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第二十二節 情報だよね~…… その2

 もう夜も更けているので、宿を見つけてすぐにチェックインした。

それほど広くない受付のカウンターにウエイター風の男性が立っているが、

これと言って特徴も無い。ビジネスホテルと言った雰囲気だろうか?


 頼んだ部屋は二つ、私以外は全て女性なので、大きい部屋を一緒に使ってもらっている。

男性は、シングル部屋に一人だ。

部屋の中を見渡して目立つ物と言えば、ベッドとテーブルつくらいなものだ。

シングルなのに、何故か椅子が3つ置いてあるのは不思議である。

部屋の中もかなり質素な作りだが、

窓や棚などのデザインはイギリス風でお洒落に出来ている。

テレビなどはこの世界には存在しないのだが、別に見る必要も無い。

静かな夜も、また乙な物だ。

これも、美の一つである。

だが、のんびりして居られるのも今のうち。

魔の大陸には、宿があるかどうかも判らないのだ。

だが、時間をかけても居られない。

何とかして、策を見つけなければ……



 次の日……



 今日は私一人で、情報を求めて街を歩いている。

女性陣は、買い物だそうだ。

それで一日が潰れたらたまった物ではないので、早々に逃げ出してきた。

しかし、これと言った情報はそうそう落ちていないものだ。

さて、どうしたもんだか……


 考えながら歩いていると、何かが目の前に立ち塞がった。

おもわず、剣に手を添える。

「ってお前かよ……いいかげんにしないと本当に斬るぞ?」

昨日の奴は、私の言葉に激しく首を振る。

「違うんでやす! 今日は情報を持って来たでやす、旦那!」

「情報だと?」

激しく冷たい視線を投げかけると、奴は話し始めた。

「あっしが調べた所によりやすと、国際的な情報組織があるらしいんでやす」

また、怪しい話だな……

奴が周囲を警戒するように見渡すと、小声で言った。

「その国際組織の名は、盗聴全力トウチョウゼンリョクっていいやす」

激しく胡散臭いぞ……

「本当なのか? それ……」

私が疑っていると、話を続けてきた。

「その組織のメンバーが、今夜この街に現れやす」

ほう……ならば、会ってみるのも一興か……

「それで、コンタクトは取れるのか?」

私が問うと、答えに詰まる。

「いや……それは……」

ダメじゃん……

「でも! 大丈夫でやす!」

何を根拠に……

「そのメンバーは、尾木間沙耶オキマ・サヤって女性でやす。

特徴も聞いてきやした。旦那なら、きっと大丈夫でやす!」

おいおい……当たって砕けろってか……

何という安易な……

しかし、このまま当ても無く街を徘徊していても、無駄骨に終わる可能性は高い。

組織と言うのも相当に危ないような気がするが、この際仕方ないか……

だが、そんな人間が簡単に口を割るだろうか?

何かしら、ネタは仕込んで行かなければなるまい……

それがダメなら、後はどこまでハッタリが通用するか……

「では、行ってみようか。案内できるか?」

奴の表情が明るくなった。

「あっしに、任せてくださいやし!」


 一緒に歩き出して、一つ質問してみた。

「ところでお前、名前は何と言う?」

「え? まさか、知らなかったでやすか?」

「あぁ、聞いて無いしな……」

奴は、激しく悲しそうな顔をした。

「そう言うお前こそ、どうなんだよ……」

「あっしは……あ……」

「だろ? 勝手に、旦那とか呼びやがって……」

「面目ないでやす……」


 軽く自己紹介を終えると、散歩気分で私の宿に向かっている。

奴の名は、古茂野出安コモノデ・ヤス

チョイワルとヨウジョのクオーターだそうだ。

容姿の方は、悪餓鬼と言うのがシックリ来る小柄な奴である。

さっきから隣で色々と自慢気に話しているが、どれも大した話ではない。

話を総合すると、こそ泥と言う表現が一番適しているかもしれない……

まぁ、大きな犯罪に手を染めていないだけマシか……




 宿に戻った私は、冷たい視線を注がれていた。

「なんで、勝手にそういう事を決める訳?」

遥子は、私の独断が気に入らないらしい……

世の中、説得するだけ無駄な事もある。

「まぁ、早い話が他にネタが無かったのだよ」

「それが、嫌だって言ってるのよ!」

軽く受け流すのも、気に入らないらしい。

「では、聞こうじゃないか。君達は、他に何か有益な情報でも仕入れてきたのかね?」

その言葉に、プイッと目をそらす。

困った物だ……これでは、埒があきそうに無い。

「まぁ結論から言えば、安を見張りにつけて私一人で会う予定だよ」

皆が、驚いた顔で私を見た。

「何、勝手に危ない事しようとしてる訳?」

「いや、ぞろぞろ行ってもしょうがないだろ……まぁ、危なくなりそうなら逃げてくるさ」

それに、複雑な表情を浮かべた。

「で? そいつ、仲間にする訳?」

遥子の問いに、安の表情が明るくなる。

「いや、それは無理だ」

「何ででやすか~!」

「だから言ったろ? 安は普通に死ぬだろうから無理!」

「大丈夫でやす!」

いったい、何を根拠に……

「あっしは、逃げ足だけは自信があるんでやす。絶対に死にやせん!」

それも、困った物だが……

「損は、させやせん! どうか、お仲間に……」

恒例の、土下座が来た……

参ったな……

大きく溜め息をついてから話し始めた。

「付いてくるのは勝手だが……悪いが、戦闘メンバーとしては勘定できん。

下手に同行して足手纏いになって欲しくもない。

危険が伴いそうな場合は、別行動が絶対条件だ。

それに、その逃げ足を生かすとしても、敵陣の偵察程度しか頼めないぞ?」

「それで構いやせん! 嬉しいでやす! ありがとうでやす……」

安は、その場で号泣してしまった。

かなり、条件は悪い気がするのだが……

まあ忍者が一人出来たと思えば、そう悪くも無いだろう……















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