第百一節 盗賊の視線 その2
ようやくアジトに辿り着いた。
変に酒が残ってるもんだから、やけにクラクラしやがる……
息は上がるは、汗は出るはで
もうぶっ倒れそうだ!
裏道は本当に長いんだ。
勘弁して欲しいぜ……
息を切らせながらアジトに入ると、
やはり誰も戻って来て居ないようだ。
まぁ、あの状況じゃ無理だわな……
だが、見張り番はどこに行きやがったんだ?
二階を覗いてみるが、誰も見当たらない……
おっかしいなぁ?
さては、奴等……
まだ帰って来ねぇと見て、サボっていやがるな?
本当にクソッたれ野郎ばかりだぜ!
しかし……あの女共は、いったい何者だ?
人が渡っている最中に、縄橋を切り落とすなんて正気の沙汰じゃねぇぜ!
だが、風体からして騎士にも見えなかったしなぁ……
あぁ! わからねぇ!
とにかく今は、金目の物を持って逃げるしか手はねぇ!
俺は怒りに任せて、思い切り床を踏み込んだ。
地下への階段を下りて、鉄の扉の鍵を開ける。
さて、どこに逃げるかなぁ?
とりあえず、オジ三国辺りに逃げ込むしか手はねぇか……
おもむろに、松明に火を付ける。
これでも俺は、多少の魔法は使えるんだ!
火くらいは、余裕で付けられるぜ!
松明が燃え上がってくるまでの間に考えを巡らせてみる。
さて、どの武器が金になったかなぁ?
とりあえず、あの剣と……あっちの剣も、高く売れそうだな。
まぁ3本ほど持って行けば、当分は食っていけるだろう。
火が安定してきた所で、辺りを照らす……
……
おや? あれれ?
おもわず、その場から視線を外してみる……
……
いやいや、ちょっと待て。
きっと、俺の見間違いだろう。
そうだ、そうに違いない。
改めて、中を照らしてみる……
……
え? 無い……
俺のコレクションが……
どこを、どう見ても見事に何も無い……
何で? どうして?
「何で~?」
その時、後ろの扉が閉まる音がした。
え? 何で閉まる?
慌てて扉の前まで戻って来るが、中からは開く事が出来ない。
嘘っ……閉じ込められた?
何で? どうして?
「いったい、どうなってるの~!?」