第六三話 おせぇよ!
戦場は、すでに森ではなかった。
巨大なクレーター。
抉れた大地。
溶けた岩盤。
空は灰色に歪んでいる。
その中心で。
光と影が、ぶつかり合う。
アレンが跳ぶ。
光翼が裂けるほどに広がる。
ユウが迎え撃つ。
影炎が空を焦がす。
両者が放った一撃が、激突。
閃光。
衝撃。
遅れてやってくる爆音。
空が割れる。
衝撃波が円状に広がる。
数キロ先の木々がなぎ倒される。
地面がめくれ上がる。
核撃魔法にも等しい威力。
副官たちが防御陣を展開する。
「伏せろォォ!!」
光と影が再び衝突。
今度は、空中で。
ユウの《黒界崩落》の縮小圧縮版。
アレンの《光臨爆閃》。
二つの塊がぶつかる。
圧縮。
沈黙。
次の瞬間。
爆ぜる。
空に巨大な光輪が広がる。
黒い雲が巻き上がる。
だが、その地上。
瓦礫の陰。
氷の破片の中。
レオンは、動かない。
呼吸が浅い。
脈が弱い。
氷冠は砕け、蒼の瞳は閉じている。
リアナが駆け寄る。
白い法衣は血と灰に汚れている。
だが、目は揺れない。
「……まだ、終わっていません」
両手を胸に当てる。
祈り。
光が、集まる。
だがこれは攻撃ではない。
温かい。
柔らかい。
「聖女術式――《命脈再誕》」
大地に聖紋が広がる。
淡い金色の円環。
リアナの髪がふわりと浮く。
瞳が金に染まる。
レオンの胸に、手を当てる。
「戻ってきてください」
心臓が、止まりかけている。
リアナが、自身の魔力を流し込む。
否。
命の“時間”を分け与える。
空中で再び爆発が起きる。
光と影が激突。
衝撃波が地面を震わせる。
リアナの口から血が零れる。
だが、手を離さない。
「あなたは……まだ戦う人です」
レオンの指が、わずかに動く。
氷の欠片が、微かに光る。
リアナの祈りが深まる。
彼女の背後に、巨大な聖光の翼が現れる。
「私は、あなたを選びました」
心臓が、跳ねる。
ドクン。
もう一度。
ドクン。
レオンの瞳が、開く。
蒼。
だが以前より、静かで深い。
呼吸が戻る。
凍りついていた血が溶ける。
リアナが崩れ落ちる。
レオンが支える。
「……無茶をする」
かすれた声。
リアナが、微笑む。
「あなたほどでは」
空で。
光と影が、三度目の激突。
今度は地面に落ちる。
爆発。
クレーターがさらに拡大。
アレンが吹き飛ばされる。
血を流しながら、笑う。
ユウも膝をつく。
影炎が乱れている。
だが、まだ立つ。
レオンが、ゆっくり立ち上がる。
氷が、静かに広がる。
以前のような暴力的な支配ではない。
研ぎ澄まされた冷静。
「待たせたな」
アレンが振り向く。
笑う。
「遅ぇよ」
ユウが、二人を見る。
氷と光。




