第二百二十二節 満員だね~……その2
食事の時間になった。
それは、もう凄い事に……
まずは子供達に食べさせた方が良いだろうと言う事で、
私達は後方からひたすらに監視している。
だが……コイツ等、野生動物か?
一言で現すなら、まるで猿の群れを見ているようだ。
これは、片付けが大変だ……
半ば呆れ顔で見ていると、ふとビーチサンダルが立ち上がって私の前に来た。
「あの……すみません。皆は、まだ食事のマナーを覚えていないのです。こんなに汚してしまって……」
溜め息をつきながらテーブルを見るビーチ・サンダルに、私は笑みを浮かべた。
「まぁ、仕方ないさ。今まで、そんな事言ってる場合じゃ無かったんだろ? 船にイタズラしなければ、それでイイさ」
私の言葉に安心したような表情を浮かべて頭を下げた。
「ありがとうございます」
それにしても、ずいぶんとシッカリしているな。
この子供達と一緒に居たと言う事は、これまでの生活で
相当な苦労を伴った事くらいは予測できる。
何かを教わる機会も、極度に少なかった事だろう。
その中で、これだけの礼儀があると言う事はさすがとしか言いようが無い。
そうさせるのがDNAなのかIQなのか知らないが、血筋って凄いな……
やがて子供達は食事を終えて、鬼のように散らかったテーブルの片付けを始めた。
皿の数も凄いが、恐ろしいくらいに飛び散った無数のカスに唖然とする。
どうしたら、ここまで汚せるのだろうか……
だが、平然とそれを拾いながら拭く女性陣は大した物だ。
さすが、人気の職業に保母さんが上がるだけの事はある。
まぁこの世界では違うかもしれないが、蓮と翔子と伊代も平然と片付けているので
近い物はあるのだろう。
嫌々ながら拾う私達とは、レベルが違うようだ。
母は強しと言った所であろうか……
しばらくは子供達の遊びの付き合いで大変だったが、
夜も更けてくるとアクビが出てきたので私は言った。
「そろそろ寝る時間じゃないのか?」
それに、ビーチサンダルが答える。
「そうですね、そろそろ就寝の支度を始めさせて頂きます」
それに頷いて採光さんに視線を移す。
「では、宜しいですか?」
「わかりました。まぁ皆まだ小さいようですし、一つのベッドを数人で使ってもらえば何とかなるでしょう」
笑顔で立ち上がった採光さんは、そのまま寝室へ向かう。
その後ろを、子供達が大人しく付いて行った。
ふと気が付けば、異様なほどに音が無い。
まるで、嵐が去った後のような静けさだ。
「慣れって凄いな、静か過ぎて耳鳴りがするよ」
何気に呟くと、遥子が笑みを浮かべながら言った。
「あっ、やっぱり? あたしもなのよ。それにしても、本当に凄かったわね」
そんな言葉に、蓮が続けた。
「私も、凄くビックリしました~。どこの動物かと思っちゃいましたよ」
その言葉で、皆の冷たい視線が蓮に集まる。
すると翔子が、呆れたように首を振りながら蓮の肩を軽く叩いた。
「いや……蓮は、人の事なんて言えないと思うんだけどな~」
翔子の言葉に驚いて、蓮は目を見開いた。
「え? まさか私って、あんな?」
「いや……今は問題無い。だが少し前までは、それはもう……」
「え? 私、そんな酷かったの?」
それに皆で静かに頷くと、目を丸くした。
「うそ~……」
あらら、すでに半泣き状態になっているし……
蓮は、かなりショックを受けているようだ。
「とにかく今は出来るんだから、それでイイじゃないか。そんなに気にする事は無いよ」
私の言葉に、蓮はニパッと笑みを浮かべて言った。
「ですよね~!」
また、ずいぶんと立ち直り早いな……