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第百九十六節 魔法学校ね~……その4

 カンパチ先生が指差した枠には、中戸才洋チュウト・サイヨウと書いてある。

これは、また半端な名前だな……

日付を確認してみると、予約は今から一ヵ月半後になっている。

まだ時間はあるように思えるが、準備期間として考えるならば余裕は無いと見るべきだ。


 とりあえず聞いてみた。

「この、中戸才洋チュウト・サイヨウと言う者の特徴は覚えていますか?」

「えぇ、身体はかなり大きく相当に鍛えていると思わせる太い腕でした。言葉遣いも荒く、目付きはかなり鋭い印象です。顔の大きさは貴方の倍近くあるのではないでしょうか?」

巨顔症ですか……

「何しろ、有無も言わせぬ凄い迫力でした。もし街中に居れば、一目で判るほどに目立つでしょう。それ等を一言で纏めるならば、柄が悪いと言う事になります」

なるほど……ある意味、厄介そうな相手だな。

私が納得していると、カンパチ先生は不安そうに聞いてきた。

「あの……それでこの予約の方は、どう扱えば宜しいでしょうか?」

「申し訳ありませんが、その予約はそのまま生かしておいて下さい。そして、当日はこの者達が教室を使う事になると思います」

それに驚いたカンパチ先生が言った。

「それでは、大問題に発展しかねません」

私は、それに頷いて答えた。

「当日ですが、カンパチ先生だけでこの予約を仕切る事は可能ですか?」

「えぇ……休みの日は、私だけで管理しておりますが……」

不思議そうな表情を浮かべるカンパチ先生に、私は続けた。

「それならば安心です。確かに大事になるかもしれませんが、幸いこの予約表によると当日は休校になっています。そして、ここの警備は素晴らしいほどに厳しい。つまり、この予約以外の者を全て排除しておけば何が起きても外部に漏れる恐れは無いと言う事です。当然ながら部活動など、生徒の出入りもこの日だけは禁止して下さい。一ヶ月もあれば、改修工事や塗装工事などの理由で難なく回避できるでしょう」

「確かにそうですが……いったい何をするおつもりなんです?」

「全ては、当日に判ります。決してご迷惑はお掛けしません。どうか私を信じては頂けないでしょうか?」

私の問いに、カンパチ先生は人差し指を立てて聞き返してきた。

「ですが、何か問題が起きたとして……それを、どう処理なさるおつもりですか?」

「例えば何かしらの事故が起きたとして、架空の工事業者が起した機器の操作ミスによる人的被害とすれば責任問題は簡単に回避できるでしょう。そして、王家としても今は問題を起したくない大事な時期。この提案に必ず乗ってきます」

カンパチ先生はしばらく考えてから、ふと笑みを浮かべた。

「いや~、貴方は本当に面白い方だ。私も何が起きるのか楽しみになってきました。解りました、良いでしょう。貴方を信じます」



 私達は、カンパチ先生に深く頭を下げた。

「これから慎重に準備を進めますが、かなり時間が掛かる事はご了承下さい。全て済み次第、またお伺いさせて頂きます。宜しくお願い致します」

「解りました~。では、お待ちしております」

そしてカンパチ先生の笑顔に送られて、私達は職員室を後にした。


 学校の門までくると、騎士が声を掛けてきた。

「あっ、終わりましたか?」

私は、笑顔で答えた。

「えぇ、無事に済みました。ところで、エラクナさんは今日どちらに?」

「あぁ……多分、今日は城に居るはずですよ?」

「ありがとうございます、行ってみます」

騎士達と軽く挨拶を交わして、私達は城を目指した。












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