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第百三節 いよいよだね~……

 ひとまず、魔剣や魔法の杖などを皆で適当に見繕った。

剣に関しては、どれも属性の特徴をモチーフに作られているようだ。

鞘の色もそうだが、つばの形が様々だ。

いつもの癖でそれを鍔と表現してしまうが、洋剣に近い両刃の剣なので

この部分はガードと言うのだろうか?


 青い鞘に刺が生えたようなデザインの鍔が印象的な雷の剣は、伊代が気に入ったようだ。

赤い鞘に炎を模した鍔が特徴の火を噴く剣はダッツが、

そして白い鞘にスッキリとした鍔の氷の剣はナーヴェが選んだ。


 脇差のような日本的デザインの黒い影が出る短めの剣は3本お揃いだったので

そのうち2本を安に渡し、残りの一本は私が使うことにした。

私が最初に貰った剣もどちらかと言うと日本刀に近い反りのある片刃の剣なので

二本を左腰に携えると何気に侍のような雰囲気になってしまうが、

非常用の脇差として機能すればそれで良い。


 両腰に大剣を携えても構わないのだが、

実際に長物を両手に持ってみると返って使い難そうだ。

それの方が強そうに見えると遥子は笑って言っていたが、

二刀流を自在に使いこなす自信は無い。

まぁ、イザと言う時はこの脇差でも二刀流自体は可能だ。


 残りの剣は、このまま持っていて良いだろう。

実際、魔剣と言う物は宿った属性が前方に飛び散る事によって

通常よりも長い間合いが取れる。

ならば、今までの剣とは使い方が変わって来るのは必然。

そして、この剣がどれほどの耐久力なのかも全くわからない。

誰かの剣が折れてしまう事も十分に考えられる。

予備が2本もあれば、その時の代わりにはなるだろう。

そもそも誰も見た事が無いような物が、これだけ手に入ったのだ。

このトレジャーハントは、素直に喜ぶべきだろう。


 杖や腕輪は、遥子達が喜んで見ているので勝手に選んで貰った。

あの手の物は、魔法を使える者が見た方が確実だろう。


 ひとまず、これで戦闘力の底上げが出来た事は確か。

魔の大陸には、どんな敵がいるかわからない。

少しでも予防線を張っておきたい所だ。



 さて伯爵の依頼も無事に済んだ事だし、そろそろ戻る準備しなければなるまい。

明日の朝には出発したい所だ。


 伯爵にその旨を伝えると、やはり小さなパーティーが開催された。

どうやら、この人は何かにかこつけて飲みたいようだ……

まぁ、唯一の楽しみなのだろう。

さすがに、それを奪ってはいけない気がした。


 例の如く伯爵が速攻で酔い潰れると、一人の騎士が私に問いかけて来た。

「あの……勇太殿は、魔王討伐の為に旅をしておられると聞いておりますが本当なのですか?」

一見すると中肉中背だが、鎧から僅かに見える素肌からは

相当に剣術を鍛錬したであろう痕が伺える。

だが驕り高ぶった雰囲気も無く、優しい表情を投げかけている。

とても生真面目そうに見える人だ。

彼は伯爵の秘密を知る数少ない主要の騎士だが、あれこれ下手な事を言うべきでは無いだろう。

だが、無視する訳にもいかない……

とりあえず質問に答えた。

「えぇ、そのつもりですが……」

彼は、しばらく考えてから話し始めた。

「いや……実はですね。私の叔母が、オジ三国のパンツェッタで占い師をしておりまして……」

私は、おもわず眉を顰めた。

「占い師?」

それに慌てた様子で首を振る。

「あっ! 変な勧誘とかではありません! ですが……ずいぶん前から、勇者がお前の元に現れると大騒ぎしておりましてね? もう最近なんて、引っ切り無しに手紙が来るんですよ。それで、時間が空いたらで良いので、一度会ってやって頂けないかと……」

ほう……そうすると、予言者の類か?

だが、確かに面白い話だ。何かのヒントでも出してくれれば幸いだしな。

「わかりました。明日の朝、オジ三国に向けて出発する予定です。戻ったら会いに行きますよ」

「あ……ありがとうございます!」

彼は深く頭を下げていた。



 次の朝……



 さて、いよいよ出発だ。

夜明け前から馬車の準備を済ませると、伯爵達が来てくれた。

「それでは、沙耶さんに宜しくお伝え下さい。あっ、そうそう……これを、渡しておいて貰えませんか?」

何やら白い封筒のような物を渡された。手紙だろうか?

「これは?」

私が問いかけると、伯爵は笑みを浮かべた。

「あぁ、あれですよ。貴方達は、確かに勇者だったって書いてあるだけです」

なるほど……

「では、お預かりします。必ずお渡ししますのでご安心下さい」

それに頷きながら伯爵は言った。

「本当にね~、何から何までね~。色々ありがとうございました~。旅のご無事をお祈りしておりますよ~」

「いや、こちらこそ本当にお世話になりました。ありがとうございました」

私達が深くお辞儀をすると、伯爵は両手を前に出して左右に振った。

「いやいや、堅っ苦しいのは無しにしましょ? ね?」


 出発の準備を終えた私達は、笑顔で握手を交わすと馬車に乗り込んだ。

「無事に帰って来たら、一番に来てくださいよ~? お願いしますよ~?」

私は、それに強く頷いた。


 手綱をあおり、馬車を出発させる。

「では、気をつけて~!」

手を振る伯爵達に、皆も手を振り返していた。


 そして、ようやく空が白み始めた薄暗い道を

オジ三国へ向けて静かに走り始めた。












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