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7/9

ありがとう さようなら 科学部

本編最終回です。



文化祭2日目の一般公開です。

日曜日の朝。


今日も隣には仁がいる。


「…文化祭終わったら…俺たち、もう科学部に関わることも無いんだよな…」


ドアに寄りかかり、いつもと変わらない車窓の風景を見ながら谷津が言った。


「…谷津?」


「ふぅ…。以前は毎日のようにあった部活だけど、いざ引退して、久しぶりに顔出すとやっぱり楽しいもんな~…」


「…もしかして、寂しい?」


「人間は、どうしてこんな余計な感情を持つようになったんだろうね~。喜びと怒りだけあれば動物は生活できるって言うのに…。全く…人間ってやつは…。進化し過ぎるのも考えもんだね!」


「谷津…あの…明日も片付けで部活自体はあるから…」


仁が語った衝撃の事実。


「違っ!別に寂しいとかじゃなくて…だからその…文化祭ガンバロー!」


「ごまかすの下手過ぎ…」


仁が小声で呟いた。





何となくいつもより早足で歩いて学校へ行った。


校門は依然として鳥居が鎮座している。



片菜祭最終日。

今日が終われば、二度と片菜祭の開催側の人間として参加することは無くなる。



いろんなことを考えていたらいつの間にか化学室の前。


昨日から扉は外されている。


外された扉は化学室の一番奥の非公開ゾーンに横たえてある。


「立てといて倒れてきたら危ないから最初から倒しておこう!」という谷津の提案だった。



(俺は今日1日この部活のために全力で臨む!いつものように笑いを起こす!)


心に誓った谷津だった。


まずは今日の実験の準備。


ダイラタンシーを作らなければ!


片栗粉と水。


適当に分量を調整して完成。


そして午前9時前…。


「5分後より、片菜祭2日目の一般公開が始まります。各団体は最終確認を行って下さい」


生徒会の放送。


もうすぐ…。


もうすぐ最後の文化祭が始まる!


どこか落ち着かない谷津だった。



そして9時。


一般公開が始まった。


「よし谷津!GO!」


仁の指示。


「何か煙でるもの無い?液体窒素はまだいいから…。代わりのもの」


「ん~…。聖に聞いてくる」


仁が聖と話し合った結果、ドライアイスなら…という答えが返ってきた。



早速、ドライアイスを作る仁。


二酸化炭素ボンベの口を思い切り捻って一気に木箱の中に放出した。


木箱の中には、ドライアイスが出来ていた。


それを水を入れたビーカーの中に投入。


「うわっ!冷たっ!おい谷津!早く!ビーカーを…」


「仁…。何で素手で触るんだよ…。軍手なりピンセットなり使えよ…」


「面倒…。いいから行け!」


「おうよ!芳春!文雄!今日頑張るんだろ?行くぞ!」


「あいよ!」


「頑張るぜ!」



今日も3人で客引きへ。



9時10分。


三人は昇降口前で客引き。


「谷津~。客引きって普通客が来る前から待機してるよね。うちら何で10分遅れなの?」


芳春が聞いた。

芳春としては9時ジャストから始めたかったのだろう。


「え…。ほら!尿検査の時だって最初ちょっと流すだろ?あんな感じ!(仁がドライアイスに手間取ったとは言えない…)」


「例え汚っ!」


文雄に突っ込まれてしまった…。



「科学部です。実験やってるのでよろしくお願いします!」


そう言いながらビラを配る。


大抵、来て真っ先に科学部行くやつはいない。


まずはビラを配るだけで充分だった。


それなのに…。


「ねぇ、科学部どう?いろいろやってるよ!」


「ええと…お化け屋敷ってどこですか?」


「お化け屋敷?案内しようか?」


「はい!」


あ~…文雄よ何処へ行く~…。

あ、お化け屋敷か…。




暫くしたら戻って来た文雄。


「…お疲れ」


谷津が声をかけた。


「アドレスは聞けなかったぜ…」


何かガッカリしている文雄。


「すげーな!俺も頑張ろ!」


意気込む芳春。



「いやいやいや!おかしいでしょ!あんたら何部なんだよっ!?」


谷津が止めた。


「谷津…。もうこの際何部だとかは関係ないんだ。俺は女の子と話がしたいだけなんだ!」


芳春が言った。


「ちっ…。思春期め…。思春期め…!んじゃ、できる範囲で科学部に勧誘すること!いいね!」


文化祭と修学旅行は楽しむことに意味があり、規則や予定通りに動く必要はないという考え方の谷津には、文雄や芳春を止められなかった。


「谷津は思春期じゃないのか?」


芳春が聞いた。


「俺は別に興味ないというか…。画面の中なら中しても許されるから欲求不満じゃないので…」


「一番思春期なの谷津じゃないか!」


「う、うるさいな。俺は一体化学室に戻るぜ。ドライアイス溶けきったし…」


「それ地味だったな~」


「ま、液体窒素にはかなわないだろ」



化学室に戻ってきた谷津。


ビーカーの中の水を捨てた。


「おー!谷津いいとこに戻って来たな!ダイラタンシー入って!」


仁に言われた。


「構わんが…。ドライアイスは地味だね。煙の出方とか」


「いいから!ダイラタンシー!」


人の話くらい聞けよとか思ったが黙っておいた。


ダイラタンシーブースには客はいるが担当がいなかった。



つまり放置。


客は小学生三人組。

因みに男子です。


「解説しましょうか?」


谷津が聞いた。


「えっと…大丈夫です」


めでたく仕事が無くなりました。


とりあえず黙ってこの場にいることにした。


誰もいないのは流石にマズい。


そう思った矢先だった。


ガターン!

バキッ!


目の前で何やら凄まじい音がした。


見ると、先ほどまで楽しそうに遊んでいた小学生三人組が割れた水槽を持っていた。


「スイマセン…。割っちゃいました」


水槽と言っても、魚を入れるやつではなくて、丸い透明なプラスチックの容器である。


ブルーシートの上には見事にダイラタンシーが散っていた。


基本が液体のダイラタンシー。

片付けは非常に面倒。


「いいよ。気にしないで。片付けとくからね!」


それでも谷津は笑顔だった。

もちろん営業用。


内心「なんだあいつら!」と思っていた。



床に散ったダイラタンシーを片付け終わった頃、文雄が戻って来た。

それも女子高生を2人連れて。


「ん~…。何処も空いてない…。おっ!谷津!ダイラ空いてる?」


文雄が谷津に聞いた。


「空いてるけど、今2つだけ。さっき一つお釈迦になった」


谷津がそういうと、女子高生を連れてダイラタンシーコーナーまで来た文雄。


「これめっちゃ面白いんだよ!普通に触ると液体じゃん?でも、ちょっと叩いてみ!」


文雄がそういうと、二人の女子高生がダイラタンシーを叩き出した。


「あれ?何これ!え?面白い!どうなってんの?」


「…谷津!」


文雄が谷津を呼んだ!


「ほえ?」


「仕組み!」


「あう~…そういう説明だけは私なんですね…」


「当然!」


文雄に言われて女子高生に説明した。


「えっと…。これは片栗粉と水を…」


「それはもう説明した!」


文雄に言われた。


「そう?じゃあ…。液体が古体になるのは、力が加わったときに粒子がギュッと集まるからです。で、力を抜くとまた粒子同士が離れて、液体に戻るっていう感じですね」


「おっ!カルメ焼き空いた!行こう!谷津も!」


「俺もか!?」


カルメ焼きコーナー。


「えっとまずは…砂糖を煮詰める!220℃前後だったかな?」


文雄が着々と準備に取りかかった。


「文雄…これできるの?」


「昨日一回成功した!」


それならまあ…え?一回?


「じゃあ谷津!卵白に重曹入れて!」


「卵白は何処?」


「…これ!」


文雄が指差したそれは、1時間程前から置いてある、黄身と白身を分けていない、チョコが入ってる卵だった。


「え?これ?使っていいの?」


「いいから!早くしないと温度が…」


「重曹の量は…?」


「…適当!」



「え?これ成功するの?谷津君!?」


心配そうに女子高生が声をかけた。


「谷津の重曹の量にかかってるぜ!」


文雄が言った。


裏を返せば「失敗したら全て貴様のせいだ」と言っている。


「…こんなもんか?」


凄い適当に重層を卵白に入れた。


「で、卵黄どうすんの?」


卵黄はお玉の中にある。

他に黄身取れそうなものがなかったためお玉にした。


「谷津!食え!」


文雄が言った。


「…これ、大丈夫なのか…?」


「食え!いいから!」


そういうと強引にお玉を谷津の口へ。


「ちょっ!まっ!んっ!あっ!うあ~…」


食った。


直後に水道へダッシュして水を飲んだ谷津。


「ふえ~…。なかなか…きつかったぜ…」


「ほら!重層!入れて!」


人のことは関係ない文雄。


「はいはい…」


入れた。


そして混ぜるのを止めた。


しかし…。


膨らまない。


「谷津!」

「谷津君!」

「谷津君!」


三人から非難が…。


「いやいや!きっとチョコの所為だよ!カカオに含まれる脂分が膨らむのを抑制…」


谷津が物凄く適当な臆測を言ったいたときだった。


「あっ!」


一人の女子高生が声を上げた。


見ると、カルメ焼きが膨らみ始めていた。


「おー!谷津!奇跡じゃん!で、チョコの成分がなんだって?」


「うっ…なんでもないよ…」


「谷津君!やるじゃん!」


「なんだかんだで成功したじゃん!」


何だか膨らみが足りない気もするが、成功ということで終わった。


「ねぇ、文雄君と谷津君て同い年?」


女子高生が聞いてきた。


「うん」


「えっ!?嘘っ!?同い年に見えない!」


「うん!文雄君の方が年上に見える!」


谷津が年下に見られるのはいつものことである。


先日、妹の文化祭に行ったところ、妹の友達に「弟君?」と聞かれた程である。


「文雄君3年生でしょ?」


「うん」


「そんな感じするもん!」


「俺は?」


恐る恐る聞いてみた谷津。


「ん~。中学生?下手すれば小学生の高学年!」


「あー!分かる!」


女子高生二人の意見は一致して谷津は中学生。


「俺はそんなに幼いか?来年の1月で18だよ!?」


「見えな~い」


谷津はいつも幼く見える。




「あ、そうだ。私たち、生物部行きたかったんだ!」


突然女子高生が言い出した。


「生物部?いっこ下だよ?その扉出て…」


谷津が扉を指差したところ、化学室に松田が入って来た。


「おー!谷津!暇だったから来てやった」


松田が言った。


「すげータイムリーな時に来たな。このこたちが生物部行きたいんだと」


松田は生物部である。


ここは松田に任せてしまうのが一番いいであろうと考えた谷津。


「生物部?じゃあ行く?」


「はい!ほら!谷津君も!」


女子高生の1人が谷津の手を引っ張った。


何となくドキッとした谷津。


というか…。


「俺も行くの?まだ仕事が…」


「どうせやることなんて無いでしょ!?」


「はい…」


結局生物部まで連れてかれた。


生物室に入ると、女子高生は谷津と別れ、展示物を見ていた。


何で連れてきた…?


「谷津。何故ここにいる?」


松田が聞いた。


「…俺が知りたいよ~。戻っていい?」


「ダメ!金魚すくいくらいしてけよ」


「やはりですか…」


金魚すくいをやらされた。


「お前さ、金魚すくいとか普段やらないだろ」


「や、やるよ!この前なんか店の金魚全てを…」


「嘘つけ!」


「嘘です…何故わかった?」


「ポイが表裏逆の時点で…」


そもそもポイに表裏があることすら知らなかった谷津。


当然すくえず…。


「金魚が悪いか…紙が悪いか…」


「お前だ!」




化学室に戻った谷津。


またしても逆引きに。


現在11時。


1時には友人が来る予定。


そんなとき、携帯が鳴った。


(仁か?)


谷津は電話の着信を見た。


「あれ?織田?」


織田おだ 勘十郎かんじゅうろう

今日谷津が呼んだ友人の1人。



谷津が電話に出た。


「もしもし?」


「もしもし?谷津?海源うみもと 流沫りゅうきが吐血した!」


海源流沫。

こいつも今日谷津が呼んだ1人。


行動、言動の全てが変。


「あ~?なんだそりゃ?」


「よく分からんが本人が言ってた。奴の答え次第では行けないかも」


「そうかい。期待しないで待ってるよ。んじゃ、仕事中だから切るぜ」


ブチッ…。

切った。


「お?谷津。電話?」


偶然会った芳春に聞かれた。


「あ、うん。何か、今日呼んだやつがいたんだが、そいつが吐血したそうだ」


「なんだそりゃ?」


「俺もよく知らん。で、芳春はどこで何してたんだ?」


「クラスの方行ってた」


「あ~。ドーナツな」


この文化祭、一体どのくらいの団体がドーナツ扱ってるんだろう…。




「なあ芳春。あそこにいる女子高生呼び込んで来てよ!」


谷津が遠くに二人でいる女子高生を指差した。


「無理無理!嫌だよ!」


「いいじゃん!」



結局行かされることになった芳春。


「あの…科学部どう?」


「え…。今はちょっと…」


「じゃあビラだけでもどうぞ」


「はい…」



戻って来た芳春。


「ダメだって!あれは!」


「やっぱね~」


「予想してたのか…。こうなったら本気出してやる!」


そう言っていつもかけているメガネを外した。


芳春が授業中に寝る時以外にメガネ外すのは初めて見る谷津だった。



すると、何とも丁度いいタイミングで女子高生登場。


「行ってくる!」


メガネ外した芳春が女子高生に声をかけた。


「科学部どう?綿菓子とかカルメ焼きとかあるよ!ね!どう?」


「じゃあ…」


「ほら!一緒に行こうか!」


女子高生を化学室まで連れて行く芳春。


ナンパ成功して良かったね~。


そう思った矢先、電話が鳴った。


「もしもし?」


「谷津?今駅着いた!どう行けばいいの?」


電話の相手は勘十郎だった。


「えっと、東口出て右。真っ直ぐ行くと『南無阿』ってコンビニがあるからそこ右。で、さらに先行くと『蓮華』ってスーパーあるからそこ左。後は真っ直ぐ」


「覚えらんねー」


「…じゃあ南無阿着いたら電話して!」


「わかった。じゃあね」


切られた。



一端化学室に戻った谷津。


「もうちょいしたら仕事外れるわ」


谷津が仁に言った。


「は?何でだよー!仕事しろよー!」


「お前昨日何もしなかったろ!今日は俺にも休憩時間くれよ!」


「何で外れるんだ?」


「変な友達みたいなのが来るから案内しなきゃならんの」


「いいじゃん!ほっとけよ!」


「いやいや。じゃあその代わり後で液体窒素で逆引きするから!」


「…まあいいだろう…。で、入試の結果は?」


「今このタイミングで?落ちたぜ!」


「あらら…。まあ気にするな」


「ん?気にしてないよ?」


「少しは気にしろよ~…」


「昼飯食いま~す!」


昼飯休憩を取ることに成功した。



昼飯を食っている最中に電話が鳴った。


「もしもし谷津?今南無阿~」


勘十郎からだ。

「そうかい。じゃあそこ右。で、蓮華まで行ったら左。そうすりゃ見えるから!」


「わかった。着いたら電話する」


「あいよ」


切った。





それから15分後。


着いたと連絡があった。


勘十郎の指示を受け、昇降口まで迎えに行った。



「ほえ~。これがあの片菜高校か~。意外と普通…」


勘十郎がつぶやいた。



案内と言ってもな~…。


「おし!まずは科学部だ!」


谷津が二人を化学室に案内した。


「科学部ってなにやってんの?」


行く途中で流沫が聞いた。


「実験だぜ!そういや、液体って何部?」


「生物部」


流沫が答えた。

因みに、こいつも男子校生。


「液体」は海源流沫の公式ニックネームである。


名前の漢字全てにサンズイが使われてるので…。




化学室。


「おー。何か色々やってんね。ほら!何か説明しなさいよ!」


勘十郎が谷津に言った。


「え~…。面倒~。とりあえず空いてるからダイラタンシーでもやってく?」




ダイラタンシーコーナー。


「ちょっとこれ殴ってみ」


谷津が二人に勧めた。


「あ~これね。俺も小説のネタにしようと思ったんだけど。お前が先に使ったから止めた。あ、俺は殴らない。手が汚れるから。流沫やってみ」


「谷津!殴っていいか?」


「液体が液体殴ると古体になるから不思議だよね~」


「うるさい!」


流沫がダイラタンシーを殴った。


「おお!これ面白いな!」


「だろ?これが科学部の力だぜ!さて、そろそろ仕事に戻るんでな。上でパソコン部がゲーム作ってるみたいだし。適当に見てけよ」




勘十郎と流沫は化学室を出て行った。



「谷津、案内終わった?」


仁が聞いた。


「ああ、終わった」


「はい!じゃあこれ!」


雑巾を巻いたビーカーを取り出した。


「…液体窒素か?」


「おう!」


そう返事をして仁はビーカーに液体窒素を入れた。


「これ一瞬なら触っても大丈夫なんだぜ!喰らえ!」


ビーカーに手を入れ、液体窒素を谷津にかけた。


「うあっ!ちょっ!目に入った!」


「あ~。大丈夫か?」


「ん~…。大丈夫っぽい。一瞬だからな」


「そうか。なら行ってこい!」


「あいよ~」


液体窒素を手に化学室を出た。


「科学部ですよー!液体窒素の実験やりますよー!」


廊下に出たところで勘十郎と流沫に遭遇。


「あははは!谷津何やってんの?」


勘十郎が聞いた。


「客引きだよ。液体窒素でね!そりゃ!」


液体窒素を勘十郎にかけた。


「うわっ!危な…!あー!イヤホンが凍った!」


「おー!そりゃ残念だったね~。んじゃ、客引き行くから!」




一通り客引きしたあと化学室へ。


「谷津!次はこれで客引きして!」


次に仁が渡して来たもの…。


ペットボトルに水と液体窒素を入れたもの。


当然水は凍ってるしペットボトルからは煙が噴き出ている。


「それ頭に乗っけてポッポ言ってみて!ここでいいから!」


「俺はSLなのか!?」


正直、Mー1より辛くね?





「ポッポー!」


結局やった。


一同爆笑。


お客さんの中には携帯で被写体にする人もちらほら。


止めて欲しい…。


「それで吹奏楽部の前に立って客引きしてよ!」


「絶対嫌だ!」





何故だ…?


何故今俺は頭にペットボトル乗せて吹奏楽部の前に立っているんだろう…。


横では黒岩が携帯で動画撮ってるし…。


「科学部だポッポー!液体窒素でみんなが持ってるものを凍らせてみないかポッポー!さっき買ったドーナツもコーラも凍らせて食べれるぜポッポー!」


もうやけになってる谷津。


時々通る女子高生の「何あれ面白い!」という声や吹奏楽部の「あいつ何やってんだ?」という声が心に刺さる。


宣伝効果も凄ければ、谷津の心の傷も凄い。


横では黒岩が爆笑中。


「科学部なんだぜポッポー!この奥で実験やってんだぜピジョン!カルメ焼きや綿菓子なんかが食べれ…うわっ!」


黒岩が液体窒素を谷津の頭にかけた。


黒岩爆笑中。


「おい黒岩!いいか?普通の人間の髪はストレートだからサラッと液体窒素は床に落ちて害は無いんだ!だがな!俺のような癖毛だと液体窒素が落ちないで止まるんだよ!わかるか!?-196℃が0.5秒皮膚に触れ続ける痛みが分かるか?」



黒岩は依然爆笑中。


話聞いてる?



一般公開の時間も残り20分。


化学室に戻り、ちょっと休憩。


「もう客引きはいらないね?」


仁に確認した。


「いらないな。聖!最後に余った液体窒素使いきろうよ!」


「はい!」


最後の液体窒素実演は、客引き無しで行われた。


お客さんが持ってきたコーラや、実験で作った綿菓子やカルメ焼き。スライムなどを凍らせて見せた。




「只今の時間を持ちまして、一般公開を終了します。引き続き、後夜祭をお楽しみ下さい。尚、後夜祭は、グラウンドで行われます」


生徒会の放送が入った。


これで、科学部員として谷津が文化祭に参加することは二度と無くなった。



「先輩!お疲れ様でした!」


聖が谷津に言った。


「お疲れ様~。もう喉が…」


「後半、声が出てませんでしたよ」


「バレてたか…」




暫くすると、芳春が化学室に入って来た。


「あ、谷津。後夜祭は?」


「ん~。花火だけ」


「だよな」



この後、明日の片付けが楽なようにある程度掃除をした。


そして、午後8時…。


ヒュー!ドーン!

ダーン!


花火が始まった。


今年は校庭から見ることにした。


それは三年間で、最も綺麗に見えた。








翌日……。


朝。


化学室。



今日も谷津は科学部へ。


片付けをやることになっている。



谷津は文雄や芳春と雑談中。


仁はクラスの片付けに参加。



そこに、しんこさんが入ってきた。


「このダンボール捨ててきて!」



谷津は文雄と一緒にゴミ捨てに行った。




ゴミ捨て場。


「ダンボールどうすればいいですか?」


谷津が近くにいた担当の先生に聞いた。


「普通のゴミと一緒に袋に入れて出して」


谷津は指示通りに袋に入れて燃えるゴミに出そうとした。


すると…。


「ダンボール袋から出して捨てて!」


さっきとは違うゴミ捨て場の先生に言われたため、谷津は袋からダンボールを出した。


よくみると、ダンボールを捨てる場所があった。


そこにダンボールを持って行った。


すると…。


「それさ、細かく千切って袋入れて!」


また違う先生から指示が…。



「もう!なんなんだよ!」


ゴミを捨て終わって化学室へ戻った谷津が叫んだ。


「ちゃんと統一した指示を出してくれよ!もう!」


「あははは…。先輩、先生から差し入れが入ってますから。ジュースとお菓子です」


聖のその言葉で、機嫌が直った谷津だった。




片付けも終わり、谷津は静かに化学室を後にした。


(さようなら…科学部…)




「あー谷津先輩!扉直してってくださいよ!」


「あっ……」

え~…。

これにて、今まで続いてきた「我ら科学部!」シリーズが完結しました。



湿っぽく終わるかと思いきや、最後まで岡品谷津はどこか抜けてるキャラでした。



一般公開が終わった後の翌日のお話はオマケですので、短めにしました。



最終回なのに仁の出番が少なかったかな?


まあいいか。


因みに、「織田勘十郎」は五円玉様本人であり、この名前も五円玉様が希望したものだったりします(笑)


ある意味すでにコラボ。



次は、その五円玉様とのコラボ作品になります。


その作品で、「我ら科学部!」は完全に幕を閉じます。


本編を最後まで読んでいただき、有難うございました。



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