第二四話 セリヨンの凱旋
今回も短い文で申しわけないです。
なかなか区切りが難しく…
セリヨン・ハーネストが自治都市役所につくと、いつもは外で作業している(セリヨンの知らない話ではあるが)黒沢明人が、代表の執務室の机でデスクワークを行っていた。じつのところ外での作業でやることが無くなったのだ。セイフ・ハーグマンの仕事も間もなく終わるだろう。
目下黒沢明人が悩んでいるのは、文官の確保だ。絶対的に人数が足りない。なれる者がいないのだ。これは教育から始めなければならないかも知れない。武官の方は、まだ兵士が少ないこともあって、ブロン・バーリエンスとリリア・クラフトが勤めているが最終的には、10人長、50人長、100人長といった感じで細分化を考えている。この世界の士官表現だ。
他には、この町の唯一の収入源であった、クラモの茸だ。何故かここウェルデン周辺にしか生えていないヤモと呼ばれる木の根元からしか採れない。中々の美味で高く売れるのだが、数が少なく毎年秋にしか生えない。このような過酷な状況の為か、黒沢明人の知るところの共産主義的政治が行われていた。これを改善する為には、個々の収入が生活費を上回っている必要がある。つまり、民に自身の力で産業を起こす余裕が必要だということだ。そしてそれが増えれば働き口も増え、良循環が生まれるだろう。そう、銀行が必要かも知れないな。この世界では商会がそれに当たるのか?
そんなアレコレを考えていると、扉をノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
黒沢明人は簡素に答えた。そして入ってきたのはセリヨン・ハーネストと一人の女性であった。
「どうにか一ヶ月で帰って来れました」
「ああ、一ヶ月ぶりかセリヨン、それはありがたい。昨日から給料を払っているので実のところ金庫が空になる寸前でね。それでそちらの女性は?」
セリヨンが振り返ると女性は頷いた。
「リファ・デルファリンです。デルファリン商会の会長をしています」
「そうか、わざわざこんな何も無いところへ」
「いえ、今日はお願いがあってやって参りました。すみません、セリヨンさん、お願いします」
「解りました。では私から…」
「まあ、立ち話もなんだ座ってくれ」
「ああ、そうですな」
黒沢明人が座り、対面にセリヨンとリファが座った。
「おい、誰かいるか?セイフを呼んできてくれ」
となりの扉の無い部屋へ向かって声を上げると、「呼びにまいります」と返事が帰ってきた。
その間、紅茶のような飲み物を飲んで時間を潰すことにした。
黒沢明人はさりげなく疑問を口にした。
「ウェルマール帝国との戦争はどうなっている?」
「今のところ一進一退という感じですな。まあこの国には、グラーヌス聖騎士団5千名余がいますしね。彼らの強さは隣国にも有名ですな。その他の兵を含めると二万人体制ですよ」
「財政は大丈夫なのか?」
「あの領地は、年がら年中戦争していますからな。財政は国が負担していますし、今のところは大丈夫でしょう、と言ってもしわ寄せは他に向かうわけですが…。しかし、ウェルマール帝国も近々兵を引き上げるという噂も入っています。徴兵が解ければまた元の生活に戻れるでしょう」
等々色々話を聞いていると、疲れた顔をしたセイフがやってきた。
「すみません、お待たせしました」
「随分と疲れているようだな」
「能力の使いすぎですよ。アキト様は人使いが荒いです」
「もうすぐ終わりなんだろう?」
「ええ、私の作業は終わりました。今は雨水の溜まっていないところから順に仕切りを崩していっているところです。ところでセリヨンさんお久しぶりです。もう一ヶ月経ったのですね。そちらの女性は?」
「はい、お蔭様で良い商売ができました。彼女は…」
「リファ・デルファリンと申します。デルファリン商会の会長をしております」
「商会の方ですか、そんな方がここを訪れるのは初めてですね。民も臨時収入が入って、懐が暖かいところです。薬以外の物もあれば売れたでしょう」
「実は今回は大規模なキャラバンで来まして。生活物資も大量に取り揃えております」
「それは民も喜ぶところでしょう」
「はい、では報告をしましょう。まず、ドラゴンの鱗はイリート金貨にして約2万9000枚でデルファリン商会と契約を果たしました。戦時中ですしね即完売だったそうです」
「ほう、まずまずだな」
「…2万9000枚…」
黒沢明人は感心し、セイフは眩暈を起こしていた。
「デルファリン商会とは色々とコネがあり、融通が効くのです。販売網も国外にまでありますし。ですので特に懇意にしております」
「なるほど、それはありがたいことだ」
「ところが、問題が発生しまして…
イリート金貨が市場に不足していた為、ネール金貨での売買を行ったらしいのですが、ネール金貨を生産するネール公爵家で当主交代ありまして、その新公爵が財政悪化を理由にもともと金の比重が低いネール金貨からさらに金の比重を減らした新しくネファールという金貨を発行したのです。
元々ネール金貨は価値に対して金の割合が少なかったのですが…
何より致命的なのがネール公爵家がネール金貨に対して等価でネファール金貨を交換すると発表したことですな」
「なるほど目先の利益に思考を失ったか」
「ここからは私が…」
そう言ってリファが、セリヨンの話を引き継いだ。
「残念ながらその様ですね。損失はイリート金貨にして7500枚。私共みたいに中規模以下の商会が多くの町で店舗の権利を売り、損益を取り戻そうと動き出しまして、結果価値が下落しました。しかも、それを大手の商会が安く買い、非常な高値で売りに出しまして、デルファリン商会としても売るに売れない状況となった次第でして、そもそもいざという場合に備えて基金を創設していたのですが、戦争を理由に国王のお触れで、私どもの場合イリート金貨にして4万枚もの徴税を受けたのが痛かったですね。基金の残高はイリート金貨にして5000枚。2500枚お支払いできないという事情です」
「つまり、全額払えないどころか、今後の運転資金も無いということかな?」
「はい、つまりはご察しの通り、そういうことです」
黒沢明人は、隣りのセイフの様子を見たが、首を傾げている。
「いいだろう。受け取るのはイリート金貨1万5千枚で構わない。その上で1万4千枚はデルファリン商会に融資しよう。細かい契約はセリヨンに任せよう。よろしいか?」
セリヨンは「おまかせ下さい」と言い、リファと握手した。リファは何度も何度も感謝し皆と握手した。
仕事が忙しく、なかなか更新できない…
一週間に少なくとも1話は追加しようかと。




