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光と影が交わる一点  作者: 柳瀬 鯨
贖罪
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第七一話 啓示を聞く者 教団長視点

雨の夜だった。


王都外れの孤児院。


屋根は修繕途中で、雨音が不規則に響く。


私は視察という名目でそこを訪れた。


信徒の一人が言ったからだ。


「妙な子がいる」と。


年は二十前後。


孤児というには少し遅い。


だが身寄りはない。


戦後に流れ着いたらしい。


彼は暖炉の前に座っていた。


他の子どもと距離を置き。


目は、どこか遠くを見ている。


「名は?」


と尋ねる。


「カイ」


静かな声。


「何が妙なのだ?」


院長が困った顔で答える。


「この子、時々……未来を言うんです」


私は笑いそうになった。


予言者か。


戦乱後にはよく現れる。


だが。


「明日、壁が崩れる」


彼がぽつりと言った。


「どこの?」


「北側」


翌日。


北側の外壁が、崩れた。


老朽化だ。


偶然といえば偶然。


三日後。


「支援物資が一箱足りない」


実際、数が合わなかった。


一週間後。


「黒い服の人が来る」


私のことだった。


私は彼の前に座る。


「どうやって知る?」


カイは首を振る。


「聞こえる」


「誰の?」


少し沈黙。


「分からない」


「でも、嘘じゃない」


彼の目は濁っていない。


狂気もない。


恐怖もない。


ただ、“確信”。


私は問いを変える。


「彼のことは?」


「影の王」


カイの視線がわずかに揺れる。


「光が、揺れてる」


私は息を止める。


「どういう意味だ?」


「選ばないと、壊れる」


「何を?」


「みんな」


沈黙。


雨音だけが響く。


能力の詳細は分からない。


未来視か。


思考読解か。


それとも、まったく別の何かか。


だが一つだけ確信した。


“これは使える”。


私は穏やかに微笑む。


「居場所がほしいか?」


カイは少し考え、頷く。


「声がうるさいから」


なるほど。


「なら、我々の元へ来い」


「静かにしてやろう」


嘘ではない。


信仰は雑音を秩序に変える。


彼は立ち上がる。


迷いはない。


孤児院を出るとき。


子どもが彼の服を掴む。


「行っちゃうの?」


カイは少し困った顔をして。


「大丈夫」


「もうすぐ、変わるから」


何が?


とは、誰も聞かなかった。


夜道。


私は彼の横を歩く。


「次は何が聞こえる?」


カイは空を見上げる。


「風が泣く」


「氷が怒る」


「影が迷う」


私は笑った。


「面白い」


啓示。


それが彼の能力の仮称だ。


だが、能力の本質はまだ測らない。


測るのは、必要になってから。


遠くで雷が鳴る。


影の王が否定しても。


神話は進む。


そして私は確信する。


“彼は鍵になる”。

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