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第二百十八節 そうなのね~……

 船が見えてくると、採光さんと昏衣斗さんが笑顔で手を振っている。

あの雰囲気なら、問題は起きていないようだな。

渡し板を上がって行くと、昏衣斗さんが聞いてくる。

「大丈夫だったみたいですね」

「えぇ、二人が来てくれたので問題なく済みました。それで、こちらも何か問題があるとか聞きましたが」

「そうなんですよ~。今、中で話を聞いていますが皆さん待っておられます。どうぞ」


 私達が入って行くと、遥子達が気が付いた。

「あっ、戻ってきたわね。この子から色々と聞いてたんだけど……まぁ、とりあえず座って」

それに頷いて椅子に腰掛けると、遥子は大きく息を付いて話し始めた。

「なんかね……この子、海賊の所に居たんだって」

「ん? 海賊に捕まっていたのか?」

「いや、それがそうじゃないのよ……」

何やら困ったような表情を浮かべている。

「違うって事は、つまりアレか? 海賊の子?」

その問いに遥子は首を傾げた。

あれ? どう言う事?


 何とも言えない表情で話を始めた遥子によると、

その子は海賊達に育てられていると言う。

どうやら他にも沢山居るらしく、どの子供も両親を亡くした恵まれない子供だそうだ。

世界中を回って海賊行為をしている間に、そう言った子供を見つけては連れてきて育てているらしい。

それって、どうなのよ……


 そして、子供達が育てられていた施設のような所に突然に海軍がやってきて

そこに居た子供達が捕らえられたのだそうだ。

この子は隙を見て逃げ出したそうだが、まだ捕まっている友達が心配だと言う。

何とかして助けたいと主張しているそうだ。

なんだか、どっちが悪いのかサッパリ判らなくなってきた。

海賊だからと言って、素直に怒れなくなってきてしまったな~……


 私も、おもわず大きく溜め息をついてしまう。

しばらく間を置いて、遥子が話を続けた。

「まぁ、大雑把にはそんな感じなんだけど、勇太は何か聞く事ある?」

遥子の話で大体の流れは理解できたが、肝心な事を聞いていない。

「で、その子の名前は?」

「あっ、まだ言ってなかったっけ? この子は名前はビーチ・サンダルよ」

「ん? サンダルだって?」

その名前が引っかかった私に、遥子が不思議そうに聞いてきた。

「ん? どうしたの?」

私は遥子に視線を送る。

「いや……今、ビーチサンダルって言ったよな?」

「うん、そうだけど……」

「あのさ、アレモの名前ってさ……」

その時、遥子は思いだした様に手を叩く。

「あっ! 確か、アレモサンダルだったわよね?」

「あぁ、そうだ。何か気にならないか?」

静かにビーチ・サンダルへと視線を向ける。

「言葉は解るかい?」

「はい、先ほどコレをお借りしましたので大丈夫です」

その手には訳避け自動がある。

私は1つ頷いてから、おもむろに指を立てる。

「もしや君のフルネームは、ビーチサンダル・サノバビッチでは無いか?」

その質問に目を丸くした。

「何故……ご存知なのですか? それは、誰にも言って無い事ですが……」

やはり、そうか……

「いや、ちょっと事情通でね。別にそれを知ったからと言ってどうこうするつもりは無い」

私は、ふと遥子と目を合わせてお互いに大きく溜め息をついた。


 どうやら、この子はアレモの弟と見て間違い無い。

そして、何か訳があってここに居ると見るのが妥当だろう。

大方、王家特有のしょうもない風習が原因だと思う。

まぁ内密に処理される時に、誰かがそれでは忍びないと何処かへ預けられたか……

だが、話を下手に引っ掻き回すのは良くない。

もしアレモに伝えれば、アイツの事だ……激しく大騒ぎするに決まっている。

ここは、ピー辺りに話を通しておくのが良さそうだな。



 まぁ、その話は置いておいてひとまず子供達の救出が先決だろう。

私は、またビーチ・サンダルに聞いてみた。

「友達が捕らえられている場所は、解るのかい?」

「はい、大体は覚えてます。牢屋のようになっている所でした」

ほう、なるほど。

「そこには、他に大人が沢山居なかったか?」

「いえ、私達と見張りの兵士だけでした」

そうか……となると、王族達は別の所に捕らえられていると……

「では、その場所を詳しく教えて欲しいのだがイイか?」

「はい。では、何か書くものを貸して頂けませんでしょうか?」


 加瀬朗さんに貸してもらった筆記用具で、ビーチサンダルは見取り図を書いている。

その様子を伺っていると、とても年齢に見合わないシッカリした図を書いていた。

さすが王族の血を引いているだけの事はあるか……












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