表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
214/359

第二百十四節 安の過去……

 昏衣斗さんが納得してくれて良かったでやす。

まだ安心は出来やせんが、あと少しで船に着きやすし奴等も居ないみたいでやす。

もう大丈夫でやしょう。


 必死に逃げている子供なんて居たら、黙って見てなんか居られないでやす。

あの頃の、あっしがそうでやした。

今も、あの怒鳴り声は耳に残ってやす。

逃げて逃げて、ひたすら逃げて……

そんな日々でやした。



 あっしは、孤児って言葉が嫌いでやす。

もちろん犯罪だって、大嫌いでやすよ。

それで両親は殺されたんでやすから……


 両親が強盗に殺されてからは、楽園ラクエンって所で育ちやした。

ようは孤児院でやすね。

小さな所でしたが、なかなか良い所でやしたよ。

そこの園長は、凄く良い人でやした。

でも……人が良過ぎるってのも大問題でやす。

莫大な借金を背負って、楽園は閉鎖になっちゃいやした。

そして、園長はそのまま失踪。

残った職員は何とかしようと色々動いてくれやしたが、どうにもなりやせんでした。

最終的には、その職員達も居なくなりやした。

そりゃそうでやす。いつまでもあっし達と居れば、それこそ共倒れでやすからね。

皆だって、まずは自分が大切なんでやす。

しばらくすると柄の悪い連中が一杯やって来て、あっし達はその家を追い出されやした。皆で歯向かいやしたが、結局は怪我をしただけ……どうする事も出来やせんでした。

結局、奇麗事だけじゃ生きて行く事なんて出来ないんでやすよ。



 大きな橋の下に廃材で囲いを作って、そこを家にしやした。

だけど、腹は減りやす。

あっしは盗んででも食べるべきだと提案しやしたが、無駄でやした。

「園長は、そんな事を望んでいない!」なんてカッコ良い事を言ってやしたが、

結局は当の本人だって逃げちゃったじゃないでやすか。

何を認めたく無いのか知りやせんが、真面目過ぎるってのも大問題でやす。

どうにかして働くと言ってあちこち行ってた奴も居やしたが、

子供を使ってくれる所なんてそうそうありやせん。

手も足も出ないとは、あの事でやすよ。


 やがて、一人二人と動かなくなっていきやした。

そう言うあっしも、動く気力なんてありやせん。

そして二人目が息を引き取った時に、あっしは決意しやした。

もう、皆が何と言おうと関係ない。奪ってでも生きてやるんだって……


 それからは、大変でやした。

二人居なくなったと言っても、まだ七人。

逃げて逃げて、ひたすらに逃げて……



 やがて皆は、それぞれの道へ進んで行きやした。

今頃、どうしてるんでやしょうね~?

まぁ皆して学なんて無いでやすからね、そんなに凄い所には入り込めないにしても

せめて幸せに暮らしていて欲しいでやす。


 あっ、一人はどうしてるか良く知ってやすよ。

あの時、一緒に居たのがホワイティでやす。

本人は探偵だなんて言ってやすが、やってる事はチンピラでやすからね~……

まったく、何をイキがってるんだか……

いつまで経っても、困った奴でやすよ。



 でも……今思えば、全てが悪い事じゃなかったのかもしれないって思いやす。

だって、そのお陰でこうして旦那と巡り会えたんでやすから。

だけど、あっしは過去に感謝なんて絶対に出来やせん。

そんなに、人間できて無いでやすよ……












評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ