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光と影が交わる一点  作者: 柳瀬 鯨
贖罪
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第七二話 徴を持つ者

王都の混乱は、力を生む。


いや。


正確には――


埋もれていた力を、浮かび上がらせる。


静影教は、表向きは慈善団体だ。


孤児の保護。


仕事の斡旋。


衣食の支援。


だが裏では。


“徴”を探している。


■ 炎を握る少女


名はミア。


十五。


廃屋で一人暮らし。


両親は戦乱で死亡。


彼女は焚き火を素手で触っていた。


火傷はない。


「消えろ」


そう呟くと、炎が沈む。


怒ると、爆ぜる。


泣くと、弱まる。


感情と直結する炎。


制御は未熟。


だが出力は異常。


私は手を差し伸べる。


「燃やす先を選びたくはないか?」


彼女は少し考えて、手を取った。


■ 音を消す少年


名はセリオ。


十七。


盗みを繰り返していた。


理由は単純。


“捕まらない”から。


足音がしない。


呼吸も、衣擦れも。


存在感そのものが薄れる。


完全な隠蔽ではない。


だが意識の隙間に滑り込む。


彼は言った。


「誰も俺を見ない」


私は答えた。


「なら、見られる場所へ来い」


彼もまた、頷いた。


■ 傷を分ける女


名はリゼ。


二十代前半。


治療院の下働き。


彼女は怪我人に触れると、


傷の一部を自分に移す。


致命傷は無理。


だが、死を遠ざける程度なら可能。


代償は痛み。


常に、どこかが痛い。


「意味があるなら」


彼女はそう言った。


信仰は、意味を与える。


■ そして、啓示の青年


カイは黙って見ている。


「増えてる」


「何がだ?」


「選択肢」


曖昧だ。


だが、外れてはいない。


我々は力を明かさない。


外には慈善だけを見せる。


だが内部では。


力を記録し。


適性を測り。


思想の浸透度を確認する。


暴力は望まない。


だが。


力が揃えば、選択肢は増える。


信徒は増え。


徴を持つ者も増える。


私は思う。


これは偶然か?


それとも。


“影”が呼び寄せているのか。


夜。


地下の集会。


ミアの炎が揺れ。


セリオは音もなく背後に立ち。


リゼは静かに痛みに耐え。


カイは目を閉じている。


私は宣言する。


「我々は選ばれた」


「神はまだ拒絶している」


「だが、世界は準備を始めている」


炎が強くなる。


風がわずかに鳴る。


影が長く伸びる。


カイがぽつりと。


「もうすぐ、試される」


「誰が?」


「みんな」


沈黙。


私は微笑む。


ならば、望むところだ。


影の王よ。


あなたは否定する。


だが周囲は、もう止まらない。

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