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第百四十一節 護衛ね~……その3

 住宅地の中に続く上り坂を歩いて行くと、目の前の景色が開けた。

小さな広場から綺麗に整備された並木道が続いている。

その先に石橋のような橋が掛かっていて、それを渡った向こう側に城の入り口が見えた。

城の前まで来ると、警備兵が姿勢を正し敬礼を払っている。

アレモは、その警備兵に言った。

「ただいま帰りました、彼等は僕の友達です。このまま通って構いませんね?」

私は、アレモが一瞬発した気に驚いた。

こんな子供のクセに、それに逆らう事を許さない異様な威厳が満ち溢れている。

さすがは王族と言うべきだろうか?

このオーラは半端じゃない。

それに、おもわず感心してしまった。


 城の中に入って行くと、なかなか立派な装飾だ。

サイズ的にはデヴォンニャー邸の方が遥かに大きいのだが、

芸術性としてはこちらのが上かもしれない。

所々の窓に埋め込まれた、騎士の姿をモチーフにしたステンドグラスが見事だ。

壁にはいくつも絵画が飾ってあって、どれも素晴らしい出来だ。

天井を見れば、船をひっくり返したような複雑なデザインになっている。

窓はアーチの上を尖らせたようなデザインで、まるで教会の中にでも居るようだ。


 数々の芸術に見惚れながら歩いて行くと、1つの部屋に通された。

高そうな絵画が幾つか掛けてあって、ソファーやテーブルも相当に値が張りそうなのだが

割りと地味に纏められた部屋である。

雰囲気からすると待合室のようだ。

「そちらに、お掛けになってお待ち頂けますか?」

私達はアレモの言葉に頷く。

「では、私達は準備して参ります」

そう言うと三人は、部屋を出て行った。



 30分ほど待っていると、姉妹が戻って来た。

「お待たせしました」

私達は、その姿に驚いた。

二人はメイド姿になっている。

おもわず、聞いてみた。

「もしかして、普段からそんな格好してるの?」

二人は顔を赤くしながら言った。

「だったら何ですか! 文句でもおありですか?」

何やら怒っている二人に言った。

「いや、カワイイんじゃない?」

それに、更に顔を赤くしながら言った。

「か……からかわないで下さい!」

いや、そう言っている割にはメッチャ嬉しそうなんだが……


 ピーが、思いだした様に言った。

「あっ、これが明日のチケットになります。どうぞ」

人数分のチケットを渡された。

「いや、私達二人は王の側で騎士になりすますつもりだから二枚多いよ?」

私が問うと、ピーは笑顔で答えた。

「あぁ、別に構いません。どうぜ偽造ですから!」

おいおい……

「このチケット大丈夫なのか? もしバレたら困るんだが……」

おもわず聞いてみると、ピーは笑顔で答えた。

「あっ、それは大丈夫です。誰が見ても、偽造だなんて判りません」

それに私が首を傾げていると、ピーは続けた。

「お客様用のチケットは、全て私達が作っているんです。限りなく本物ですよ」

あぁ、そういう事ね。

私が感心していると、ピーは更に続けた。

「謁見の間で、アレモ様がお待ちです」

素直に頷くと、二人は私達を先導するように部屋を出た。



 謁見の間に入ると、王座の側に妙に派手な服を着たアレモが居た。

あれって、私が着た時に大爆笑された奴だよな……

おもわず遥子達を見ると、やはり皆も笑っていないようだ。

着る人が着ると、あんな奇怪な服でも様になるんだ……まったく不思議な物だ。

その時、アレモが私達に気付いた。

「あっ、お待ちしておりました。もうすぐ参りますので宜しいですね?」

私は素直に頷いた。

とりあえず、片膝を落として王を待つ。


 やがて王が入って来た。

横目に伺うと、白い髭を携えた年配のようだ。

直視出来ないので何とも言えないが、かなり立派そうな人に思える。

王が大きな椅子に座ると声を上げた。

「そなたが勇者殿だな。話は聞いている、おもてを上げてくれ」

かなり渋い雰囲気の声だ。

私は少し間を置いてから頭を上げた。

やはり白髪に白い髭だ。そして妙に目立つ青い瞳から

確かに親子である事を感じさせられる。

だが、何だろう? この、どこかで見たような感じは……

トランプのキングのような?

いや……これはまるで、どこかのウイスキーに書いてある絵が

そのまま出てきたような雰囲気だ。


 王は、大きく息を付くと話し始めた。

「息子が世話になったようだ。だが申し訳ないが、突然に勇者だと言われても素直に信じる訳には行かぬのだよ」

私は一度頷いてから答えた。

「はい、それは良く判ります。私達のような輩は、いくらでも居る事でしょう。ここで無理に信じて頂こうなどとは思っておりません」

王は、不思議そうな表情を浮かべて聞いてきた。

「では、そなたはどのように致すつもりなのだ?」

「私と、この隣にいる遥子を近くで護衛に付けて下さるだけで構いません。他の皆には観客席から護衛に当たってもらいます」

私の答えに、少し複雑そうな表情を浮かべながら答えた。

「確かに、護衛は多い方が良いが……本当に、それだけで良いのか?」

「はい、そのお許しさえ頂ければ私達は構いません」

それに、王は不敵な笑みを浮かべた。

「なるほどな……息子が信用するだけの事はありそうだ。では、よきに計らってくれ」

私達は、そのまま頭を下げた。












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