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光と影が交わる一点  作者: 柳瀬 鯨
王の歩み
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第六〇話 氷の支配者

闇。


深い、冷たい闇。


落ちていく。


沈んでいく。


音も、光も、痛みもない。


(……終わりか)


レオンの意識が、微かに揺れる。


そのとき。


足元に、氷があった。


透き通る、純粋な氷。


自然の氷。


人工でも魔法でもない。


ただ、在るもの。


触れた瞬間。


世界が広がる。


吹雪。


凍土。


氷河。


永久凍土の静寂。


声が響く。


それは言葉ではない。


概念。


支配。


統べる者。


レオンは理解する。


自分は今まで――


「氷を生み出していた」


だが本当は違う。


氷は“そこにある”。


世界に満ちている。


水の記憶。


空気中の微粒。


地中の眠り。


それを呼び、従わせる者。


“氷の支配者”。


レオンが、目を開ける。


戦場。


影の海。


大鎌が振り下ろされようとしている。


その瞬間。


世界が、止まった。


ユウの刃が、止まる。


影兵の動きが、止まる。


風が、凍る。


音が消える。


レオンの瞳が、変わっていた。


蒼。


深い、底なしの蒼。


呼吸。


ひとつ。


吐息が、白くならない。


なぜなら。


空気そのものが、凍り始めている。


バキ……ッ


地面が凍結する。


森が白に染まる。


影兵の足元から、氷が這い上がる。


「……?」


ユウが眉をひそめる。


影が溶かす。


だが。


凍結が、上回る。


レオンが、立ち上がる。


傷が凍り、止血されている。


血は白く結晶化。


剣が、戻る。


地面から。


氷の刃として。


「もう、遅いとは言わせない」


静かな声。


だが。


世界が震える。


レオンが一歩踏み出す。


影兵、数百。


一斉に砕ける。


凍らせていない。


“止めた”。


存在の運動を。


ミレイアが突撃。


蒼槍が唸る。


レオンが、視線を向ける。


それだけ。


槍が凍る。


ミレイアの身体が凍結。


砕ける。


粉雪になる。


サラフィナが黒炎を放つ。


レオンが手をかざす。


炎が白くなる。


凍結。


燃えながら凍るという矛盾。


砕ける。


吸収型が紋様を展開。


魔法を奪う。


レオンは、魔法を使っていない。


空気が凍る。


地面が凍る。


重力が鈍る。


吸収できない。


概念だから。


吸収型が崩壊。


影の大軍。


数万。


レオンが、静かに言う。


「跪け」


氷嵐。


森全体が、氷河になる。


影兵が、次々に凍結。


砕ける音が連鎖する。


数秒。


戦場が、白銀に変わる。


残ったのは。


ユウのみ。


影炎が揺らぐ。


初めて。


後退する。


「……なるほど」


ユウが笑う。


だが、その目は真剣。


「それが、お前の答えか」


レオンの背後に、巨大な氷冠が現れる。


王の象徴。


「俺は、氷を使う者ではない」


「氷を統べる者だ」


空気が完全凍結。


影が侵食できない領域。


ユウが一歩踏み出す。


影炎が爆ぜる。


氷と衝突。


蒸気が白く立ち上る。


均衡。


だが、拮抗。


アレンが息を呑む。


リアナが祈りを止める。


レオンが剣を構える。


今度は、揺れない。


ユウが、大鎌を担ぐ。


「いいな」


「最高だ」


氷の支配者。


影の王。


世界が、二つに割れる。

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