表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
219/359

第二百十九節 そうなのね~……その2

「出来ました!」

ビーチ・サンダルは、満面の笑みを浮かべて顔を上げる。

この辺りは、子供なんだな……

そして書きあがった物を見て、おもわず笑った。

これって、本当に図面並みの仕上がりだろう。

この位置感覚は大したものだ。

まず建物全体を示す線が書かれていて、その中に詳しく通路が書かれている。

行った事の無いであろう場所は、さすがに何も書かれておらず空白になっているが

一階から地下までの道筋は見事に書き記されている。

これなら、まず迷う事は無い。

ストレートに救出が出来るだろう。


 しかしだ……

ここまでの地図があるならば、もしや……

私は、遥子に聞いてみた。

「なぁ? 瞬間移動ってさ、行った事が無い場所はダメなんだっけ?」

「基本的には、そうね。だけどあの人の説明だと、行った事があるってよりも解っている場所って感じだったわ。山とかの高い場所にあるのを知らないで移動したら、生き埋めになっちゃうみたいな事を言ってたし」

なるほど。

「だとすると、この図を元に、瞬間移動が出来るって事か?」

私が地図を指差すと、それを見ながら少し考えて続けた。

「う~ん、そうね~。やった事無いけど、これだけ詳しく書かれていれば出来るとは思う。でも、まだ一回も使ったこと無いし確実とは言えないわ。せめて、建物の外見だけは見ておきたい所よね~。それと、もしやるならどこかで一度は実験しておきたいし」

確かに……

「ならば、まずは実験してみるか。そうだな……まずは、どこがイイかな……」

私が悩んでいると、ふと遥子が言った。

「勇太が行って来たって所は?」

ほう……それは良いな。

「なるほど。では、今地図を書くよ」


 地図を書きながら、私は考えを巡らす。

良く女性は地図を3Dに置き換えるような空間認識は苦手だと言われているが、

私が知る限り遥子はそんな感じに思えない。

少しだけゲームをプレイしている所を見た事があるが、横に出ている小さな地図を目安に

何も迷うこと無くイベントを進めていた。

まぁ見慣れているという事もあるので、ここは極力ゲームに近い書き方をした方が

良いかもしれないな。


 部位鉢猿人教団ブイハチエンジン・キョウダンまでの地図と、

建物の構造図をかなり詳しく書き上げて遥子に見せる。

だが、雰囲気だけはRPGゲームのノリだ。

その時、遥子が地図を覗き込んで呆れたような笑みを浮かべた。

「あのね~、ゲームじゃないんだからさ~……まぁ、見易いけど……」

そんな遥子に、私も笑みを浮かべて続ける。

「こんな感じになってるんだ。行き先は地下のココ。どうだ?」

私が指差すと、真剣な表情で地図を見て何度か頷いた。

「うん、解った。やってみましょう」


 私と遥子が、皆から少し離れて立つ。

「それじゃ、行くわよ」

それに頷くと、遥子は静かに呪文を唱え始めた。

おや、これは恒例の踊りが無いのか……

やがて遥子から光が溢れてくると、何かスピーカーがハウリングを起したような

高周波音が聞こえてくる。

そして、その光が溢れるように一気にキャビン全体へ広がった。

その光が収まると、辺りは暗い……

それに目を慣らしていると、前の方から声が聞こえてきた。

「これで大丈夫かの?」

「はい、コレだけ丈夫に鍵を付けたのです。もう誰も入れません」

おぉ、あの声は半熟王と金さんじゃないか。

半熟王は続けた。

「誰も入れないとなると、ワシ等の食事はどうなるのじゃ?」

そこでメシの心配かよ……

呆れる私とは違って、金さんは真面目に答えた。

「ご心配には及びません。合言葉を決めてあります故、その時だけ鍵を空けます」

「うむ、それなら安心じゃな」

ようやく目が慣れて来た頃に、鍵に納得した三人がこちらに来た。

私達に気が付いた半熟王達が、目を丸くして固まった。

「あの……どうなされました? それと、そちらの方は?」

半熟王の問いに、私は素直に答える。

「すまないね、ちょっとした実験だ。驚かせてしまって申し訳ない。彼女は、一緒に旅をしている笈掛遥子オイカケ・ヨウコだ」

遥子が頭を下げると、それを制止するように手を出して続けた。

「いえいえ、貴方でしたら問題はありませんが……ってアレ? 金さんや、鍵は閉めたと言っておらなかったか?」

「はい、シッカリと閉まっております」

「では、何故にこの方達が中におるのだ?」

「さぁ……」

首を傾げる金さんと銀さんと目を合わせてから、何か考えるように揃って宙を見た。

「え~と……鍵は閉まっていて? 中に居る……え~! 何で~!」

三人は、扉の方と私達を交互に見て口をパクパクさせている。

「金さん、銀さん……ワシは何か幻覚を見ておるのか?」

「いえ……我等にも見えます故、たぶん現実かと……」

まぁ、理解は出来ないだろうな~……

だが、仕方が無い。

「鍵を付けた事は良いと思う。私達は、すぐにおいとまするよ。まぁ、いきなりココに現れたのは、作戦の一環だ。気にしないでくれ」

「はぁ……そう言われるのでしたら……って、え~!」

驚く半熟王はそのままにして、遥子を見る。

「ひとまずは成功のようだな。じゃ行くか」

「そうね。えっと……皆さん、おじゃましました~」

遥子が明るく笑顔を振り撒くと、それまでの混乱がピタっと止まる。

「あ……いえ……」

三人は顔を赤らめて緊張している様子なので、このまま放置だな……

そして私達は、また真っ白い光に包まれて行った。












評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ