 今、ラウンジに座っている。

剣が邪魔になるので、壁寄りの長椅子は避けて真ん中の寄りの席に腰を掛けた。

高そうな革を張った、肘掛の無い小さな椅子だ。

注文を聞きに来たので、

「ホット」と言ってみると、コーヒーのような物が出てきた。

適当に頼んではみたものの、素直に出てくると思わなかった。

こう言うの、あるんだ……

一口飲んでみると、確かにコーヒーのような……

いや、お茶のような……

かなり、微妙な飲み物である。

伝票を持ってきたので覗いてみると、

なぬっ!

おもわず、目が飛び出た。

5800エンってなんだよ! いくら何でも、高過ぎだろ!

だが、まぁ今は仕方が無い。

味わって、飲むか……

腕を組んで、待ってみる……と言っても、そう見せているだけで、

右手は剣に手を掛けたままだ。

その時、背後から声が聞こえた。

「早いのね、待った?」

声こそ明るいが、私の出方いかんによっては殺す事も容易なはずだ。

私は、その体制のまま言った。

「まぁ、どうぞ座って。ホットで良いかな?」

その言葉に頷きながら、私の正面に座った。

危なかった……

横目に、何かを仕舞う瞬間を見てしまった……

だが、ここで怯んではいられない。

沙耶に聞いてみた。

「さて、どこまで掴んだのかな?」

それに、笑顔を見せる。

「ずいぶんと、おりこうさんね」

それに、私も笑顔で返した。

いや、マジで緊張するんですけど……

その時、沙耶が切り出した。

「判っていると思うけど、お互い信用するにはまだ早いわ」

それに素直に頷くと、話を続けた。

「まずは、実力を見たい。仕事を頼まれてくれないかしら?」

テストか……まぁ仕方ない。

軽く溜め息をついてから、一度だけ頷いた。

「それじゃ、こちらから連絡するわ。」

沙耶は軽やかに立ち上がると、そのまま去って行った。

私は、大きく息を吐きながらその場に項垂れた。

やっぱ、たまらんわ……


 私が椅子でグッタリしていると、もう一つのホットが運ばれてきた。

テーブルに虚しく置かれると、追加伝票が静かに増えた。

二杯のホットをしっかり最後まで飲み干すと、

私は会計で狂ったような金額を支払って外に出た。
















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