表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光と影が交わる一点  作者: 柳瀬 鯨
王の歩み
40/43

第四十話 結果

王は、窓辺に立っていた。

王都中央城塞、その最上階。

かつては誇りだった眺めが、今は――現実を突きつける処刑台になっている。

空が、黒い。雲ではない。煙でもない。――影だ。

「……報告を」

声は、思ったより震えていなかった。

それが、余計に恐ろしい。

控えていた老将軍が、一歩前に出る。

顔色は死人のように青い。

「王都外縁より……影の軍勢、確認」

「数は」

一拍。

「……推定、二万を超えます」

玉座の間が、静まり返る。

「二万……?」

王は、もう一度窓を見る。

影は、整然としていた。

叫ばない。暴れない。略奪もしない。

ただ、待っている。

まるで、命令が下るのを。

「……王都守備兵は?」

「既に壊滅、そして……影に」

その言葉で、王は理解した。

影の数が増え続けている理由を。

「……冒険者は」

「最上位パーティ含め、確認できる限り……全滅」

その言葉が、

王の胸を、鈍く打った。

王は、震える指で椅子の肘掛けを掴む。

「……では、あれは……止められないのか」

誰も答えない。

答えは、もう見えているからだ。

影の軍団は、戦えば戦うほど増える。

兵を出せば、兵が増える。

冒険者を出せば、精鋭が増える。

この国が持つ力、そのすべてが。

「……なぜ……」

王は、呟いた。

「なぜ……あの少年は……ここまで……」

答えは、記録にあった。

影魔法。異端。教会裁定。追放。迫害。放逐。

一つ一つ、王自身が承認した文書。

(……余は……)

喉が、詰まる。

老将軍が、絞り出すように言う。

「陛下……影の王は……動いておりません」

「……何?」

「軍勢は整列したまま……まるで……」

言葉が、続かない。王は、ゆっくりと頷く。

「……余が……答えを出すのを……待っている、か」

玉座の間に、重い沈黙が落ちる。

王は、玉座へ戻り、深く、腰を下ろした。

かつて、国を治めた場所。

今は――裁かれる場所。

「……勝てぬな」

誰に向けた言葉でもない。

「軍事では……無理だ」

「魔法でも……無理だ」

「英雄でも……足りぬ」

王は、初めて理解した。

これは、戦争ではない。


結果だ。

「余は……あの少年を……影王を……」

声が、掠れる。

「……見捨てた」

それは、告白だった。

影の軍団が、一斉に、地面を踏み鳴らす。

音は、低く、重く、揃っている。

二万。三万。それ以上。

数える意味は、もうない。

「……使者を」

王は、静かに言った。

「武器は持たせるな」

「護衛も、不要だ」

老将軍が、目を見開く。

「陛下……?」

王は、目を閉じた。

「余は……王として……最後の仕事をする」

窓の外。

影の軍団の中央で、影王ユウが、静かに立っている。

こちらを、見ている。

その視線は、怒りでも、憎しみでもない。

ただ――待っている。

王は、理解した。

この影の海は、災厄ではない。

王の判断を映す、鏡だ。

「……アレンを呼べ」

玉座の間に、その名が落ちた瞬間、

空気が凍りついた。

老将軍が一歩踏み出す。

「陛下、それは――」

王は、手で制した。

「分かっている」

声は、静かだった。だが、その静けさは、覚悟の重さだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ