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ただのゲームプレイヤー

「やいやい!兄ちゃん!モンスター逃げているよ!あ!弱っているよ」

今は兄と一緒にハンティングゲームで遊んでいる。


「お!じゃあ捕獲しようぜ!」


「OK!あ!罠忘れた」

アイテムポーチを確認して言った。


「しゃーねぇな。俺が張っとくから」


「ありがとー。兄ちゃん!」

本当に頼りになるなー。兄ちゃんはクエスト行く前はしっかり確認してクエストを出発する。で俺は確認をせずこうなると。


「ダイチー張ったぞー」

と腑抜けた声で言う。


「なにその声。まあいいや捕獲だー」

俺は睡眠弾を込め、狙いを定め、撃つ。


クエストクリア!という文字が出てきて達成感を味わう。


「おい。どれくらいでできた?」

と兄が言うので確認すると…


「すげーよ。兄ちゃん!新記録だ。1分14秒だよ」

そう俺たちはタイムアタックをしていたのだ。


「よっしゃー!いいな」

と言いその言葉には本当の喜びがあった。


それを見て俺は

「やったね!」

とハイタッチをする。


「さて報酬だ」


「どれどれ…」

俺はタイムアタックのほかに狙っているレアアイテムがある。


「うーん。ないな」


「まだサブ報酬があるじゃないか」


「そっか。どれどれ…」

俺は次へというボタンを押し…


「ないな」

と悲しい声を出す。


「ごめん。俺出たわ」

と申し訳ない声で言った。


「え?まじか。いいな」

こういうのが物欲センサーなんだなと思う。いらないときに出て、それを売ったり、使ったりしてなくなる。その次作りたい武器が出てくるとそのアイテムを求める。結果何時間やっても出ないという状況になるということになったのがまさに今だ。


「もう1回と言いたいところだけど。兄ちゃんは友達のところに行かないといけないからまた今度な」


「えー。まあしょうがないか」

駄々をこねても結果が変わらないことぐらいガキの俺でもわかりきっていることだ。兄は友達を大事にするやつだ。断るなんてことはできない性格ってことは分かっている。


「また今度絶対やるからな。約束だぞ」


「うん」

と言って友達の家に行った。


「さてと」

俺はゲームを片付ける。そしてテレビをつけ登録しているサブスクのアプリをつける。

このときはスマホを持っていなかったから暇つぶしがゲームかこれしかなかった。


「コズミックマンタイン!」

コズミックマンタインというアニメを見る。これは影のヒーローもののアニメで俺はこれにハマっていた。


「いけー!」

このように熱中しているのだ。


「!」

颯爽と現れる謎のヒーローそれがなんかかっこよかった。


それから1時間が経っただろうか。


「はい…はい」

なにか母が電話で話している。


ツーと電話を切り、そっと一言、俺に伝える。

「病院…行くよ」


「え?」

なぜだかわからなかった。自分はなにも体が悪いところないし、母も体が悪いとも見えなかったからだ。


それから車に乗り、20分くらいで病院に着いた。

「急ごう」

と急いだ顔で俺に言う。それを見て俺は

「うん」

勢いに押された感じだった。


病院に入り、すると先生らしき人が出てきた。

「早く来て下さい」

と焦った顔で言った。


階段を上がり、病室の前に来てガラッとドアを開けた。

「に…に」

言葉が出なかった。だって…だって

「兄ちゃん!」

寝ているのは兄だったからだ。その光景から勘がいい俺は大体わかってしまった。


「最善は尽くしましたが…」


「・・・」

母も俺も声が出なかった。わかっていたんだ。最初から。病院行くって言った時から。

それが嫌だから逃げていたんだろう。


「道に倒れていたようです。それを歩いていた人が発見したようで」


「心不全でした…」


「・・・」

なにも声が出ない。静寂の時間が流れる。


そんな中俺は兄に近づき

「約束したじゃん…」

ポロっと涙が出てきた。



それから兄が亡くなってから色々なことがあった。

兄が亡くなってから母は精神を崩壊し、その結果家族崩壊が起き離婚し、父に引き取られた。

それからというもの、父は俺のために必死で昼夜働くことになった。

友達は俺の家庭が貧乏になったことを知ると今まで話していたやつは俺のことを貶してくるようなった。そのほかのやつもことあるごとに俺が悪いという感じにされ、先生もそれを信じ、俺が悪いという胸糞悪いことをされた。



「は!なんだ夢か…」

そこから年月が流れ、俺は38歳になった。

父は亡くなり、実は父には借金があり、それを今返している。

そんな俺の趣味は体を鍛えることだ。なぜこんなことをしているかというと、ガキのときから好きだったコズミックマンタインの影響で俺はヒーローというものに近づきたかったからだ。


「ふんふん」

サンドバックに殴る。

俺は強くなっていることに実感している。体は引き締まり、格闘家のような体つきになっている。明らかに同級生より体が違う。


「このマジェンタ教!」

マジェンタ教はコズミックマンタインに出てくる敵組織で、ガキのころ俺はこんなに不幸になったことをマジェンタ教のせいにして精神を落ち着かせていて、俺はそれを今でも思っている。

「オラァ」



「もうこんな時間か」

仕事に行く時間になっていた。


俺はすぐに行く準備をし、家を出て歩く。

俺の仕事は見ての通り、建設業で、その影響で体も変化したのかもしれない。


「遅ぇーぞ。オメェのせいでどれだけ面倒になっているのかわかってんのか!?」


「すいません」

30分前に来ても怒られる。理不尽だよな。

正直言ってこの仕事は楽しくないし、やりがいもない。ただ金のために働いているだけだ。借金を返すために働かないといけないんだ。

「チッ」

舌打ちしながらどっか行くなよ。うざいじゃねぇーか。

まあいいや。そんなこと思っても無駄だからとっとと始めるか。


「よしやるか」

今はヒルズ建設している途中。正直めんどくさい。後輩を指導しなきゃいけないし、それと並行して建設もやる。本当にどうなってんだよ。


「すぅぅー」

くそか?あの上司はたばこ吸ってんぞ。だから嫌いなんだよな。後輩がこうせっせと働いている中ヤニってんじゃなねぇよ。ヤニ中が。


でもまだこれは序の口だ。だが問題はこの後にある。


「ちっす!」

このいつも遅れてくる後輩だ。いつも言ってんのに治らない。その影響で俺は…


「オメェよー。なんでしっかり指導しねぇんだよ」

これだ。後輩の責任は俺の責任にされる。しかもあの後輩はこの上司に気に入れられているためあの後輩にはなにも言われない。完全に俺は殺したい気分だが、これもマジェンタ教のせいにして精神を安定させる。


「はー」

息を吐く。

本当に嫌な会社だ。こんな会社つぶれればいいのに。


もう1つこの会社の嫌なところがある。それは…

劣悪な環境である。エアコンのない事務所、そしてなにより足場が不安定なところだ。よく死者が出ないと思うわ。


「おい!ぼさっとするな!」


「すいません」



「やっと終わった」

帰った時間は22時半だった。

「これじゃあ全然できないな」

そんな俺の楽しみというか生きがいはあの思い出の…


「ハンティングゲームだな」

兄とやったこのゲームの思い出は消えなかった。だから新作とか出るたびに頑張って返済する金以外に余らせているんだ。

どこかで兄を待っているのかもな。


「最近タイムアタックしかしてないな」

ランクはマックス行ってるし、ほしい武器もないからな。

そんな玄人がやることと言ったらタイムアタックしか残ってないのだ。

「最近タイム更新してないな。でもできたときの達成感やばいんだろうな」


「クエスト受注っと」

もちろんやるのはラスボスしかないよな。


「アイテムは…。大丈夫だな」

こういう確認作業もしとかないとな。


「出発」

テレーという効果音とともにクエストが始まる。


「更新できるかな?」

とワクワクしながらモンスターのいるフィールドに行く。


「こんにちわっと」

bgmが始まり、戦闘が開始される。


「よっと」

発覚された後に必ずやる行動をカウンターし、コンボにつなげる。


「おお!」

いいね。幸先いいぞ。少ない確率のいい行動を引いて懐に行き攻撃。

モンスターが怯む間にコンボをつなげる。


うわ!遅延行動やったぞ。めんど。

砲台使うか。遅延行動をしているモンスターに1発、2発、3発とどんどん当てていき、最終的に動いているモンスターに百発百中!10発当てることができた。


その結果ダウンをさせることに成功。

そのチャンスを生かすため、1番火力がでる技をする。

「どりゃあ」

いい肉質のところにクリーンヒット!3023ダメージ出た。


やべ!ダウン終わっちゃった。いいときだったら2発ぶち込めたのに。残念。

でもモンスターが怒り、確定行動をするためカウンターの準備をする。

「どらぁ!」

と雄たけびをあげ、カウンターで攻撃を無効化し、少しの無敵時間を利用し、次の攻撃も無効化する。


モンスターが行動を終わったら必ずダウンするので、また1番火力のでる技をする。

「おらぁー!おらぁー!」

今度は1発だけではなく2発入れられ、しかもいい肉質のところに当たったため、いい感じだ。お!まだ行けんぞ!

「おらぁー!」

3発目もいい肉質のところで3209ダメージ!順調に行ってる。


「よし!」

順調に第2形態に移行していき、そのあとも確定行動があるため、カウンター。

そしてその次にコンボとハマってしまえばずっと続くループに入った。


その後はそれを繰り返し、クリアになった。

「よし。やったな。タイムは…」

すぐにメニューを開き、タイムを確認する。


「え?」

タイムはなんと2分13秒で自己ベストどころか世界記録を大きく越すタイムだった。それを見て俺は…

「まじか」

と驚きを隠せず、ビビっていた。達成感というのはなく、というか俺に驚いている。

だって世界記録だぜ?当然だろ。今まで近づくことすらできなかった記録だぜ。そうなるやろ。


「兄に見せてやりたかったな…」

と無意識に声が出てしまった。


瞬間、兄との思い出を思い出した。このゲームの思い出や亡くなった日の時の思い出が回想された。

「・・・」

涙が出てきた。兄はもう戻ってこないのに、兄の帰りを待ってしまう。

無駄なのに…無駄なのに。


ゲームをやめ、布団の中に入り、泣く。



「は!朝か」

泣いていたら寝てしまったようだ。

時間は出勤間近で早く行かないといけないため、いつもの鍛えることはできない。

なぜかもういいやっていう感じに吹っ切れた思いだった。


「はぁ。行かないといけないのか」

もう疲れてしまった。すべてに疲れてしまった。魂が抜けているような気分でもう言い表すことができないほどになっている。


もういいのかな?と思ってしまった。

もう休ませてほしい。だけど金のために働かないといけない。


「はぁ」

憂鬱な気分で外に出た。もう行きたくないのに。


嫌だ!もう嫌だ”こんな世界”!ゲーム以外楽しくないこの世界なんてもう居たくない。

そう思ってもなにも変わるわけではないのに願っていた。現実逃避していた。

「もう戻れないんだな…。楽しかったあの頃には」

兄がいて両親がいて楽しかったあの頃は戻ってこない。そんな事わかりきってんだろ?なんで俺はこうも現実逃避しちゃうんだ!弱気になっちゃいかんだろ!


「マジェンタ教め」

拳を握りしめた。

こうやって精神を落ち着かせよう。いつものことじゃあないか!そうだよいつもこうやってきたじゃないか!落ち着こう。



「遅いぞ。オメェよ」


「すみません」

とっとと作業に入るか。今日は足場に乗ってずっと作業する感じか。嫌なんだけど。あの不安定な足場に乗らないといけないのが。そう思っても時間は進んでいく。俺のせいで建設が止まるのは嫌だし、とっととやるか。


着替え、そして作業に入った。

「よっと」

ゆらゆら揺れる足場の上で1歩1歩慎重に歩いていく。結構上のほうだから落ちたら即死だぞ。と自分に言い聞かせる。


「よいしょ」

横を見ながら作業に入った。足元と作業に集中する。

こういうときいつも考えるのがゲームだ。帰ったらできるぞと思いやる。こうすることで自分の作業の効率が上がる感じがするのだ。ご褒美があったほうが早く終わらせようと思う思考になると考えた。俺の場合そのご褒美はゲームだが、誰だってそう思うときがあると思うのだが。


「やべ!」

そうゲームのことを考えていたら足場から落ちてしまった。

俺はとっさに手を伸ばし、なんとか足場に掴まることができた。だがどうやって体制を立て直そうか…

「ふん」

左手が滑ってしまったがなんとか右手だけで支える。


だがよく考えたら足場に掴まる必要なんてないんじゃなかと思ってしまった。

ここで手を離せばもう楽になるのではと…

そう思ってから早かった。俺はそっと手を離した。

そのまま重力に任せ地面に落ちていく。


なぜかまだ生きたいとは思わなかった。

結局マジェンタ教のせいにしても本心は本当に疲れていた。

誰も心配するやつなんていない。本当の友達なんていなかったな。俺は人というのは信用できないと思っている。本当の友達というのが欲しいな。


最後の望みはこの会社がつぶれてほしいことだな。あの糞上司に糞後輩、糞会社が全部嫌いだった。

ぶっつぶれよ!クソッタレが。



「速報を伝えます。昨日、建設作業中に亡くなった佐藤大地さんは不安定な足場で作業していたところ転落しそのまま即死でした。警察は現場を検証中です」


「では専門家の田中さんに聞いてみましょう。どうでしょうか?」


「普通、足場から落ちることはほぼありません。この布田建設の作業員は劣悪な環境で作業したことになります。おかしいですよこれは」


「そうですよね。ではお天気のコーナーです。有田さーん」



記者会見

「転落事故についてどうなんですか!?」


「そこのところは反省しています。作業員の安全に欠陥していました」


「これからどうするんですか!?」


「責任をとり、この布田建設はなくなることになりました」





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