第七九話 からかい
昼下がり。王都の屋敷の庭。
陽が高く、影は長く伸びる。
ユウとメルが並んで歩く。
ユウは無言。影の軍団を整列させながら、微かに警戒を解かない。
メルはそわそわ、頬を赤くしている。
そこへ、アレンが後ろからスッと現れる。
「おやおや……何してるんだ?」
ユウは振り向かない。
影の力を軽く伸ばして、警戒の輪を広げる。
アレンは手を広げ、無言で挑発。
「照れてるな?」
メルの顔が真っ赤に。
「ち、違……!」
アレンはにやりと笑う。
「いやいや、目が完全にハートになってるぞ、ユウの隣で」
ユウがつんと背筋を伸ばす。
「……黙れ」
アレンは歩み寄り、肩を軽く叩く。
「俺が新入りを確認してやるのは当然だろ?」
メルが俯く。
「……ユウさんと……一緒にいるのに……」
アレンは目を細めて笑う。
「へえ、影の王にも弱点があったのか」
ユウが影を動かして、アレンに軽く触れるだけの威圧を示す。
だがアレンは笑顔を崩さない。
「ふーん、なるほどな」
突然、アレンがメルに軽くからかうように言う。
「おい、サンドイッチ作るだけで惚れるのか?影の王って、そんなに単純だったのか?」
メルは顔を押さえ、必死に抵抗。
「そ、そんなことありません!私は……私はただ……」
言葉がつまる。
アレンはさらにからかう。
「影の王が無言で頬赤らめてるの、見たことあるか?俺は初めてだな」
ユウの瞳が一瞬、影の闇を濃くする。
メルは視線を下に落とす。
「……もう、いいです……!」
アレンはユウに目を向ける。
「お前、どうするんだ?」
ユウは静かに言う。
「……黙れ、光の王」
アレンは肩をすくめる。
「分かった、でもな……」
突然、メルの髪に光をちょっと飛ばして、日差しを反射させる。
「ほら、影の王の美しさがより際立つじゃないか」
メルが顔を真っ赤にして思わず笑う。
ユウは無言で影の力を少し強くして、防御のように立つ。
アレンは満足そうに腕を組む。
「フフフ……いいコンビになりそうだな」
リアナが奥から見て、微笑む。
「アレン……いつまでからかうの」
「からかうのも愛のうちだろ?」
アレンは軽く肩をすくめ、楽しそうに笑う。
ユウは静かに影の軍団を整列させ、視線だけで圧をかける。
だが、心の奥では――
影の王も、ほんの少しだけ笑みを浮かべていた。
庭に光と影、そして恋心の熱が混ざる。
サンドイッチ少女は、ますます照れるばかり。




