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第百六十二節 さて、行ってみますかね~……その3

 これまでの事をひとしきり説明すると、松太香子マツタ・カコは言った。

「そうすると、この大陸の魔物を一掃してから魔の大陸に向かうのね?」

私が頷くと、松太香子は続ける。

「これまで貴方が掴んだ情報は、確かだと思って間違いないわ。そして実際に魔王がどう言う者か、私達守護神の力を持ってしても何も見えて来ないのも事実。そして貴方を呼んだ肝心の神も、ずっと黙ったままなの。私達が呼びかけても、一切反応が無いわ。こんな事は、今までに無かった事よ。その原因を調べる為に私なりに動いているんだけど、まだ答えは見つかっていないの。本当に、腑甲斐ないわよね……」

そう言いながら、松太香子は暗い表情を落とす。

しばらく間を置いて、また私を真っ直ぐに見た。

「でも魔王の影は、間違い無く感じるの。それが何故なのか判らないから、ネコミミやラタクもハッキリ言わなかったのね。つまり、これまで現れた邪悪な者とは明らかに違う異質な者である事は確かよ。最悪の場合は、何も対策が出来ないまま魔王に立ち向かう事にもなりかねないわ。魔の大陸に行くときは、常に心の準備だけはしておかなければ危険よ」

う~ん……こりゃ参ったね。

全く、先が読めない状況に陥ってしまったって事か。

私が腕を組んで少し唸るように頷くと、松太香子は僅かな笑みを見せた。

「でもね、ビリーが言うように貴方達からは本当に神の加護を感じるの。時が来れば、必ず導いてくれるはずよ。そんなに心配する事は無いわ」

まぁ、そう言われたら仕方ない。

私は諦めたように頷いた。



「もう1つ聞きたいんですが、宜しいですか?」

人差し指を立てた私に、素直に頷いたので聞いてみる。

「蘇生が可能な魔法があると聞いておりまして、それには桃が必要だと聞いたのですがご存知ですか?」

「あぁ……サイオウボのバントウサンね」

再応募の番頭さん?

「それは、誰ですか?」

おもわず問うと、不思議そうに首を傾げて答えた。

「バントウサンは、山よ?」

なるほど……山なのね。

「このチハラから西へ向かうと、オバ傘下のサイオウボと言う小さな国があるわ。その北西に位置するバントウサンの山頂付近に、金色に光る桃の木があるの。その実に蘇生の力が宿っているわ。でも、実がなるのは10年に1つと言われているの。よほど運が良くなければ、手に入れる事なんて無理だと思うけど?」

そうなんだ……かなり厳しそうだな。

「とりあえず、行くだけ行ってみます」



 その時、遥子が声を上げた。

「あの、私も聞きたいんですけど」

「何かしら?」

首を傾げる松太香子に、遥子は戸惑いながら話を続けた。

「あの……なんて言うのかしら。違う所に、パッと移動できる魔法とかありませんか?」

「ん? 瞬間移動でもしたいの?」

遥子は素直に頷きながら答えた。

「そう言うのあったら、便利かな~? と思いまして」

「なるほどね……確かに、聞いた事はあるわ。でもね、その魔法は重大な欠陥があって使わなくなったわよ?」

「え? 欠陥ですか?」

驚く遥子に、松太香子は続ける。

「えぇ。聞いた所によると、たまに異空間に閉じ込められる事があるらしいのよ。それで、何時しか廃れて行ったそうよ」

それに遥子は、え? と言う表情を浮かべた。

「もしかして、二度と出て来れないって事ですよね?」

「そうね……異空間へ閉じ込めたれたら、永久に時の狭間を彷徨う事になるわね」

その答えに、遥子はガックリと肩を落とした。

しかし、松太香子は視線を外して呟くように話を続ける。

「でも、まだ研究を続けているって守護神が居たわね~。あれは、誰だったかしら……」

一度髪をかき上げてから、こめかみに辺りに手を添えて考え込んでいる。

そして、はっ! としたように人差し指を立てながら私達を見た。

「あ、そうそう! アイツよ! 綿理間将ワタリマ・ショウよ! ずいぶん前の話だったから、すっかり忘れてたわ」

それに、蓮が驚いた。

「え? それって、あの旅の商人の方ですよね?!」

「あら、もう会ってるのね? 確かにアイツは、普段は旅の商人として動いているわ。もしかして、変な物とか売りつけられたんじゃない?」

「えぇ、色々な物を売りつけられました。これとか……」

蓮は鞄の中からハッカマンを出して見せると、松太香子は少し驚いたように答えた。

「あら、それなら私も見た事があるわ。なんか懐かしいわね、ちょっと見せてくれる?」

ハッカマンを手渡すと、松太香子は懐かしそうに見ている。

「これは珍しく使えそうな物だったから、良く覚えているのよ。アイツは研究熱心だったけど、くだらない物も沢山作ってたからね……でも、その旅の商人は綿理間将に間違いないわ」

そう言いながら、ハッカマンを蓮に渡す。

「あの方が守護神だったなんて、全くわかりませんでした……」

蓮がそれを何とも言えない表情で受け取ると、松太香子は優しく笑みを見せながら言った。

「解らなくて当然よ。何しろ変な奴だから」

それに蓮は、苦笑いを浮かべていた。


 私は、ふと質問してみた。

「ところで、旅の商人でしたら居場所が特定できませんよね? どうやって見つけたら良いでしょうか?」

「あぁ……それなら丁度良い物があるわ。ちょっと待ってて」

スッと立ち上がると、横にあった戸棚を開けて何かを取り出している。

そして、何やら丸い物を手に取って私に差し出した。

「これで、彼の居所が解るわ」

私はその物を見てから、ふと松太香子を見た。

「それって、大事な物じゃ?」

その質問に、怪訝そうな表情を浮かべながら言った。

「何言ってるのよ……『僕の居場所は、これで解るから』とか言って、強引に渡されただけよ。別に、私はアイツに用事なんて無いわ!」

あらま、全く相手にされて無いのね。可哀想に……

「では、ありがたく頂きます」

丸い物を手渡されると、女性が使うコンパクトのような丸くて白いケースだ。

とりあえず開けてみると、鏡がある部分が液晶画面のようになっていて

下に小さなスイッチが並んでいる。

まるで、何かのゲーム機のようだ。

ボタンは10個ほどなので、感覚的に使えるレベルだろう。

しかし、ひとつ気になるボタンがある。

この赤いボタンは何だ?

それに触れようとした時に、松太香子が突然に怒鳴った。

「それ触っちゃダメ!」

私は慌てて手を離すと、大きく溜め息をつきながら言った。

「私も、今思いだしたわ。それを押すと、彼を呼び出す事が出来るらしいのよ」

なるほど……ここに、呼ばれては困るってか。

「わかりました。どこか違う所で呼び出してみます」

それに松太香子は、ホッとしたように頷いた。












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