表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光と影が交わる一点  作者: 柳瀬 鯨
王の歩み
66/71

第六六話

白と黒が、世界を塗り潰した。


音が消え。


光が消え。


重力すら曖昧になる。


やがて、静寂。


土煙が、ゆっくりと晴れていく。


抉れた大地。


崩壊した森。


広がる巨大なクレーター。


その中心。


二つの影が、向き合っていた。


アレン。


膝を折りかけながらも、立っている。


光翼は砕け、半分しか残っていない。


全身が血に濡れている。


ユウ。


影炎は消え、蒼黒の揺らぎもない。


再生は完全に止まっている。


呼吸は荒く、足元が揺れている。


二人は、同時に一歩踏み出す。


ユウが拳を振る。


影の残滓を纏った、最後の一撃。


アレンが躱す。


ぎりぎりで。


踏み込み。


光を、圧縮。


刃ではない。


剣でもない。


拳。


アレンの拳が、ユウの腹に突き刺さる。


衝撃。


空気が爆ぜる。


ユウの身体が浮く。


だが、アレンは追撃しない。


代わりに。


光剣を展開する。


静かに。


ユウが地面へ落ちる。


膝をつく。


立とうとする。


だが、足が動かない。


その瞬間。


アレンが、踏み込む。


光剣を振り下ろす。


ユウの目が、閉じる。


――ドスン。


刃は、ユウを貫いていない。


地面に突き刺さっている。


ユウの顔の横。


数センチ。


アレンが、覆い被さる形で、ユウを押さえつける。


息が荒い。


二人とも。


しばらく、無言。


やがて。


ユウの肩が震えた。


「……負けた」


小さな声。


拳が、地面を叩く。


「くそ……」


再生できない。


動けない。


勝てない。


悔しさが、溢れる。


ユウの目から、涙が零れる。


影の王。


氷と光を相手に立ち続けた男。


それでも。


ただの青年の顔になる。


「まだ、足りなかった」


アレンは、何も言わない。


ただ、息を整えながら、ユウを見ている。


やがて、口を開く。


「強かった」


ユウが、泣きながら笑う。


「慰めるな」


「慰めじゃねぇ」


アレンは、ゆっくりと剣から手を離す。


光が消える。


「お前、最高だった」


その言葉で。


ユウの涙が、止まらなくなる。


「くそ……」


「くそぉ……」


悔しさ。


嬉しさ。


安堵。


いろんな感情が混ざる。


遠くから、レオンが歩いてくる。


まだ本調子ではないが、立っている。


隣にリアナ。


レオンは二人を見下ろし、静かに言う。


「終わったか」


アレンが笑う。


「一応な」


ユウは、涙を拭いながら、そっぽを向く。


「次は勝つ」


レオンが小さく笑う。


「好きにしろ」


風が吹く。


さっきまで歪んでいた空が、少しずつ青を取り戻す。


数日後。


即席の修復作業。


兵たちが瓦礫を片付ける。


笑い声が戻る。


辰輝隊の野営地。


簡素な焚き火。


ユウは、腕を組み、不機嫌そうに座っている。


アレンが隣に座る。


「まだ引きずってるのか」


「うるさい」


レオンが向かいに座る。


「泣いていたな」


ユウが即座に立ち上がる。


「言うな!!」


リアナが、くすっと笑う。


空気が、軽い。


戦いは終わった。


死者は出なかった。


森は失われたが。


仲間は残った。


夜。


焚き火の火が揺れる。


ユウが、小さく言う。


「なぁ」


二人が見る。


「またやろうぜ」


アレンが笑う。


「今度は俺が泣かせる」


レオンが目を細める。


「修行しておけ」


ユウが、少しだけ笑う。


影は静かだ。


氷は穏やかだ。


光は柔らかい。


日常が、戻る。


だが。


三人は知っている。


この世界には、まだ強敵がいる。


まだ高みがある。


だから。


また、戦う。


笑いながら。

一旦、ここで一区切り!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ