第七話 王城へ
ユウが正式に“冒険者候補”として管理リストに載った翌朝。
まだ太陽が昇りきらない時間、ギルド正門前にユウは呼び出されていた。
「ユウ、お前も来てたか!」
声をかけてきたのはアレンだ。
金髪が朝日に反射してやたら眩しい。
「来てたか、じゃないよ……なんでこんな朝から訓練なんだよ……昨日ヘロヘロだったのに……」
「ははっ、国の秘密兵器だからね!だからしょうがない!」
ユウはむすっとしながらも、少しだけ嬉しい。厨二病なのもあるが
アレンといると、普通の同年代みたいに話せるからだ。
だがそこへ歩いてきたギルドの案内人イルメアは、二人の気楽な空気を吹き飛ばすほど険しい表情をしていた。
「……あなたたち二人、王城に向かいます」
「「王城!?」」
声が見事に重なった。
イルメアは軽くため息をつく。
「昨晩の影抽出記録と、アレンさんの光の加護の詳細が、上層部へそのまま報告されました。国王陛下が、あなたたちに直々に会いたいと」
「え、えぇ……!? 陛下に……?」
ユウは背中に冷や汗を流す。
「僕たち、まだ正式な冒険者登録すら済んでないのに……」
アレンもさすがに動揺しているようだ。
イルメアは二人の前に書類を提示した。
「これは、機密情報なのですが、正直に言えば……戦争が、近いのです」
★
王城に到着すると、石畳の道は軍人と役人で埋め尽くされていた。
「……なんか、思ってたより物々しいな」
「国全体が緊張してる証拠だ。
僕らの存在が、それを変える可能性があると思われてるんだよ」
イルメアですら動きが固い。
重厚な扉が開かれると、広い玉座の間が現れた。
玉座には、鋭い目つきをした壮年の男──
アグレスト王国国王・レガル・アグレスト三世 が座っていた。
その横では、鎧の音が響く。
将軍、宮廷魔術師、評議員……国家の中枢が全員集まっている。
ユウは思わず縮こまった。
(ムリムリムリムリ……! 僕は帰りたい! 昨日の続きでいいから帰りたい!!)
アレンは緊張しているが、堂々と前を向いている。
「進め。名を名乗れ」
国王の声はよく通った。
アレンが一歩前に出る。
「アレン・フェルノートです。光加護の適性があると判定されました」
次にユウ。
「ユ、ユウ・アーカディアです……あの……影の魔術が、少し使えます……」
玉座の間が揺れたように静まった。
騎士団長が思わず国王に目を向ける。
「“影の軍”を……少年が扱えると報告を受けましたが、本当なのですか?」
ユウは小さく頷いた。
影が、彼の足元から煙のように揺れる。
黒い兵士の輪郭が、ぼんやりと床からにじみ出た。
ざわり、と空気が震える。
「こ、こんな感じのを出せます」
その瞬間、玉座の間にいた騎士団員全員が硬直した。
「死者を……兵に……!? 本気で言っているのか……!」
「隣国との衝突が迫る中、その力は……」
騎士たちがざわめく。
国王は深く息を吐いた。
「……確かに、とんでもない才だ。
この戦乱の時代に、神が世に授けた希望なのかもしれぬ」
そして、鋭い目で二人を見つめる。
「アレン・フェルノート。ユウ・アーカディア
お前たちには、いずれ戦いに参戦してもらう必要がある」
ユウとアレンは唾を飲んだ。
「だが……まだ子どもだ。急かすつもりはない。
まずは、この国がいま直面している現実を知ってほしい」
——自分がこれから関わるかもしれない戦場。
自分とは関係ないと思っていた場所。
家族の最後の時間すら、まだ見つけられていないのに。
国を救えと言われても……困る。
だけど。
隣でアレンが拳を握っているのを見て、
ユウは無意識に背筋を伸ばした。
たぶん……避けられない。
国王は最後に重い声で言った。
「お前たちは、この国の“鍵”となる。
まずは、王国直属の鍛冶場へ行け。
そこで、己の形を理解するのだ」




