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光と影が交わる一点  作者: 柳瀬 鯨
王の歩み
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第五二話 無泊

森が、震えた。


氷冠騎士団の索敵陣に、明確な“衝突”が走る。


魔力と魔力。


刃と刃。


レオンが顔を上げる。


「……来たか」


次の瞬間、地面が凍る。


踏み込み。


風を置き去りにする速度で森へ駆ける。


視界が開ける。


そこにいたのは――


黒蒼の槍騎士。


影槍騎士・ミレイア。


そして、氷騎士三名が倒れている。


「団長!」


一人が叫ぶ。


胸を貫かれている。


影の蒼槍が、地面に突き立つ。


ミレイアが振り向く。


金色の瞳。


感情のない顔。


レオンの目が、細まる。


「……蒼槍の」


一瞬の理解。


癖。


踏み込み。


間合い。


「影王か」


低く呟く。


ミレイアが動く。


消えた。


右。


突き。


喉を狙う超速。


ギィン!!


氷剣で受ける。


だが重い。


速い。


連撃。


槍が雨のように降る。


足、肋、首、心臓。


全て急所。


レオンは防ぐ。


だが――


「速い……」


心の中で、認める。


氷を展開。


空間凍結陣。


蒼槍の動きを鈍らせる。


だが。


ミレイアは止まらない。


影が、氷を侵食する。


凍結が、わずかに遅れる。


(対策されている)


槍が肩を掠める。


血が散る。


副官が叫ぶ。


「団長!」


レオンは退かない。


だが、理解する。


(私の魔法は、読まれている)


凍結には“兆し”がある。


空気が冷える。


魔力が集束する。


その“予兆”を、彼女は感じ取っている。


次の突き。


今度は、胸。


間に合わない。


そう判断した瞬間。


レオンの中で、何かが静まる。


焦り。


怒り。


誇り。


すべてが凍る。


三年前。


氷嶺峡谷。


「光は直線的すぎる」


そう言った自分。


ならば。


氷も、直線的であってはならない。


ミレイアが踏み込む。


勝ちを確信した一瞬。


レオンは――


何もしない。


構えない。


詠唱しない。


冷気を出さない。


ただ、見る。


次の瞬間。


パキン。


音は、小さかった。


ミレイアの右足が、砕ける。


氷結。


完全凍結。


「……!」


初めて、彼女の目が揺れる。


レオンは動いていない。


冷気も、見えない。


「無拍……」


自ら呟く。


氷を出さない。


魔力を集めない。


空気を冷やさない。


結果だけを、発生させる。


それは、凍結の“概念化”。


凍ると決めた地点を、凍らせる。


ミレイアが後退。


左脚で跳ぶ。


パキン。


今度は左肩。


槍が落ちる。


「遅いと感じた」


レオンが静かに言う。


「ならば、遅さを消す」


ミレイアが吠える。


影が爆ぜる。


残った力で突進。


レオンが、一歩踏み出す。


視線が、合う。


「眠れ」


瞬間。


ミレイアの全身が、白く染まる。


氷像。


完全凍結。


だが、砕けてはいない。


保存。


森が、静まる。


副官が息を呑む。


「……今のは」


レオンは氷像を見る。


蒼槍の面影。


「まだ未完成だ」


淡々と。


「発動位置が近すぎる」


「視線が誘導になる」


「改善の余地はある」


だが。


騎士たちは理解していた。


団長は、今。


ひとつ、壁を越えた。


遠く。


影の空間。


ユウが目を細める。


「……へぇ」


「できるじゃん」


大鎌を回す。


「じゃあ、次はもう少し本気で」


氷は、進化した。


影は、楽しむ。

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