第十四節 冒険者からの視線2 伊代の場合
嫁いで行った、幼馴染の親友。
由宇麗佳と涙の別れをしたのは、もう5年も前の話だ。
今頃はあの子も、良い奥さんになっているはず。
麗佳との久しぶりの再会に、私の心は躍っていた。
待ち合わせの噴水の前で待っていると、麗佳がやってきた。
「久しぶりね、元気?」
相変わらず綺麗な顔立ちに抜群のスタイル、彼女が当時モテタのも素直に頷ける。
私達は軽い挨拶を済ませると、
「じゃ、行こうか」
麗佳が歩き始めた。
「あっ、待って。今日は仲間と来ているの。あまり時間が無いから、貴方のお家にお邪魔は出来ないわ」
「あら、そうなの……」
とても残念そうな顔を浮かべている。
「じゃ、その代わりに良い場所に案内するわ。景色が良いのよ、そこへ行きましょう」
私は大きく頷くと、麗佳に付いていった。
何か変……
さっきからどんどん森の奥へと歩いて行っている。
森と言っても、坂を上がっている感じも無い。少なくとも山では無さそうだ。
進むほどに木や草が増えて、森はドンドン深くなって行く。
こんな所に……景色が良い場所なんて……
「ねぇ、本当にこっちなの?」
何気に聞いてみたが、返事が無い。
どうしたのだろう?
もう一度声を掛けようとした時、麗佳が突然に振り向くと私に駆け寄って来た。
「え?」
何か変な衝撃があった気が……
何これ? お腹に何か刺さっている……
すでに私の足は激しく震え始めている、もう立っている事も出来ない。
おもわず、その場に座り込んだ。
「どうして? こんな……嘘でしょ?」
その時、何かが私の上を凄い勢いで通り過ぎた。
今のは何?
その物体を確認できないままいると、
しばらくして目の前で変化があった。
驚く事に、麗佳の首が静かに後ろへと転がり落ちてしまったのだ。
え? 彼女が、死んだ? そんな……
しかし、もう私は声を出す事も出来ない……
その光景を呆然と眺めていると、
頭が無くなった首から植物のような何かが勢い良く生えてきた。
嘘? 何? 何が起きているの?
それはあっという間に麗佳の体を包み込むと、そこにはまるで違う物が現れた。
大きな植物が奇声を上げて不気味に動いている。
その時、植物に真っ直ぐ光が走ったかと思うと、それは綺麗に二つに分かれて左右に倒れて行った。
あぁ、もうダメ……もう何が起きているのか良く判らない。
「大丈夫? 貴方しっかりしなさい! 意識をしっかり持って!」
その声で一瞬我に返ったが、また徐々に目の前が霞んでいく。
「大丈夫、傷は浅いわ!」
「良し! 刺さったナイフはそのままだ! すぐに運ぶぞ!」
身体が突然動いたようだが、もう良く判らない。
そのまま意識は遠くへ消えていった。




