表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光と影が交わる一点  作者: 柳瀬 鯨
王の歩み
56/71

第五六話 光の灯る銀世界

白。


視界が白い。


ゆっくりと、焦点が合う。


天幕の布。


揺れる影。


薬草の匂い。


「……生きているか?」


聞き慣れた声。


低く、だが柔らかい。


レオンが目を向ける。


そこに立っていたのは――アレン。


外套を脱ぎ、簡素な軽鎧姿。


かつて氷嶺峡谷で共に戦った青年。


今は“光の英雄”。


「……遅い」


レオンが呟く。


声は掠れている。


アレンが笑う。


「団長が無茶するって聞いたから、急いだんですよ」


その背後。


数名の騎士たち。


白と蒼を基調とした装束。


胸には、辰の紋。


辰輝隊しんきたい


アレン直属の精鋭小隊。


少数精鋭、機動特化部隊。


隊長格の男が軽く会釈する。


「お初に。辰輝隊副長、ガルムです」


大柄で無骨だが、目は優しい。


その横。


栗色の短髪の少女が、興味津々に覗き込む。


「ほんとに凍らせたんですか?精霊と吸収型を?」


「リュシア、失礼だ」


ガルムが軽く頭を小突く。


天幕の中に、柔らかな笑いが生まれる。


レオンはゆっくりと起き上がる。


まだ体は重い。


だが、意識は明瞭。


「……報告は」


アレンが肩をすくめる。


「影虚は消滅。周囲の魔力は拡散。団の損害は軽微」


「正直、あなたがいなければ全滅してた」


辰輝隊の一人が、湯を差し出す。


「温めすぎないでくださいね。自然氷団長」


冗談めかして。


レオンが、わずかに口元を緩める。


外。


野営地。


焚火が灯っている。


氷冠騎士団と辰輝隊が、同じ火を囲んでいる。


武具の点検。


傷の手当。


静かな談笑。


リュシアが語る。


「王都の避難民、光陣で護りましたよ」


「子どもたち、団長の話してました」


「私の?」


「氷の王様って」


小さな笑いが広がる。


ガルムが低く言う。


「団長、うちの隊長も無茶しますが、あなたも大概だ」


アレンが苦笑する。


「否定できないな」


一瞬、静かになる。


焚火の音。


ぱち、と弾ける。


アレンが、真顔になる。


「……ユウは、見てる」


レオンも頷く。


「分かっている」


「これは、試し合いだ」


アレンが言う。


「本気は、まだ出してない」


レオンの目が、静かに燃える。


「望むところだ」


リュシアが、ぽつり。


「でも」


「今日は、勝ったんですよね?」


沈黙。


アレンが笑う。


「そうだな」


レオンも、わずかに頷く。


「今日は、勝った」


火が、揺れる。


氷の騎士団と、光の精鋭。


敵は影王。


状況は劣勢。


だが。


この瞬間だけは、穏やかだった。


夜空に星が瞬く。


凍土に、灯りがある。


遠く。


影の空間。


ユウが目を閉じる。


「団らん、ね」


小さく笑う。


「壊すのは、もう少し後でいいか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ