第八〇話 王妃の鉄槌
王都屋敷、庭の午後。
日差しは強く、噴水が静かに水を揺らす。
アレンは満足そうにユウとメルを眺めていた。
「いやあ、照れてるなぁ、ユウ」
メルは顔を真っ赤にして、両手で口を押さえる。
ユウは影を軽く膨らませ、立ち尽くす。
――だが、どこかむぅ、とした顔。
そのとき。
リアナが歩み寄る。
「アレン!」
「ん?」
アレンはのんきに振り返る。
リアナの目が光る。
「またからかって……!」
「おっと、王妃様……」
アレンはにやりと笑う。
リアナは小さく溜息をつく。
「ふたりの時間を邪魔するのはやめなさい!」
アレンの笑みが固まる。
「え、でも……楽しんでるだけだぞ?」
リアナは腕を組み、鋭く迫る。
「楽しむのは勝手だけど、相手が照れるのを見て笑うのはだめ!」
ユウはむぅ、と唇を尖らせる。
影の軍団が周囲で静かに揺れる。
顔は赤いが、目は光を帯びる。
アレンはしばらく沈黙。
そして、にっこり笑う。
「……分かった。俺、反省する」
リアナは小さくうなずき、少しほっとする。
ユウは影を少し収め、顔を上げる。
むぅ、とした表情。
だが、少し嬉しそうでもある。
メルはまだ頬を赤くしながらも、クスクス笑う。
アレンは肩をすくめ、冗談めかして言う。
「まあ、反省してるってことで……次は気をつける」
リアナが目を細め、軽く頭を叩く。
「ほんとに、気をつけなさいよ!」
ユウは影の中で小さく笑みを浮かべる。
そして心の中で、少しつぶやく。
「……ふ、ふん……別に、照れてなんか……」
庭には光と影、そして淡い照れが混ざる。
メルも、リアナも、ユウも――少しずつ距離が近づく、平和な午後のひとときだった。




