第三十五話 王の誕生
リアナは膝をつき、祈りを捧げる。
聖女としての力を、すべて差し出す覚悟で。
「ユウ様……
あなたは独りじゃない……
どうか……戻って……」
光が伸び、影に触れる。
その瞬間――
影が 揺れた。
ユウの瞳が、ほんの一瞬だけ、人の色を宿す。
アレンは叫んだ。
「ユウ!!
俺だ!!
置いていくわけないだろ!!
一緒に帰るって言っただろ!!」
影の奥から、微かな声が返る。
――……ごめん……
それが、
ユウの最後の言葉だった。
影核が、光を拒んだ。
否定でも、反発でもない。
ただ 「選択」 だった。
影は光を押し返し、
祈りを引き裂き、
アレンとリアナを弾き飛ばす。
「がっ……!!」
アレンは地面に叩きつけられ、
リアナは光を失い倒れ込む。
闇が、ユウを完全に包む。
人の形は、崩れなかった。
だが 人だった意味 が消えた。
鎌は王の証として再構築され、
影は静かに、しかし絶対的な圧で広がる。
ユウは――
影王として、立っていた。
アレンは立ち上がろうとし、膝をつく。
「……嘘だろ……
まだ……まだ……!」
影王ユウは、何も言わない。
ただ一度だけ、
アレンとリアナを見る。
そこにあったのは、
怒りでも、憎しみでも、悲しみでもない。
――判断。
次の瞬間、影が空間を裂く。
影王は、災厄と共に姿を消した。
森には、破壊の跡と、
倒れた影兵の残骸、
そして――ユウがいた痕跡だけが残った。
リアナは声を上げて泣いた。
「ユウ様……
どうして……」
アレンは拳を地面に叩きつける。
「……救えなかった……
俺が……弱かった……」
光翼は消え、
ただの一人の青年が、そこにいた。
アレンは立ち上がり、空を見上げる。
「……必ず……
必ず取り戻す……」
それが誓いか、呪いかは、
まだ誰にも分からない。
影王ユウは、
もう振り返らなかった。
これで第一章を終わりにしようと思います!
がんばりますよ




