第七三話 友なら
夜。
王都の外れ。
崩れかけた塔の上。
風が強い。
アレンは寝転がって星を見ていた。
「で?」
ユウは立ったまま。
「教団のことだ」
アレンは目を閉じたまま笑う。
「“影の王様ファンクラブ”?」
「笑えない」
少し沈黙。
アレンが起き上がる。
「増えてるのか?」
「孤児を囲ってる」
「力持ちもいる」
アレンの目が細くなる。
「戦力化する気か」
「分からない」
ユウは珍しく、言葉を探す。
「思想が先にある」
「俺を神にしたいらしい」
アレンは吹き出す。
「神ぃ?」
「似合わねぇ」
ユウは睨む。
「真面目に聞け」
「聞いてる」
アレンは真顔になる。
「お前、怖いんだろ?」
ユウが黙る。
「自分じゃなくて」
「自分“以外”が」
図星だった。
「俺は否定してる」
「でも、止まらない」
「名前だけが歩いてる」
アレンは塔の縁に足をぶら下げる。
「神話ってのはさ」
「事実じゃなくて“都合”で出来る」
「都合のいい象徴がいると、楽なんだよ」
「考えなくて済むから」
ユウは低く言う。
「潰すべきか」
アレンは即答しない。
「潰したら?」
「殉教者コース」
「余計燃える」
風が強まる。
「放置したら?」
「根を張る」
「お前が何もしてなくても、勝手に育つ」
ユウは拳を握る。
「俺のせいだ」
アレンは即座に否定する。
「違う」
「お前が壊したのは事実」
「でも、神にしたのは“そいつら”だ」
ユウが苦く笑う。
「責任はある」
「あるな」
アレンはあっさり言う。
「でも全部じゃねぇ」
沈黙。
「会ってこいよ」
ユウが顔を上げる。
「ボスに」
「正面から」
「拒絶し続けろ」
「曖昧が一番ダメだ」
ユウは少し考える。
「もし利用されてたら?」
アレンは肩をすくめる。
「利用される前に利用しろ」
「思想を逆流させろ」
「“強さは支配じゃない”ってな」
ユウは塔の下を見る。
遠くに灯り。
その中に、教団もある。
「俺は神にならない」
アレンが笑う。
「知ってる」
「だから俺はお前の横にいる」
風が止む。
「でもよ」
アレンが少し真剣な声で言う。
「もし」
「お前が迷ったら」
「俺がぶん殴って止める」
ユウは小さく笑う。
「その時は本気で来い」
「おう」
拳を軽く合わせる。
夜空に星。
影は静か。
だが王都の地下では。
カイが目を開ける。
「影が、近づく」
ボスは微笑む。
「ついに、来るか」




