人の頭で遊ぶんじゃないよ!
ヤッホー!地霊殿クリア!
はい、関係ないです。
今回は文化祭2日前の化学室です。
谷津は今日も苦しみます。
片菜高校の文化祭…片菜祭まで後2日となった。
谷津は今日もいつもと変わらず仁と電車で登校中。
「今日ってさ、午後は全部準備でしょ?」
谷津が仁に聞いた。
「そう。40分授業だしな!」
嬉しそうな仁。
「はっ?マジ?うちの担任言ってねーよ!?」
「そう?ま、40分授業だから。準備頑張れよ谷津」
「おめーもやれよ?」
「俺はクラスがあるから」
「元部長のくせに!」
仁は今日部活は不参加。
クラスの出し物を完全にほっぽってる谷津には部活不参加という選択肢はない。
最も、谷津は最初からクラスの出し物に参加する気など全くなかったのだが…。
午前中授業が終わりいざ午後。
今日は授業が無い。
文化祭の準備である。
谷津は今日も化学室へ向かった。
扉を開けて中へ入る。
「おりゃ!」
「!?」
突然目の前に軟式テニスボールが飛んできた。
当然避けられる訳もなく…。
「ぐはっ!」
顔に命中。
「あははは!よっしゃ!命中!」
そう叫んだのは…。
「芳春てめ…」
菅原 芳春。
勉強ができるだけのバカ。
一教科もクラストップの点数を取ったことないのに総合では常に一位。
因みに保健はビリ。
どうでもいいが、谷津は妊娠・出産の分野だけ学年三位だった。
本人曰わく「生物分野に通じるから。決してそんな……もにょもにょ……ではない!」だそうです。
「で?芳春。それどうした?」
それ=テニスボール。
どう見ても化学室には似合わない。
「さっきわざわざテニスコートまで行って拾ってきた!投げたかったので!」
バカだ…。
見つかったら怒られるよこれ。
「てか昨日いた?」
昨日の部活で見なかった気がする。
「昨日はバイトがあったから帰った」
片菜高校はバイト禁止。
しかし、今や芳春がバイトしていることを知らないやつはいない。
暫くすると、文雄が化学室に入ってきた。
「おい文雄!昨日頭洗うの大変だったんだぞ!」
4倍のワックスは流石にきつかった。
ガッチガチ!
「え~。いいじゃん。面白かったし」
「そりゃ俺だって他人のことなら面白いと思うんだけど。なんせ自分のことだから別に面白くもなかったよ!」
そんな話をしてると聖が入ってきた。
「先輩方早いですね。今日はお土産を作ります」
お土産…?
「ちょっとした粘土細工をやろうかと。来場者に先着で配るんです」
だそうです。
何故かこの化学室には釜がある。
用途は分からないが谷津が知っていることは一つだけ。
これは粘土などを焼くものじゃねー!ってこと。
「先輩方はこれに絵を描いてください」
そう言って聖が取り出したのは大量の丸くて平べったい粘土を乾燥させたもの。
その数ざっと500。
「…こんなに?」
「はい。手分けしてやってください」
なんという無理ゲー…。
今いる科学部員の数は一年生まで入れてざっと12人。
つまり一人当たり約42個。
これより耐久お絵描きお土産作りが始まった。
「何描けばいいの?」
「何でもいいですが、常識の範囲内にしてください」
よし!
とりあえず簡単な戦国武将の家紋描こう。
毛利…一文字に三つ星…。
島津…丸に十字…。
北条…三ツ鱗…。
加藤…蛇の目…。
武田…武田菱…。
最上・足利・今川…丸に二つ引両…。
石田…大一大万大吉…。
片倉…九曜…。
吉川…丸に三つ引両…。
九鬼…七曜…。
真田…六文銭…。
ネタ切れ…。
さて次は…。
考えいるときに事件は起きた。
「ん~…。うわっ!冷たっ!何した?」
突然頭に得体の知れない液体がかかった。
「後輩が持ってきたイチゴミルクだ!」
犯人は文雄。
谷津の頭にイチゴミルクかけた。
「何すんの!?ベットベトするんだけど!甘い臭いが…」
「いいかなって…」
「どこでやっていいと判断したんだ!?」
恐らく史上初。
化学室で頭にイチゴミルクをかけられた男。
「どうすんのこれ!」
「あはははは!」
「わ、笑うな!」
散々な目にあった。
谷津はもう一度粘土に絵を書き出した。
「…イチゴミルクって書いてやる!」
「それ欲しいやついるかね?」
根本を突いてくる文雄。
「いないと思う…マニアを除いて」
「何のマニア?」
「いや…なんか…。イチゴミルクマニア」
自分で言っててそんなのいるかよ!と心中で突っ込んだ谷津。
「あーベットベトする…。ベトベトするなー…。ベタつくなぁ~」
ボヤく谷津。
「うるさいよ!?」
突っ込む文雄。
「誰の所為だと思うよ!?」
「谷津自身の日頃の行いが…」
「悪くない!はず」
なんだかんだでノルマ終了。
釜で焼く作業に移る。
聖が絵が書かれた粘土を釜に入れた。
「後は待つだけですので、展示の準備しましょう」
聖が言った。
まずは各実験の仕組みを説明した紙を貼る作業。
因みにこの紙、模造紙8枚分を聖が徹夜で書いてきたもの。
図まで入っていて分かりやすい。
しかし…。
これだけの量を徹夜で…。
お疲れ様です。
板に紙を貼り付け、それを椅子に固定し立てていく。
この作業は割とすぐに終わった。
次に、机に新聞紙を敷く作業。
スライムや食品実験など、火を使わない実験をする机に敷く。
それが終わったらダイラタンシー用のブルーシートを敷く。
ダイラタンシーは水道のすぐ横に設置。
そのブルーシートを敷いている時に事故は起きたのである。
突然、ドゴン!という音を上げて釜が爆発した。
「はっ?へ?何!?」
混乱する谷津。
「とりあえず開けるぞ」
釜の扉に手をかけた。
「熱っ!ちょっ!」
谷津、負傷。
全治1日弱の火傷。
「先輩それ扉も熱いですよ」
聖の忠告が妙に腹立つ。
「遅いよ!もう触って案の定火傷したよ!」
タオルを使って扉を開けた聖。
そんな手があったとは!
中を見ると…。
「あー!釜壊れた!」
聖の叫び声がした。
釜の底にあったコンクリートのパーツが割れている。
何をどうすればこうなる…?
「…やっちゃいました」
それは、釜がお釈迦になったことを意味した…。
「…色塗ったこれ、どうすんの…?」
きっとみんな心の中で叫んだであろう。
2時間かけて作った粘土細工、焼けず。
これにて耐久粘土お絵描きお土産作りは終了した。
かに思えたのだが…。
「まだオーブン粘土がありますから!」
聖が言った。
オーブンで焼ける釜を使わなくても大丈夫な粘土らしい。
つまり…
「これで色んな物質の分子作ってください!」
只今より耐久粘土細工(分子モデル編)が始まった。
まずは基本的な水分子。
大きめの丸一つ(O)と小さめの丸(H)二つ。
それらをくっつけて完成。
何も言われなければどこぞの王国のネズミに見える。
続いてアンモニア分子。
大きめの丸一つ(N)と小さいの(H)3つ。
くっつけて完成。
「いつまで粘土コネコネしてればいいの?」
谷津が聞いた。
「あと30は欲しいです」
聖の言葉を聞いてがっかりする谷津。
「よし!これはアンモニア分子ではない!水素と酸素が配結合したものだ!」
無駄に声を上げてテンションを上げようとする谷津だが、誰も反応してくれない。
悲しみにくれる谷津にまた新たな敵が迫っていた。
突然腕を握られた。
そして…。
「えいっ!」
「痛ー!!おいこら文雄こっち来いよ!」
今何が起きたか説明しよう。
腕を握られたと谷津は思い込んでいるようだが、その時に文雄はガムテープを貼ったのである。
そして掛け声と同時に容赦無く引っ剥がしたのだ。
その後文雄は素早く逃げていった。
「おい文雄!腕の毛が一部無くなっただろ!」
「あはははは!バーカバーカ!」
「うるさいよ!」
その後粘土細工に復帰。
さっさと終わらせた。
「先輩、ガムテープどこですか?」
達也が聞いてきた。
「ガムテープ?いや、さっき文雄が…。てかいつからいたの!?」
「失礼な…。最初からいましたよ…。で、ガムテープは…?」
「ん~…。おっ!あった!水道の中!」
「何故そんなとこに…。まぁ、いいです」
そう言って達也はガムテープを持って化学室を出た。
廊下に「おいでやす科学部」と書かれた紙を貼りに行ったのである。
しかし、すぐに戻ってきた。
「先輩!ガムテープ無くなりましたよ!」
「何故俺に言う?」
「先輩さっき遊んでたじゃないですか!その所為ですよ!」
「ちょっ!それ文雄!俺違う…」
「いいから!買ってきて下さいよ!」
「そんなバカな…」
ここに後輩に買い出しを命令される高校三年生が誕生した。
「文雄!じゃあ帰りつつガムテープ買いに行くぞ!ほら!芳春も行くぞ!いつまでテニスボール投げてるんだよ!」
結局ずっとボール投げててお土産は作らなかった芳春。
「うるさい!俺は今この距離からスポンジにボールを当てようとしてんだよ!」
化学室の端から反対側のダイラタンシーが用意してある水道の上にスポンジを置き、それを狙っている芳春。
「いいから行くぞ!」
強引に手を引っ張って退室。
「ガムテープは明日持ってくるから!」
最後に達也に言った。
学校を出た三人は近くのホームセンターへ。
そこでガムテープを買い帰宅した。
明日は一日中文化祭準備。
ビラ貼りとデモ実験をやる予定…。
頭をイチゴミルクでベトベトにしながら電車で帰宅した谷津であった。
(何故だろう…。今日は隣に誰も座らない…。車内混んでるのに…)
疑問に思った谷津だった。
イチゴミルクはワックスの代わりになりますぜ…。
ホントにべったべたする!
やってみなさい!
それで電車乗ってみなさいよ!
辛い辛い文化祭準備だったぜ…。