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光と影が交わる一点  作者: 柳瀬 鯨
第一章 王の誕生
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第三十四話 余韻

アレンは膝をつき、翼が霧のように消えていく。

ユウも血まみれで倒れ込む。

アレンは苦笑しながら言う。

「……お前と組むのは大変だな。

けど、やっぱり強い」

ユウは荒い息で返す。

「お前の光がなきゃ……何度も死んでる」

リアナが泣きながら二人へ駆け寄る。

戦場に、ようやく静寂が訪れた。

禁忌魔獣が倒れ、森に静寂が落ちた瞬間――

ユウは気を失い崩れ落ち、その体から“影”が漏れ始めた。

「ユウ!? おい、ユウ!!」

アレンが駆け寄るが返事はない。

リアナが治癒魔法を流し込む。しかし――

「……吸われてる……?

 私の魔力が、ユウ様の影に……!」

彼女の光が触れた部分から、黒い影が蛇のように絡みつき、魔力を奪っていた。

アレンは眉をひそめる。

「影の暴走……!?

 ユウの意識が無いのに、魔力だけが勝手に動いてやがる!」

大地が黒く染まり、影の炎柱が立ち上がる。

影兵がユウの意思なくして出現し、形を崩しながら周囲をさまよい、森の木々を呑み込んでいく。

「ユウ!! 聞こえるなら、戻ってこい!!」

だが影はさらに拡大し、ユウの体を中心に渦巻く。

深い闇の中。

ユウは巨大な黒い玉座の麓で、ひざまずいていた。

「……ここは……」

玉座には誰もいない。だが声が響いた。

『選べ……

 人の意志ヲ失イ、影ニ堕チルカ……

 あるいは……このまま終ワルカ』

ユウは歯を食いしばる。

(ふざけるな……終わる? 影に落ちる?

 そんな選択……できるわけねぇだろ……!)

その想いに反応するように、影がユウの腕へ絡みつく。

『怒リ、孤独、絶望……すべて我ノ糧……

 オマエハ既ニ“人間”ヲ捨テテイル』

(……違う……!

 俺は……捨ててなんか……!!)

しかし外の“現実”からユウの耳に声が届く。

「ユウ!! 帰ってきて!!」

リアナの声だ。

その光が闇の玉座に差し込む。

だが――影がその光を喰らった。

『無駄ダ。

 オマエは影ナノダ。光など届カヌ。』

闇が一気にユウの胸へ入り込む。

ユウの視界が真っ黒に染まった。


ユウの体がビクリと跳ね、次の瞬間、影の爆風が森を吹き飛ばした。

「ッ!? ユウが……!」

アレンがリアナを抱えて後ろに跳び下がる。

ユウの体が“影王の紋”に覆われ、皮膚の下を黒が走る。

鎌も自動的に影炎をまとい、彼の手で勝手に動き出した。

ユウの瞳は赤黒く光り、意識は戻っていない。

アレンは苦い声で呟く。

「このままじゃ森ごと消し飛ぶ……!」

リアナは涙を流し、

「ユウ様……お願い、もう戦わないで……!!」

と叫ぶが――

ユウはゆっくりと立ち上がり、

彼らを敵として認識した。

影兵の群れが、意思なきまま二人へ向かう。

「ユウ! 俺はお前の敵じゃない!!」

だがユウは返さず、影の鎌を振るう。

アレンは光の翼を展開し受け止める。

「く……ッ!!

 影の出力がさっきの禁忌魔獣戦より上がってる……!」

鎌は狂ったように連撃を続け、

アレンは防ぎながらもじりじりと押され始める。

影兵たちが一斉にアレンへ襲いかかる。

「ユウ! やめろッ!!

 こんなの……お前じゃない!!」

だがユウの口から漏れたのは、声にならない低い唸りだけ。

リアナは必死で祈りの光を放つ。

「ユウ様!! 戻ってください!!

 あなたは……影なんかじゃ……!」

だが影がリアナの光を吸収し、さらに広がっていく。

アレンは歯を食いしばる。

「……くそ……このままじゃ……ユウが完全に“影”に飲まれる……!」

ユウはついに鎌を構え、アレンへ致命の一撃を狙う。

アレンの光翼が裂かれ、血が飛ぶ。

アレンは叫ぶ。

「ユウ!!

 俺はまだ、お前を親友として見てる!!

 だから戻ってこい!!

 ――頼むから!!」

その叫びが、暴走の中心へ届いた瞬間――

ユウの瞳が、僅かに揺れた。

赤黒い光が、一瞬だけ弱まる。

アレンとリアナは気づく。

「ユウ……まだ……消えてない……!」

「届いてる……!

 もう少しで……!」

ユウの影暴走は止まりかけている。

だがその時、地面が大きく揺れ――

影の魔力が暴発寸前まで膨れ上がった。

アレンが叫ぶ。

「……まずいッ!!

 このままじゃ――ユウが爆発する!!」

森全体を飲み込む暴走影。

その中心にユウが立っていた。

ユウの影は、もはや魔力ではなかった。

それは 世界に開いた傷口 だった。

鼓動するたび、森が歪む。

光も、音も、距離さえも――影に飲み込まれていく。

アレンは血を流しながら、光翼を広げる。

「ユウ……!

 もうやめろ……!!

 戻ってこい……!!」

だがユウは応えない。

いや――応えられない。

彼の身体は宙に浮かび、

影が皮膚の下から溢れ、王冠の形を取り始めていた。


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