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第二百八節 彼女からの視線 遥子の場合、その6

 まったく……どうせ今頃、ベッドの上で悩んでいるに違いないのよ!

何で、あんなに悩むのかしらね~?

ゲームじゃないんだから、いくら考えたって全てその通りになんて行きっこないのよ。

現実に、シナリオなんて無いわ!

その辺り、本当に判ってるのかしら?


 でもね~……

あたし達の事を心配してくれているのは、凄く良く解るの。

それは、きっとあの事が関係してるって言うのも……良く解る……


 あれは、もう5年も前の話……

ほとんど勇太とは同じクラスだったから、彼はあたしの同級生でもあったわ。

あたしも勇太も何とかしようとしてたんだけど、あの陰湿なイジメは止まらなかった。

それで結局……

まさか大型トラックに、自分から飛び込むなんて……



 勇太は、何も悪くないわ。ずっと彼の事を気にかけてたのは勇太くらいよ。

確かに二人は仲が良かったけど、それ以前は他にも友達は居た。

かえって他の人達の方が、仲が良かったように見えたわ。

だけどイザとなったら報復を恐れて完全に傍観者を気取っているなんて、

そんなの友達でも何でも無いわよね。


 結局の所、警察は単なる事故死で済ませたわ。

学校側の発表も酷かった。

イジメは無かったなんて、よくも白々しく言えるわよね。

先生って言う人種には、心の底から絶望したわ。

彼の両親は色々と動いていたらしいけど、あれだけ隠蔽されてしまえば

証拠なんて出てくる訳が無いのよ。

あたし達がお線香をあげに行った時、全てを諦めたような悲しい目をしてた……

とても、忘れる事なんて出来ないわ。


 それで勇太が独自に調べ始めたんだけど、あの時の勇太は本当に怖かった。

アイツ等の取り巻きから、かなり強引に情報を引き出してたわ。

だけど、それだけ怒るのも無理はない。

その気持ちは、あたしも痛いほど解るわ。

だって、もう彼とは二度と会えないんだもの……

きっと勇太は、命の重さを良く知っている。

だからこそ、あんなにしてまで悩んでいるの。

それは、良く解っているつもり……


 だけど、あれを境に勇太は変わっちゃった。

もっと自分を上手く表現できる人だったのに……


 あの時あたしが駆けつけた時は、すでに全てが終わっていたわ。

悪魔のような冷たい目で一人立ち尽くしていた姿は、今も目に焼きついてる……


 せっかくイイ線まで行って最年少で段が取れそうだって言われていた剣術道場も、

あれのせいで破門にされちゃったのよね。

それからは、もうゲームばっかりで……

まるで何かに取り憑かれた様に、画面に向かってたわ。

でもね……全然、楽しそうじゃ無いの……



 あ~! 今考えても、本当に頭に来るわ!

勇太だったから、アイツ等死なずに済んだのよ!

大体イジメていた事がバレタからって、ナイフ持って集団で襲い掛かってくるなんて

アイツ等絶対に頭オカシイわよ!

他の人だったら、絶対に誰か死んでたわ。

生きてる事に、感謝して欲しいくらいよね!



「あの、どうしました?」

ん?

声のした方に視線を向けると、翔子があたしに問いかけていた。

皆も心配そうに見ている。

「あぁ……ごめんね。何でもないわ。ずいぶん前の話を思いだしただけ」

「それなら良いんですけど……」

「うん、大丈夫よ」

あたしは笑みを浮かべて、皆に頷いた。



 でもね、これだけは言えるわ。

何故かこんな良く判らない世界に来ちゃって、あたしとしては大迷惑な話なんだけど

全てが悪い事だとは思ってないの。

何の因果か知らないけど、そのお陰で勇太の笑顔が見られるようになった。

少しづつだけど、以前の勇太に近づいて来ている事だけは確かよ。

それだけでも見っけもんだと思わなきゃ、馬鹿馬鹿しくてやってられないわよ!


 なんか重要な事を勝手に決めてきちゃったり、たまにアホすぎる作戦とか

平気でやるのは本当にやめて欲しいんだけど、こうなればもう意地よ!

魔王だか何だか知らないけど、とことん付き合ってやろうじゃないの!












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