第十五節 冒険者からの視線3 伊代の場合、その2
見覚えの無い場所……
白い天井が見える。周りを見てみるが、妙に殺風景な所だ。
これと言って特徴のある装飾も見当たらない。
ここは……どこ? いったい、どうなったの?
「あら、気が付いた? 良かった。この町に医者があって良かったわ。もし無かったら、どうしようかと思ったわよ」
声の方向に視線を向けると、誰かが椅子に座って優しそうに微笑んでいる。
それが、誰か判らないが危険な感じはしない。
私は聞いてみた。
「いったい、何が?」
「う~ん……説明が難しいんだけどね。簡単に言えば、魔物に襲われたって所かしら?」
そういえば私、麗佳と一緒に居て……
「麗佳は?!」
起き上がろうとした瞬間に、腹部に激しい痛みが走った。
「ダメよ! とにかく今は安静!」
あまりの痛みに、されるがまま横になることしか出来なかった。
「誰か、仲間は居るの?」
そうだ……あの子達は大丈夫だろうか?
「私の名前は音子和面伊代……魔の大陸を目指して冒険をしています……」
時折痛みに襲われ、声も途切れながらだが、その女性に仲間の特徴を話した。
「なるほどな……では、私が探しに行ってみよう」
突然反対で低い声が聞こえた。
その聞こえてきた声の主に、その女性は何故か冷たい表情を浮かべた。
「あら、戻ったのね。おかえりなさい」
「ほら、頼まれた物だ。全く、お使い係は勘弁して欲しい物だな」
荷物をその女性に渡しながら、その男性は優しそうな笑顔を浮かべた。
「じゃ、行ってくるよ。きっと向こうも探しているはずだ」
そう言うと、軽く手を上げて部屋を出来ていった。
「すぐに見つかるわよ」
彼女はまた優しく微笑みかけた。