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第百七十九節 まったく、危ないね~……

 曲がりくねった山道を越えて国境が見えてくると、

警備の騎士達が私達に気が付いて手を振っている。


 門まで来ると、若い騎士が喜び勇んで私に言った。

「先発隊から聞きました! 大活躍でしたね!」

誰だよ、ペラペラ話してるのは……

念の為に聞いてみる。

「誰か、話してました?」

「いえ、自分が聞き出したのです」

満面の笑みで答える若い騎士を横目に、呆れた表情を浮かべながら年配騎士が言った。

「本当に困った奴です。『勇者様は、どうした! 言わなければ、ここを通す訳には行かない!』などと叫びながら剣を引き抜いてしまったもので、もう先発隊と一触即発の状態でしたよ」

おいおい、仲間割れしてどうするよ……

「隊長と私は長い付き合いなので何とか理解して貰って大事には至りませんでしたが、寿命が縮まりましたよ。その後に隊長にもガツンとやられていましたが、まったく懲りてないと言うか……」

年配騎士が冷たい視線を送ると、若い騎士はシュンとしたように頭を下げた。

「それにしても、さすがは勇者様ですな。お見事です」

私は、その言葉に首を振る。

「いえいえ、チハラの方々の協力が無ければ無理でしたよ」

それに、年配騎士は納得したように頷いていた。


 だが、二人しか居ないのは不自然だ。

どうしたのだろうか?

「ところで、まだ何人か居たはずですが?」

私の問いに、年配騎士が答えた。

「彼等は、夜の警備の為に現在就寝中です。警戒中は通しで頑張っていた者もいるので、たまたま今日は二人で警備なんですよ。少数で回しているので、後からツケが回ってきます。なかなか人員の配分も大変ですよ」

なるほど、そういう事ね。

それに納得して、また声を掛けた。

「では、また水飲み場を使わせてください」

「あぁ、どうぞ。ご自由に使ってください」

年配騎士は、そこに手を差し出しながら笑みを浮かべていた。



 馬に水を飲ませながら、今までの装備を外して軽装に変更した。

ここから私達は、また『今野商店』だ。

準備を終えて馬車を走らせると、向こうから若い騎士が走ってきた。

「もう、行ってしまわれるんですか!」

残念そうな表情を浮かべているので、それに答えた。

「まだ、問題は山積みなんだ。ユックリして行きたいが、そう言う訳にもいかなくてね」

それに強く頷くと、何かを吹っ切ったような爽やかな笑みを見せた。

「そうですか、わかりました。ずっと応援してます! どうかお気をつけて!」

後ろから歩いてきた年配騎士も声を掛けてくる。

「それでは、旅のご無事をお祈りしております」

私は笑みを浮かべて言った。

「はい。皆様もお気をつけて」


 そして年配騎士の優しい笑みと、力強く手を振る若い騎士に見送られながら

パンツェッタを目指して私は手綱をあおった。












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