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第二百十三節 船乗りの視線 昏衣斗さんの場合

 今、荷物を持つのを安さんと伊代さんに手伝ってもらって船に戻ってるんだ。

なんか買い物してたら、いつの間にか予想以上の量になっちゃったんだよね。

二人に手伝ってもらって凄く助かってる。

「だけど勇太さん、一人で大丈夫かな~?」

何気に呟くと、安さんが明るく答えた。

「何も心配ありやせん。旦那なら、大丈夫でやすよ。船に荷物を置いたらあっし達もすぐに戻りやすしね」

それに伊代さんが続けるように言う。

「そうだな……勇太さんの腕なら、大抵の事は一人で十分に切り抜けられるだろう」

オイラは少し驚いた。

「え? 勇太さんって、そんなに強いの?」

それに二人揃って頷くと、安さんが続けた。

「そりゃもう、強いのなんのって。だって、あの津世伊蔵ツヨ・イゾウを瞬殺でやすよ?」

「え? それって最強戦で有名なアレ?」

「えぇ、アレでやす」

へぇ……そりゃ凄い。

確かに奴が死んだって噂は聞いたけど、その相手って勇太さんだったんだ~……


 安さんの話に関心しながら歩いていると、前の方が妙に騒がしい。

ん? なんだろう?

ちょっと気になるけど、変なイザコザには巻き込まれたくないしな~。

その時、前から誰かが走ってきた。

何? 子供?

必死に走ってくるその子供は凄く綺麗な金色の髪だけど妙に短い。

顔も凄く整っているけど、男なのか女なのか凄く微妙……

そして、後ろからは物凄い怒号が響いてくる。

「逃がすな! 追え~!」

「待て~! 待たんか~!」

何? いったい、何なの?

その子供がオイラの横を通り過ぎようとした時、安さんが声を掛けた。

「こっちでやす!」

ふと見ると、家の横に積んであった木材の陰へと誘導している。

子供は一瞬戸惑ったようだが、安さんの誘導に従ってそこに隠れた。

え~と……この状況で、何でかくまっちゃうかな~……かなり、ヤバクない?

しばらくすると、行き交う人々を強引に掻き分けながら海軍の連中が走ってきた。

「いったい、どこへ行った! おい! 貴様等、子供を見なかったか!」

いきなり横柄に怒鳴りつけて来たので、つい腹が立つ。

だが偉そうな海軍の視線は、違う方向を見ているようだ。

その視線を辿るように追いかけていくと、安さんと伊代さんが何故か腰に手を当てて

揃ってあらぬ方向をビッと指差していた。

その先を見つめる表情は、何やら凄まじい自信が満ち溢れていて

有無を言わさぬ大迫力である。

何ゆえに、そのポーズ?

海軍の連中は指差した方向に視線を送ると、また大きな声を上げた。

「向こうだ! 逃がすな~!」

景気よく奴等が走って行くのを見届けてから、安さんに囁いた。

「こんな事しちゃって、どうするんです?」

すると安さんは頭を掻きながら、満面の笑顔を浮かべて答える。

「いや~……つい、反応しちゃいやした」

しちゃいやしたって……

ふと積んであった木材の方を見ると、子供がヒョコっと顔を出している。

「もう大丈夫でやすよ」

安さんが言うと、子供は辺りの様子を慎重に伺いながら出てきた。

「アノ……アリ、ガトウ……コトバ……アマリシラナイ」

ちょっと! どこの子供だよ!

原住民が使う言葉なんて聞いても解らないだろうしな~、どうしよう……

オイラが困っていると、安さんは笑顔で言った。

「大丈夫でやす、普通に話してみてくださいやし」

え~! そいつぁ、さすがに無理でしょ~!

驚いて見ていると、子供は奇怪な呪文のような言葉を話し始めた。

きっと、この土地特有の言葉なんだと思う。

そんなの、誰も解らないでしょ~?

だけど何故か安さんと伊代さんは、それを頷きながら聞いている。

何? 本当に解ってるの?

その様子をしばらく伺ってから聞いてみた。

「あの……どうなってるの?」

すると安さんは、ふとオイラを見て真剣な表情で言った。

「この子はビーチ・サンダルって名前だそうでやす。さっきの奴等に捕まってココに連れて来られたそうでやすが、隙を見て逃げ出して来たって言ってやす。だけど、まだ友達が捕まってるみたいで助けに行かなきゃって言うんでやすよ。このまま一人で行かせる訳にはいかないので、一度船に連れて行ってイイでやすか?」

「え? ちょっと待って?」

何? 今あの謎の言葉を理解したんだよね? そんで何だって?

おもわず指を立てて続けた。

「え~っと……それはつまり、その子をかくまえって事かな?」

「そうなりやす……ダメでやすか?」

「私からもお願いします」

二人で頭を下げられてしまった。

「こりゃ参ったね~……だけど、もう乗りかかった船だ。また見つかっちゃう前に、早く船に戻ろう!」

オイラ達は、周囲を警戒しつつ足早に船へと向かった。













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