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第十三節 彼女からの視線 遥子の場合

 石畳が敷かれた噴水の横を通り越してしばらく歩いていると、

裏路地から何かに慌てた少女が青い顔をして駆け寄ってくる。

「助けてください! お願いします!」

あら? こんな子供が、一体どうしたのかしら?

「何があったの? 助けが必要なの?」

その子が心配になって近づいて行くと、後から肩を掴まれた。

「ん? 何?」

何気に振り向くと、驚くほどに勇太は怖い顔をしていた。

「いいから、下がっていろ」

そう言うと勇太は前に立ち、普段は絶対に出さない低い声で言った。

「貴様の命を奪うつもりは無い。今のうちに大人しく消えろ」

え? 子供相手に、何を言っているの?

それも、こいつが思いっきり好みそうな美少女なのに……

言われた少女も、オドオドしている。

勇太は、大きく声を荒げて怒鳴りつけた。

「さっさと消えねぇと、叩き切るぞ!」

うわっ! これ、引くわ~……

ちょっと不味いんじゃないの?

それじゃ、泣いちゃうわよ?

ほら、震えているし……

だが、その予想は大いに外れて少女は笑い始めた。

え? 何それ?

その笑い声が、まるで変声装置でも使ったように徐々に低音へと変わっていく。

うそっ……

「バレちまっちゃ、しょうがねぇ! 無様に死ぬがイイ!」

突然に身体が黒く巨大化すると、まるで大トカゲのような姿に変化した。

それと同時に、一筋の閃光が走った。

「くそ……何故、解った……」

勇太はそれに答える事も無く、剣を収めながら背中を向けて歩き出す。

「行くぞ」

あたし達の後ろで大トカゲが綺麗に二つに分かれると、その場に崩れ落ちた。

「ねぇ? 何で人間じゃないって解ったの?」

勇太は、僅かに笑みを浮かべる。

「私の、少女を見る目を甘く見るな」

その答えに、何か複雑な気持ちを感じたのは確かだった……

「でも、どういう事なの? まさか、この街に魔物が紛れ込んでいる訳?」

それに、勇太は少し眉間にシワを寄せて言った。

「あぁ……残念だが、そのようだ。バレると厄介な事になりそうなので黙っていたが、すでに10人くらいは見かけたよ。あの姿で魔の大陸を目指しそうな冒険者達を巧みに誘っては、とっとと抹殺してしまおうって寸法だろう。臭いは元から断てってな」

あたしは、呆れながら呟いた。

「ずいぶんと、卑怯ね……」

そんな言葉に、勇太は首を振った。

「いや、そうとも言い切れないぞ? 敵を滅ぼすに卑怯もへったくれも無いのは真実。これは立派に兵法だ。だが、こう言った戦略に長けている所を見ると相当の強敵と見て間違いない。覚悟だけはしておいた方が良さそうだな」




















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