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光と影が交わる一点  作者: 柳瀬 鯨
贖罪
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第七七話 新しい風

夜の王都。


影の軍団が巡回を終え、街に静けさが戻る。


ユウは屋敷の一室で、机に肘をつき、遠くを見ていた。


「……誰か、来たのか?」


声の主は、ドアの向こうから。


扉が開く。


小柄で、柔らかい髪の少女。


制服ではなく、作業着に近い簡素な服。


「こんばんは、ユウさん」


「……?」


ユウは眉をひそめる。


だが、その瞳に驚きが混じる。


「私、メルです。お手伝いに来ました」


彼女は軽く頭を下げる。


「お手伝い?」


「はい。料理とか、後片付けとか……得意なんです」


その言葉と共に、台所から小さな香ばしい匂いが漂う。


ユウは反応しないフリをして、背を向ける。


だが胸の奥で、何かが引っかかる。


翌日。


メルが差し出したのは、サンドイッチ。


中身はシンプルだが、絶妙にバランスが取れている。


「食べてみてください」


ユウは無言で手を伸ばす。


一口。


咀嚼。


そして、驚く顔。


「……うまい」


メルはにっこり笑う。


「ありがとうございます!」


影の王として戦ってきた日々。


破壊と抑止、暗い夜ばかり。


だが、この小さな笑顔と食事。


それだけで、疲れた心が少し和らぐ。


次の日も。


また次の日も。


メルは来る。


サンドイッチを作り、差し出す。


簡単な会話だけ。


でも、それだけでユウの影は少し薄らぐ。


ある夜。


ユウは初めて素直に言った。


「……ありがとう、メル」


メルは笑う。


「当然です!私、ユウさんのために作るんですから」


影の王にも、人との絆は必要だった。


軍団も、教団も、政治も――


それら全てを背負いながらも。


サンドイッチを作る手の温もりで、ユウは少しずつ、人を信じる気持ちを思い出していく。


影の夜。


光が差す場所。


ユウの新しい味方は、強く、優しく、そして少し天然な少女だった。

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