第六五話 限界を超えた先
荒れ果てた大地。
空気は焦げ、凍り、裂けている。
アレンとユウ。
互いに距離を取る。
息が荒い。
血が滴る。
だが。
二人とも、笑っている。
レオンは静かに見ている。
蒼の瞳で。
理解している。
ユウはすでに限界に近い。
先ほどの氷との死闘。
支配領域で受けた凍結。
再生の遅れ。
内部まで蓄積したダメージ。
影炎が、不安定に揺らいでいる。
アレンが構える。
光翼が縮み、圧縮される。
一点集中。
「終わらせるぞ」
ユウが、息を吐く。
血を拭う。
「まだだ」
影が、静まる。
炎が消える。
再生が止まる。
代わりに。
影が、沈む。
地面へ。
空間へ。
自分自身へ。
レオンの瞳がわずかに開く。
「……まずい」
ユウが呟く。
「限界?」
笑う。
「越えりゃいい」
瞬間。
影が爆ぜる。
黒ではない。
“深淵”。
影炎が、蒼黒に変質する。
空気が歪む。
重力が狂う。
再生が止まった代わりに。
影が、凝縮する。
影魔法・超越形態。
命を削る強制進化。
ユウの右目が赤く光る。
血管が浮き出る。
呼吸が乱れる。
それでも、立つ。
「来い、アレン」
アレンが、笑う。
「やっとだな」
光翼が広がる。
今度は六枚。
純白ではない。
黄金を帯びる。
光が、静かに圧縮される。
暴れない。
震えない。
ただ、重い。
二人が、同時に踏み込む。
消える。
衝突。
拳。
蹴り。
刃。
影と光が、至近距離で爆ぜる。
地面が崩壊。
クレーターがさらに広がる。
ユウの影拳がアレンの腹にめり込む。
アレンの光刃がユウの肩を裂く。
血。
笑み。
速い。
見えない。
衝撃だけが遅れて届く。
レオンが歯を食いしばる。
二人とも、命を削っている。
ユウの動きがさらに加速。
影移動が連続発動。
アレンが光の残像を複数展開。
本体と同時攻撃。
影と光が交差するたび、空間が裂ける。
ついに。
両者、距離を取る。
満身創痍。
立っているのが奇跡。
ユウの再生は完全に止まっている。
影が不安定に揺れる。
アレンの光翼もひび割れている。
血が地面に落ちる。
だが、目は死んでいない。
ユウが言う。
「楽しいな」
アレンが笑う。
「ああ」
両者、最後の力を込める。
影が、一点に。
光が、一点に。
レオンの蒼い瞳が光る。
これ以上は、どちらかが死ぬ。
それでも。
止めない。
二人は、同時に踏み込む。
影と光が、完全衝突する。
世界が、白と黒に塗り潰される。
次の瞬間。
静寂。
砂煙の中。
二つの影が、まだ立っている。




