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第百八十一節 何だろうね~?

 城の正面に近づいて行くと、警備兵が私達に近づきながら威嚇してきた。

「貴様等、何者だ! 身分を証明しないとタダでは……」

私がアレモから貰った木札を出した瞬間に、警備兵の顔色が一気に青ざめた。

それを見せながら歩み寄って行くと、皆が平伏すように頭を下げている。

さすが、効力あるな……

私に怒鳴りつけてきた警備兵は更に縮こまっているようで、

すでに冷や汗だか脂汗だか判らないくらいに顔がビチャビチャになっている。

私は、その兵士に声を掛けた。

「仕事ですから、仕方がありません。どうか頭を上げてください」

その言葉に続くように、その兵士は崩れるようにその場にしゃがみ込んだ。

「あ……ありがとうございます……」

かなり放心した様子の兵士に、笑みを浮かべながら続けた。

「では、通ります。宜しいですね?」

それに目を丸くしたまま、ユックリと兵士は頷いた。



 城に入って行くと、城内警備に付いていた騎士が声を掛けてきた。

「おや、今日はどうなされました?」

どうやら覚えていてくれたようだ。

とりあえずお辞儀をしてから聞いてみる。

「アレモ王子に会いに来ました。どちらに行けば宜しいでしょう?」

「あ……それでしたら、あの奥に見える部屋に先ほどナッツさんが入って行きました。まだ居るはずです」

「ありがとうございます」

またお辞儀をして、奥の部屋に向かって歩き出した。


 部屋の前で扉を開けようとすると、勝手に開いた。

「何だ?」

私が声を上げた時には、もうその顔が目の前にあった。

「あ……これは、どうも……」

おもわぬタイミングで、ナッツと鉢合わせしてしまった。

とりあえず、一歩下がってから言った。

「アレモに会いに来たんだけど、忙しいかな?」

「いえ、今か今かとお待ちになっております。只今ご案内致します」

そう言ってナッツは、右へ続く廊下を歩いて行った。



 ナッツに誘導されて立派な扉の前に来ると、騎士が5人警備に付いている。

私達に気付いて、一斉に顔に被った面を上げて笑みを見せた。

「御無事で何よりです。王子がお待ちです。ささ、どうぞ」

綺麗に開いた道を、私達は恐縮しながら通って行った。

「勇太様が、お見えです」

ナッツがノックしながら言うと、何やら中でドタバタと音がして扉が勢いよく開いた。

「お待ちしておりました! さ、どうぞ中へ!」

そう言った、アレモの息が荒い。

いったい、何を興奮しているんだろうか?


 とりあえず部屋に入って行くと大きめのベッドと立派な本棚が目に付くが、

本当にアレモの部屋だろうか?

周りを見渡しても剣が掛けてあったり甲冑が置いてあったりして、

どこを見ても子供らしく思える物が全く見当たらないのだ。

その時、アレモが思いだしたように言った。

「あ……入って頂いて申し訳ありませんが、座って頂く椅子がありませんね……」

「いや、このままで構わないさ。それより、どうしたんだい?」

私の言葉に、アレモは真剣な表情で頷いた。

「はい。もう噂が流れていると思いますが、海賊が出まして……」

「あぁ、それは聞いた。商船が軒並み襲われたんだろ?」

「そうなんです。そのお陰で、すごく困った事になりつつあります」

「と言うと?」

おもわず首を傾げると、アレモは大きく溜め息をついて困った表情で続けた。

「今回、騎士団長との公式会談で戒厳令を無事に解く事が出来ました。ですが、この海賊騒ぎで王家に批判が集まりつつあるのです」

それに私は、眉を顰めながら言った。

「まさか、戒厳令を解かなければ被害は出なかったとか言っているのか?」

アレモは首を振る。

「いえ……今は、まだ直接的ではありません。ですが、いずれはそう言った風評となって広がって行く事でしょう。そうなってしまえば、もう……」

力なく俯くアレモに、私も大きく息を吐いて続けた。

「奴等の、思う壺と言う事か……」

「はい……」


「それで、王は何と言ってるんだ?」

私の問いに、アレモは難しい表情で答えた。

「かなり悩んでおります。現状では、王家が海軍を動かす権限はありません。海賊を退治したくても、手段が無いと言いますか……」

なるほどね……

「それで……僕がお願いできるのは、貴方達しか居ないんです。今回は、正式にご依頼したいと思っております。もし宜しければ、父と謁見して頂けないでしょうか?」

正式ね~……まぁ、そう言う流れだよな~。

「では、王に会いに行こうか」

アレモが頷くのを確認して、皆で部屋を後にした。












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