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光と影が交わる一点  作者: 柳瀬 鯨
王の歩み
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第四十七話 雪が降るぞ

報せは、三日で大陸を駆けた。


「王都、消滅」


「国王、斬首」


「数万の影兵」


噂は誇張を含みながらも、

核心だけは揺るがなかった。


――影王、出現。


北方軍事国家

ヴァルグレイア王国。


氷雪に囲まれた堅城。


その円卓の間に、重臣たちが集められていた。


「事実確認は?」

老宰相が問う。


伝令官が答える。

「複数の商隊、生存者、そして魔術観測結果。

 いずれも一致」


「王都は、完全に機能停止」


「影の軍勢は、痕跡を残さず消失」


沈黙。


やがて、王が言う。


「放置すれば、次は我らだ」


北方は、強い。


だが強さは、

脅威が均衡している時にのみ意味を持つ。


数万の軍勢を、

戦うたびに増やす存在。


それは、国家ではない。


災厄だ。


「討伐隊を編成する」


王の声は、迷いがない。


「名目は共同安全保障」


「実質は排除だ」


重臣の一人が、口を開く。


「団長は、誰に」


その瞬間。


扉が、静かに開いた。


白銀の鎧。


肩には、氷の紋章。


冷気が、足元から静かに漂う。


「お呼びでしょうか」


低く、澄んだ声。


王は、頷く。


「任せる」


その名は――


レオン・フロストハート


ヴァルグレイア最強の騎士。


氷属性魔法の極致。


戦場では、彼が通った後に

雪が降るとさえ言われる。


レオンは、報告書を受け取る。


影王の概要。


能力。


王都壊滅。


数万の影兵。


目が、わずかに細まる。


「……興味深い」


「凍結は、増殖を止められるかもしれません」


側近が言う。


レオンは、首を横に振る。


「甘い」


「影は質量ではない」

「概念だ」


円卓の空気が冷える。


実際に、床に霜が降り始める。


「だが」

レオンは、ゆっくりと言う。


「概念でも、生きている以上は

 止められる」


王が問う。

「勝算は」


レオンは、淡々と答える。

「五分」


ざわめきが走る。


「だが」

「私は、退かない」


彼の背後で、

氷の剣が形作られる。


透明な刃。


青白い輝き。


「影が広がるなら、世界を凍らせればいい」


その言葉に、冗談は一切なかった。


「討伐騎士団を編成する」

王が宣言する。

「名は――」


レオンが、言葉を継ぐ。

「氷冠の騎士団」


鎧の隙間から、冷気が噴き出す。


床が完全に凍りつく。


「出立は七日後」


「情報収集、地形解析、魔術対策」


「影王の位置を特定する」


レオンは、最後に一言。

「光の英雄が動く前に、

 我らが決着をつける」


遠く離れたどこか。


影の空間で、ユウが目を閉じる。


わずかに、冷気を感じた。

新たな敵が、動き出した。

それは怒りでも、復讐でもない。


冷たい合理の刃。

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